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悪役令嬢のとある1日その後

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 リリアンヌ様に言われて、私とシキは、私の部屋でお茶を飲むことになった。

 自分たちがいるとシキが使用人としてしか振る舞わないからって。
 その提案に、お兄様は反対しようとして、リリアンヌ様に視線ひとつで黙らされてた。
 お兄様、リリアンヌ様のお尻に敷かれてますのね。

「アイリス様、ハーブティーをどうぞ」

「あ、うん。ありがとう」

 シキは私と、私の向かいの席にハーブティーを置くと、マカロンやケーキを私の前に置いてくれる。

「シキも食べない?」

「いえ。アイリス様が召し上がって下さい」

「こんなに食べると太っちゃう。半分食べて」

 マカロンを人差し指と親指で掴むと、シキの口元へと持っていく。
 シキが一瞬目を見開いた後、その口を開けてパクリとマカロンを食す。その唇に指が触れて、私は自分が何をしたのか気づいて真っ赤になった。

「ご、ごめん」 

「いえ」

 シキは全然気にもしてない様子で、私は恥ずかしくなって、目の前のケーキも食べることに集中することにする。

 美味しい。
黙々と食べていると、目の前をフッと影がさした。

「クリームが付いていますよ」

「!!」

 シキの細い指が、唇の横に触れて離れていく。
 ボンっと音を立てて、顔が熱くなるのを感じる。おそらく顔は真っ赤だろう。

「どうかしましたか?」

「ゔゔっ、シキずるいー」

「え?」

「シキ、全然平気なんだもん。私ばっかり、ドキドキして・・・」

 そりゃ私まだ13歳だし、子供だけど。シキは18歳で、私に比べたら大人だけど。

 シキは黙ったまま立ち上がると、私のもとへとやって来た。私の手を取って、自分の胸へと触れさせる。

「や、なに・・・」

「ドキドキしてませんか?」

 執事服の下、薄いシャツ越しにシキの鼓動を感じる。
 私と同じくらい早い鼓動に、シキを見上げた。蒼い瞳がジッと私を見つめている。

「シキ・・・」

「アイリス様が学園を卒業するまで、俺は待つ覚悟はあるんです。だけど、俺も好きな人にそんな風に言われると・・・」

 少しひんやりとしたシキの手が私の頬に触れる。

 好きな人・・・

 シキはあんまり私に好きだとか言ってくれない。だから、たまに言ってくれる言葉が嬉しくて、嬉しくて、涙が頬にこぼれてシキの指を濡らした。

「アイリス様」

「シキ、私も好き。シキに好きって言われて、すごく嬉しい」

 私が素直にそう言うと、シキは何だか複雑そうな表情をする。
 え、なに?その顔。

「何の拷問なんだか」

「え?」

「いえ、何でもありません。俺も、アイリス様に好きって言ってもらえて嬉しいです」

 シキはそう言うと、私の唇に軽くキスをした。
 拷問ってなに?って思ったけど、聞かない方がいい気がして、私はそっと目を閉じたー

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