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真実の愛は前途多難な件
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「チェリー様。重心がブレていますわ。そうですわね、この本を頭の上に乗せて歩いてみて下さる?」
私はそう言うと、分厚い本をチェリー様の頭の上に置いた。
「は、はい!あ、ああっ!」
バサバサ。
早速、本が床に落ちて、チェリー様が慌てている。
一生懸命頑張っているチェリー様だけど、生まれた時から貴族令嬢!な人たちに追いつくのは中々難しいらしい。
まぁ、子供の方がマナーなどを身につけやすいのもあるけれど。
変な癖が付いてるから、矯正するのは大変なのよね。
「背中をピン!と伸ばして。こう真っ直ぐな物差しを背中に入れている感覚で。目線を下に下げてはいけませんわ。笑顔を常に心がけて」
「はいっ!」
「頷かなくていいのですわ。ほら、また本が落ちますでしょう?元気いっぱいなことはチェリー様の良いところですが、お返事ももう少し控えめにしましょうね」
これは、王宮の淑女教育の担当がサジを投げるのも無理はないわね。
あの頃はセットウ男爵夫人に洗脳されていたから、人の言うことなんて聞かなかったでしょうし。
真面目で一生懸命なのよ。
それは認めるし、私もチェリー様のことは好きになったわ。
だけど、これでは王族の婚約者として隣に並べば、嘲笑を浴びてしまう。
「少し・・・休憩しましょう」
「で、でも・・・」
「疲れている時に無理をしても身につきませんわ。お茶をお願い」
「はい」
侍女に指示を出すと、すぐにテーブルの上に紅茶のカップやクッキーが並べられる。
私は、チェリー様に向かいに座るように促した。
護衛がスッと椅子を引き、チェリー様が腰掛けるのをジッと見つめる。
少しぎこちないけど、座り方は合格ね。
休憩とは言ったけど、お茶の飲み方、座り方、学ばなければならないマナーはたくさんある。
いつもいつも私やランスロット殿下が隣にいて、守ってあげることは難しい。
一応、クォーツ公爵家縁の伯爵家の養女になったから、表立って何か言ってくる馬鹿はいないと思うけど、陰で言う人間はいるだろうし、足元を掬おうとする人間もいる。
チェリー様は、王子殿下の婚約者。王太子殿下の婚約者である私の次の立場になる。
それを良しとしない人間に、付け入る隙を与えないことが大切なのよ。
「お茶の飲み方、お菓子の食べ方は合格ですわ。後は、頑張って笑顔を貼り付けてくださいまし。たとえ嫌なことを言われても、不機嫌な顔を見せてはいけません。例えば、ランスロット殿下のことを悪く言われたとしても、ただ反論するのではなく、『殿下の選択が間違いだと言われないように、私も頑張らなければなりませんね』と流すのです」
感情のままに反論すれば、これだから元平民は、なんて言われてしまうわ。
私はそう言うと、分厚い本をチェリー様の頭の上に置いた。
「は、はい!あ、ああっ!」
バサバサ。
早速、本が床に落ちて、チェリー様が慌てている。
一生懸命頑張っているチェリー様だけど、生まれた時から貴族令嬢!な人たちに追いつくのは中々難しいらしい。
まぁ、子供の方がマナーなどを身につけやすいのもあるけれど。
変な癖が付いてるから、矯正するのは大変なのよね。
「背中をピン!と伸ばして。こう真っ直ぐな物差しを背中に入れている感覚で。目線を下に下げてはいけませんわ。笑顔を常に心がけて」
「はいっ!」
「頷かなくていいのですわ。ほら、また本が落ちますでしょう?元気いっぱいなことはチェリー様の良いところですが、お返事ももう少し控えめにしましょうね」
これは、王宮の淑女教育の担当がサジを投げるのも無理はないわね。
あの頃はセットウ男爵夫人に洗脳されていたから、人の言うことなんて聞かなかったでしょうし。
真面目で一生懸命なのよ。
それは認めるし、私もチェリー様のことは好きになったわ。
だけど、これでは王族の婚約者として隣に並べば、嘲笑を浴びてしまう。
「少し・・・休憩しましょう」
「で、でも・・・」
「疲れている時に無理をしても身につきませんわ。お茶をお願い」
「はい」
侍女に指示を出すと、すぐにテーブルの上に紅茶のカップやクッキーが並べられる。
私は、チェリー様に向かいに座るように促した。
護衛がスッと椅子を引き、チェリー様が腰掛けるのをジッと見つめる。
少しぎこちないけど、座り方は合格ね。
休憩とは言ったけど、お茶の飲み方、座り方、学ばなければならないマナーはたくさんある。
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「お茶の飲み方、お菓子の食べ方は合格ですわ。後は、頑張って笑顔を貼り付けてくださいまし。たとえ嫌なことを言われても、不機嫌な顔を見せてはいけません。例えば、ランスロット殿下のことを悪く言われたとしても、ただ反論するのではなく、『殿下の選択が間違いだと言われないように、私も頑張らなければなりませんね』と流すのです」
感情のままに反論すれば、これだから元平民は、なんて言われてしまうわ。
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