34 / 54
本編
王太子妃選考の試練……開始
しおりを挟む
とうとうこの日がやって来た。試練の準備用に王宮内に部屋を一つを用意されていたので、わたしは前日から登城していた。侍女のベッキーにシンプルなドレスを着せて貰い、陛下たちの待つ謁見の間へと向かった。途中、リップル王女と遭遇したのでそのまま一緒に向かう。
「いよいよ、ですわね。アリー」
「はい、リップル殿下」
謁見の間の扉の前で二人で頷き合い、扉を守る衛兵に目で合図を送る。衛兵は中へ聞こえる様に「リップル王女殿下ならびに、ネリネ侯爵令嬢が到着されました」と声を掛けて重たくて大きな扉を開けた。中へ入ると両陛下、ロブ殿下、そして宰相であるわたしのお父様が待っていた。
「二人ともよく参った。本日はこれから王太子妃を決める試練を行うが準備はいいか」
「「はい」」
リップル王女と共に膝を折り、陛下たちへ礼をする。
「ここからは、私が案内致します」
そう言って王妃陛下が玉座から降りて来られ、「ついて来なさい」と目線で合図された。それに従って廊下へと出て、暫く長い廊下を歩いて行く。そして幾つかの扉を抜けた先の、とある場所へ辿り着くと大きな扉の前で王妃陛下は何か呪文らしきものを唱えられ……カチャリ、と鍵の開く音がした。
扉の番をしていた衛兵たちがその扉を開くと王妃陛下は躊躇する事無く中へと進まれる。わたしとリップル王女もそれに続いて中へと入ると、そこには地下へと降りる階段があった。一歩一歩、慎重に階段を降りると長い地下道に繋がっていた。
護衛騎士が二人率先して先頭を歩いて行き、王妃陛下、リップル殿下、わたし、再び護衛騎士二人……といった順で細長い地下道を歩いていく。きっと魔道具なのだろうが、わたし達が地下道へと足を踏み入れると同時に壁に備え付けられていたロウソクの灯りが一斉に灯されていった。その光景を見ながら、前世で観たアドベンチャー映画のワンシーンみたいだな……なんて思ってしまった。
ひたすら長い長い地下道を、どれくらい歩いたのか……突如として現れたその不思議な空間にわたしは息を呑む。
「綺麗……」
リップル王女が感嘆の声をあげた。大きな円形のその空間は、壁から天井まで全てがクリスタルの原石で覆われている。灯りもない筈なのに、天井からふりそそぐ光はキラキラと輝いていて、足元は虹色に輝く石が敷き詰められいる。そして中央には大きな魔法陣が描かれていた。
わたしは声を出すのも忘れて、その幻想的な景色に目を奪われていた。
「リップル王女、ネリネ侯爵令嬢……こちらへ」
「っ! はい」
「あ、はいっ!」
わたし達は魔法陣の少し手前に並ばされた。
「今からこの魔法陣の中へ入って貰います。ここから出られるのは、王太子妃の試練をクリアした時か……或いはクリア出来ずリタイアした場合のみです。個人差はありますが、長くて二日ほどになるでしょう。ここまでで何か質問はありますか?」
「はい、リタイアはどういった場合ですか?自主的にリタイアする事もあるのですか?」
リップル王女がすかさず質問を投げかけた。
「自主的なリタイアはありませんが、こちらから二人の健康状態や精神状態を見て継続不可能と判断した場合は試練の途中であっても強制的にリタイアさせて呼び戻します」
「それは身体はこちらにあって、精神世界で試練を受ける状態という事でしょうか?」
「ええ、そうです。その認識で合っています。魔法陣の上に横たわり、眠った様な状態になるといえば良いのでしょうかね……夢の中という表現が一番近いかもしれませんね」
プリメラの言っていた『仮想空間』という言葉を思い出す。なるほど、VRみたいな感じかしら。それをこの魔法陣で行う……。なんか、これこそゲームの世界みたいだわ。
「もう一つ宜しいですか……その精神世界で会話とかした場合、実際にこちらでも独り言の様に話しているのでしょうか?」
「いいえ、それはありません。試練中の内容は本人以外には分からない様になっています。そしてそれは候補者同士も同じです。それぞれが、全く別の夢を見ている様な状態です」
という事は、同時に試練を開始していてもリップル王女とは別の仮想空間に放り出されるって事なのね。
「それでは、他に質問もない様なので……始めますよ。二人とも、魔法陣の中へ入って横になりなさい」
わたしとリップル王女は無言で頷き合って、魔法陣の上に横たわる。
「二人とも、気を付けて……行ってらっしゃい」
