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モブ、偽装?を受け入れる。
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「うん。聞いてくる!」
止めようと手を伸ばした私をすり抜けて、エリルが部屋から飛び出して行く。
おそるべし7歳児の行動力。
というか、聞いてこないで。もし躊躇われたりしたら、ちょっと傷つくから!
「ふふっ。ねぇ、アイルは政略結婚もやむ得ないと思っているのよね?」
「え?あ、はい。私はエリルには好きな人と結婚して欲しいと思っているので」
「私も旦那様も、エリルはもちろんアイルにだって、好きな人と結婚して欲しいと思っているのよ」
お母様の言葉に、目を見開く。
だって、伯爵家の後継は?
「でも、後継はどうされるんですか?」
「アイルやエリルが継ぎたいというのなら、婿を貰えばいいし、2人ともお嫁に行くなら養子をとればいいしね」
「そう・・・なのですか?」
「だからというわけじゃないけど、シキと婚約しなさい。もし、他に好きな方が出来たなら解消すれば良いわ。それとも、シキと婚約するのは嫌?」
私は首を横に振った。
あいにくと、私には現在、恋愛感情を持っている相手はいない。
だから、シキさえ構わないのなら、婚約することに異論はない。
どちらかといえば、シキに嫌がられそうな気がするだけだ。
「お姉様~♡あのね、あのね、シキが出来ることならお姉様と婚約したいって」
「!!」
出て行った時と同じように、勢いよく帰ってきたエリルが、私に抱きつきながら満面の笑みでそう言うと、お母様が、ほらご覧なさいと笑った。
「ねぇ、ねぇ、お姉様。婚約ってなぁに?」
「ええと・・・それはね、エリル。ずっと一緒にいましょうねっていう約束のことよ」
「そうなの?じゃあ、エリルもお姉様と婚約する!!」
「あのね、婚約はね、女の子同士では出来ないの。でも、エリルはずっと私の大切な妹だから、ずっと一緒にいましょうね」
ギュッと抱きしめると、エリルはそれは嬉しそうに笑う。
うーん。うちの妹、超絶可愛い。
うん。シスコンになる人の気持ちが理解できたわ。
「ねぇ、ねぇ、お姉様。それじゃあ、お姉様とシキはずっと一緒にいるのね?ずっと、お父様とお母様とお姉様とシキと、みんなずっと一緒ね?」
「そうね、エリル。ずっとみんなで一緒にいたいわね」
私がこの家を継がなくても、もしかしたらシキが他に好きな人ができて、ここを辞めるかもしれない。
エリルだって、好きな人ができて、お嫁に行ってしまうかもしれない。
でも、このままここでみんなといたい。そう思うくらい、私はアイル・ローランになっていた。
前世の自分ではなく、私はもうアイルとして生き、考えるようになっていた。
だから、この日、私はお父様とお母様の言葉を受け、シキとの婚約を受け入れたのだったー
止めようと手を伸ばした私をすり抜けて、エリルが部屋から飛び出して行く。
おそるべし7歳児の行動力。
というか、聞いてこないで。もし躊躇われたりしたら、ちょっと傷つくから!
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「え?あ、はい。私はエリルには好きな人と結婚して欲しいと思っているので」
「私も旦那様も、エリルはもちろんアイルにだって、好きな人と結婚して欲しいと思っているのよ」
お母様の言葉に、目を見開く。
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「アイルやエリルが継ぎたいというのなら、婿を貰えばいいし、2人ともお嫁に行くなら養子をとればいいしね」
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私は首を横に振った。
あいにくと、私には現在、恋愛感情を持っている相手はいない。
だから、シキさえ構わないのなら、婚約することに異論はない。
どちらかといえば、シキに嫌がられそうな気がするだけだ。
「お姉様~♡あのね、あのね、シキが出来ることならお姉様と婚約したいって」
「!!」
出て行った時と同じように、勢いよく帰ってきたエリルが、私に抱きつきながら満面の笑みでそう言うと、お母様が、ほらご覧なさいと笑った。
「ねぇ、ねぇ、お姉様。婚約ってなぁに?」
「ええと・・・それはね、エリル。ずっと一緒にいましょうねっていう約束のことよ」
「そうなの?じゃあ、エリルもお姉様と婚約する!!」
「あのね、婚約はね、女の子同士では出来ないの。でも、エリルはずっと私の大切な妹だから、ずっと一緒にいましょうね」
ギュッと抱きしめると、エリルはそれは嬉しそうに笑う。
うーん。うちの妹、超絶可愛い。
うん。シスコンになる人の気持ちが理解できたわ。
「ねぇ、ねぇ、お姉様。それじゃあ、お姉様とシキはずっと一緒にいるのね?ずっと、お父様とお母様とお姉様とシキと、みんなずっと一緒ね?」
「そうね、エリル。ずっとみんなで一緒にいたいわね」
私がこの家を継がなくても、もしかしたらシキが他に好きな人ができて、ここを辞めるかもしれない。
エリルだって、好きな人ができて、お嫁に行ってしまうかもしれない。
でも、このままここでみんなといたい。そう思うくらい、私はアイル・ローランになっていた。
前世の自分ではなく、私はもうアイルとして生き、考えるようになっていた。
だから、この日、私はお父様とお母様の言葉を受け、シキとの婚約を受け入れたのだったー
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