侯爵様、その溺愛は違います!

みおな

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婚約か金銭か。

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 私の顔が本当に嫌そうだったのだと思う。

 ふっ、と仮面の下で侯爵閣下が笑われた気がした。

「それで、俺の婚約者になるか、平民になって逃げようと考えたというわけか」

「はい。閣下にとっては、ご迷惑な話でしょうけど」

 仮面を付けていて素顔が分からないとはいえ、二十五歳にして侯爵家ご当主様。

 寄ってくるご令嬢はとても多い・・・らしい。

 まぁ、閣下はご令嬢方を『黒い悪魔』扱いして撃退されるみたいだけど。

 それを考えたら、こうして会って話を聞いてもらえるのってほんの少しは望みあり?

「しかし、そんなに執着しているのなら、平民になっても捕まるかもしれないな」

「・・・はい」

 それは私も考えた。
あの気持ちの悪い手紙と、物語の強制力があるかもってことを考慮しても、ただ平民になれば逃げられるとは限らない。

 むしろ、逃げられないように閉じ込められて、愛玩人形扱いされそうだわ。

 だから閣下にお金を借りれたら、他国へ逃げる気ではある。

 ただ・・・
不安はないわけではないのよね。

 ダイアンサス伯爵家は、私を探したりしないだろうし、これ幸いとアンジェラを婚約者候補にと推すだろうけど、ローウェンは王太子で権力を持ってる。

 どんなことをしても、私を見つけ出しそうで・・・

 平民では、逃げきれないわ。
冤罪でもかけられたら・・・

 自分の想像に、全身から血の気が引いていく。

 別にローウェンに捕まっても、殺されるわけじゃない。

 だけど、愛してもいない相手から愛を強要され、人形のように愛られ、ただ心臓が動いているだけのモノに成り果てて、それで生きていると言えるのだろうか。

 一度、誰よりも信じて愛した恋人に裏切られて、その挙げ句に死んだのに?

 絶対に嫌だ。

 本物のレティシアの魂がどうなったのかは、今は分からない。

 でも、少なくとも私がレティシアでいる限りは!

 私は!自由に、自分の思うように生きたい!

「・・・分かった。婚約を受け入れよう。ダイアンサス伯爵家にも挨拶に向かう」

 私の様子を見ていた侯爵閣下が、そうおっしゃられたのを聞いて、思わず私は問い返してしまった。

「よろしいのですか?」

「ふっ、変なやつだ。お前がそう願ってきたのだろう?」

「そ、それは、そうですけど」

 でも、受け入れてくれるとは思わなかった。

 幾らかのお金をくれるか、問答無用で追い出されるか。

 後者だと思っていたわ。

 それくらい、私の願いは侯爵閣下にとって利のないことだもの。

「婚約についての細かい打ち合わせは後日するとして、王太子の婚約者の件はどうする?」

 アニメでは、幼い頃からローウェンには婚約者がいたのだ。
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