恋とはどんなものかしら

みおな

文字の大きさ
26 / 56

治療と婚約

しおりを挟む
 シオン様による羞恥プレイのあと、私は侍女に、新しい夜着に着せ替えてもらった。
 シャワーを浴びたことは、叱られた。
 とにかく、すぐに熱が出るのだから、怒られるのも無理はない。私は素直に謝罪した。

 汗を流したことで、少し疲れが出たのか、私はそのまま、お父様がお仕事から戻られるまで、ぐっすりと眠ってしまった。

 「お父様・・・?」

 目覚めると、お父様が汗で貼りついた前髪を、そっと直してくれているところだった。

 「ああ、目が覚めたか。熱は、下がったみたいだな」

 お父様の声は淡々としているが、触れてくれる手は、とても優しい。

 「お父様・・・お医者様は何をおっしゃったの?」

 「・・・誰に聞いた?」

 無表情をデフォルトしたような、お父様が、眉をひそめている。

 珍しい。

 「誰でもよろしいでしょう?それで、お医者様は何と?」

 ルティシアと言って、もし妹が怒られるようなことがないように、答えを促す。

 お父様は、ふぅ、とため息をつくと、ルティシアか、と呟いた。

 まぁ、バレバレですね。

 「お前の体調不良は、体内の魔力の流れが狂っていることが、原因だ」

 「はぁ」

 気の抜けた返事をすると、お父様は苦い顔をする。
 だけど、それには何も言わず、話を続けた。

 「その、魔力の流れを正すには、宮廷魔術士のオーウェン家の力を借りねばならん。だが、それは短くても1ヶ月余り続けねばならないうえに、時間も長く取られるそうだ」

 「1ヶ月ですか・・・」

 忙しい宮廷魔術士に1ヶ月も時間を割いてもらうのは厳しいだろう。

 「期間の長さと時間は、王宮内での治療なら、何とかしてもらえるそうだ」

 「?」

 じゃあ、何が問題なの?費用とか、お父様が気にするわけないし。うちは仮にも公爵家だ。

 キョトンとした顔をすると、お父様はふっ、と息を吐き出す。

 「ただ、治療のためとはいえ、ひと月も、公爵令嬢を王宮に留めておくのは、色々と問題がある。だから、言わずにいたのだが・・・」

 お父様は、一旦そこで口を閉じた。

 本当に珍しい。お父様は、常に淡々とものを語り、物事を進める人だと思ってた。家族には、優しい人だけど、『魔王』だし。

 「そうですか。なら仕方がないですね」

 私がそう言うと、お父様は淡々と、でもとんでもないことを言った。

 「陛下から、シオン殿下の婚約者になってもらいたいと仰せがあった」

 「は?」

 「王太子殿下の婚約者なら、王宮に留まり、治療を受けていても、周囲に納得させられるそうだ」

 理由は、納得した。だけど、どうしてそれを、国王様から打診されるの?
 しかも、年の近いレインハルト様でなく、シオン様だなんて。

 「シオン殿下の・・・レインハルト殿下でなくて?」

 「なんだ。レインハルト殿下がいいのか」

 「シオン殿下がいいです!」

 思わず、本音が出た。
 だって、大好きな大好きな大好きな人だ。

 最初はー

 前世の最推しで、愛でるだけで十分だった。だけど、10歳で出会ってから、少しずつ会話をして、少しずつ彼に惹かれていった。
 だから、レインハルト様のことで、彼が傷ついているのが、苦しかった。
 例え、私が彼を失う苦しみを味わうとしても、私は私の持てる全力で、彼を救いたかった。

 だから、あの日ー
 時魔法を使ったのだ。

 「婚約を受ければ、治療していただき、私は治るのですか?」

 私にしては、硬い声が出た。
 国王様が、どういうつもりで婚約を言い出してきたのか、理由はわからない。
 だけど、お父様がその話を私にしなかったのは、婚約の話がセットだったからだろう。

 レインハルト様のこともあるから、なるべく王家には近寄らないつもりだったけれど。

 「すべてに絶対はないが、陛下は保証して下さった」

 「なら、私はそのお話、お受けします」

 お父様は、ピクリと器用に片眉をあげて、わかったと言った。
 ほんと、その表情筋、仕事しませんね。
 でも、お父様も、お母様も、ルティシアも、みんなが私を大切に思ってくれていることは、ずっとー

 ずっと前からわかっている。
 だから、私は無表情のお父様に、付け加えた。

 「ずっと前から、シオン殿下のこと、お慕いしていました」

 そう、ずっと、ずっと前から。

 
 

 

 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】 私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……? *短編です。あっさり終わります *他サイトでも投稿中

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...