誰が彼女を殺したか

みおな

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正しい対応はどれだ?

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 ヴィクターに、リリー・マゼンダ男爵令嬢とのことを注意したラティエラ。

 男爵令嬢が王太子妃になることは難しい。

 彼女がいくら優秀だとしても、生まれてから今まで培って来た人脈がリリーにはない。

 もしも彼女が王太子妃になったとしたら、相当な苦難が待ち受けているだろう。

 自国の貴族たちは、ラティエラが受け入れたなら表面上はリリーを受け入れるだろう。

 ヴィクターも、愛する者のためなら手を貸すだろう。

 だが、誰が何を好み、誰と交友があり、どんな『秘密』があるか。

 それは、ヴィクターでは分かり得ないことなのだ。

 令嬢には令嬢の、独自のネットワークがあり、王太子であるヴィクターには見せていない部分があるのだ。

 それは長い時間をかけて、自分で交友し、腹の探り合いをし、信頼を得て、そして手に入れることができるものなのだ。

 だから、愛妾という選択をヴィクターに提案した。

 何も、愛する彼女を苦労させる必要はない。

 ラティエラと婚姻して早々に世継ぎを生み、そして三年たてば愛妾として彼女を迎え入れることが出来る。

 世継ぎさえ授かっていれば、公務以外は離宮でリリーと過ごしてくれて構わない。

 子を授からないように『処置』はされるが、それさえ我慢してくれれば、愛する二人で過ごすことは可能だ。

 ラティエラとしては、最大の譲歩をしたつもりだった。

 ラティエラだって、出来ることならヴィクターと思い思われる仲でいたい。

 子供に両親が不仲だとか、父親に他に愛する相手がいるなど、見せたくはない。

 だが、ヴィクターは恋に落ちてしまった。

 ラティエラのことなど、視界の隅にすら入っていない。

 ヴィクターの目に映るのは、リリーのみ。

 ならば仕方ないではないか。

 公爵令嬢として。王太子ヴィクターの婚約者として。

 凛とした態度で、最適な案を掲示するしかない。

 だが、ヴィクターはそのラティエラの心遣いを、嫉妬だと切り捨てた。

 自分が幼い頃から見て、共に過ごして来た婚約者は、こんなに愚かだっただろうか。

 ラティエラは落胆し、公爵令嬢として決断した。

「お父様、お母様。王太子殿下が男爵令嬢に恋をして、彼女を妻に迎えたいそうですわ」

「「は?」」

 ウィスタリア公爵と公爵夫人は、娘の言ったことが理解できず、思わず聞き返した。

 じっくり話を聞いてみると、怒りを通り越して呆れてしまう。

 娘は、自分の感情を押し殺して、公爵令嬢として正しい判断をしたというのに、王族であり王太子であるヴィクターがそれを理解できないとは。

「分かった。婚約は白紙撤回だ」

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