ラスボス魔王の悪役令嬢、モブを目指します?

みおな

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バッカス侯爵令嬢タチアナ

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「貴女がロイド殿下の婚約者?」

 ザハード王国に入り、ロイド殿下のいる王宮に向かった私を仁王立ちで出迎えたのは・・・

 縦ロールの金髪に、サファイアのような青い瞳。
 燃えるような深紅のドレスを着た少女だった。

 いるんだ、本当に・・・
縦ロールのご令嬢って。

 あれって毎朝、侍女が巻いてるのかな。それとも地毛で勝手にカールするのかな。

 多分彼女が、バッカス侯爵令嬢のタチアナなんだろうけど・・・

 現在の私の興味は、彼女の縦ロールにあった。

 だってほら、縦ロールっていかにも悪役令嬢っぽいんだもの。

 ローズマリアは、攻略ゲームの展開上で魔王になるせいか、それともタイトルのせいか、黒髪なのよ。

「ローズマリア様・・・彼女が?」

 ヒルデに小声で尋ねられ、ハッと正気に戻った。

 いけない。自分の世界に入り込んでたわ。

 私はこくりと頷く。
当然のことながら、ヒルデにもタチアナのことは話してある。

 ヒルデは私の侍女として常にそばにいるようになるから、ローズマリアのライバルになる(かもしれない)タチアナの話はしてあった。

 バッカス侯爵令嬢タチアナ。
ロイドの恋人ラーナ・ピスエア子爵令嬢の従姉で、ロイドと同い年。

 自分こそがロイドの婚約者に相応しいと、婚約の申し込みをして来ている・・・らしい。

 ラーナのことも、それこそシンデレラをいじめる姉のように虐めているとか。

 うん。立派な悪役令嬢だわ。

 バッカス侯爵夫妻はというと、どうやら娘には手を焼いているらしい。

 熾烈な性格で、何をするかわからないところがあるので、姪の身の安全のためにも無闇に口を出せないのだとか。

 いや、ちょっと待て。
貴族で親が注意しないで、誰がするのよ。

 もう、そんなクソガキは矯正のために修道院に入れてしまえ!

「ヒルデ、参りましょう」

「ちょっと、待ちなさいよ!話しかけてるのに無視するってどういうことよ!」

 私がタチアナを無視して、そのまま王宮へ向かおうとすると、立ちはだかるようにタチアナが声を荒げた。

 うーん。
もうちょっと、品のある悪役令嬢がいいなぁ。
 これじゃあ、三流じゃない。

 できれば、品よく愛想良くにこやかに話しかけて来て、それでいて遠回しな嫌味をチクチク言うような、高度な嫌がらせをして欲しいんだけど。

「あら?ザハード王国では、ご自身の名前も名乗らないで、自分より爵位が上の令嬢に話しかけるのがなのね。私も勉強不足だわ」

 私は公爵令嬢。年齢はタチアナよりは下だけど、貴族は年齢よりも爵位がものを言うの。

 たとえ他国だとしても、いや他国だからこそ相手に丁寧に話かけて、挨拶するべきなのよ。
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