王妃陛下が呪文を唱え始め、それに呼応するように目を閉じてても魔法陣が光り輝くのを感じる。そして自分の魔力が魔法陣へと流れ込んでいってるのか、身体が温かさに包まれた。
「いよいよ、ですわね。アリー」
「はい、リップル殿下」
謁見の間の扉の前で二人で頷き合い、扉を守る衛兵に目で合図を送る。衛兵は中へ聞こえる様に「リップル王女殿下ならびに、ネリネ侯爵令嬢が到着されました」と声を掛けて重たくて大きな扉を開けた。中へ入ると両陛下、ロブ殿下、そして宰相であるわたしのお父様が待っていた。
「二人ともよく参った。本日はこれから王太子妃を決める試練を行うが準備はいいか」
「「はい」」
リップル王女と共に膝を折り、陛下たちへ礼をする。
「ここからは、私が案内致します」
そう言って王妃陛下が玉座から降りて来られ、「ついて来なさい」と目線で合図された。それに従って廊下へと出て、暫く長い廊下を歩いて行く。そして幾つかの扉を抜けた先の、とある場所へ辿り着くと大きな扉の前で王妃陛下は何か呪文らしきものを唱えられ……カチャリ、と鍵の開く音がした。
扉の番をしていた衛兵たちがその扉を開くと王妃陛下は躊躇する事無く中へと進まれる。わたしとリップル王女もそれに続いて中へと入ると、そこには地下へと降りる階段があった。一歩一歩、慎重に階段を降りると長い地下道に繋がっていた。
護衛騎士が二人率先して先頭を歩いて行き、王妃陛下、リップル殿下、わたし、再び護衛騎士二人……といった順で細長い地下道を歩いていく。きっと魔道具なのだろうが、わたし達が地下道へと足を踏み入れると同時に壁に備え付けられていたロウソクの灯りが一斉に灯されていった。その光景を見ながら、前世で観たアドベンチャー映画のワンシーンみたいだな……なんて思ってしまった。
ひたすら長い長い地下道を、どれくらい歩いたのか……突如として現れたその不思議な空間にわたしは息を呑む。
「綺麗……」
リップル王女が感嘆の声をあげた。大きな円形のその空間は、壁から天井まで全てがクリスタルの原石で覆われている。灯りもない筈なのに、天井からふりそそぐ光はキラキラと輝いていて、足元は虹色に輝く石が敷き詰められいる。そして中央には大きな魔法陣が描かれていた。
わたしは声を出すのも忘れて、その幻想的な景色に目を奪われていた。
「リップル王女、ネリネ侯爵令嬢……こちらへ」
「っ! はい」
「あ、はいっ!」
わたし達は魔法陣の少し手前に並ばされた。
「今からこの魔法陣の中へ入って貰います。ここから出られるのは、王太子妃の試練をクリアした時か……或いはクリア出来ずリタイアした場合のみです。個人差はありますが、長くて二日ほどになるでしょう。ここまでで何か質問はありますか?」
「はい、リタイアはどういった場合ですか?自主的にリタイアする事もあるのですか?」
リップル王女がすかさず質問を投げかけた。
「自主的なリタイアはありませんが、こちらから二人の健康状態や精神状態を見て継続不可能と判断した場合は試練の途中であっても強制的にリタイアさせて呼び戻します」
「それは身体はこちらにあって、精神世界で試練を受ける状態という事でしょうか?」
「ええ、そうです。その認識で合っています。魔法陣の上に横たわり、眠った様な状態になるといえば良いのでしょうかね……夢の中という表現が一番近いかもしれませんね」
プリメラの言っていた『仮想空間』という言葉を思い出す。なるほど、VRみたいな感じかしら。それをこの魔法陣で行う……。なんか、これこそゲームの世界みたいだわ。
「もう一つ宜しいですか……その精神世界で会話とかした場合、実際にこちらでも独り言の様に話しているのでしょうか?」
「いいえ、それはありません。試練中の内容は本人以外には分からない様になっています。そしてそれは候補者同士も同じです。それぞれが、全く別の夢を見ている様な状態です」
という事は、同時に試練を開始していてもリップル王女とは別の仮想空間に放り出されるって事なのね。
「それでは、他に質問もない様なので……始めますよ。二人とも、魔法陣の中へ入って横になりなさい」
わたしとリップル王女は無言で頷き合って、魔法陣の上に横たわる。
「二人とも、気を付けて……行ってらっしゃい」
王妃陛下が呪文を唱え始め、それに呼応するように目を閉じてても魔法陣が光り輝くのを感じる。そして自分の魔力が魔法陣へと流れ込んでいってるのか、身体が温かさに包まれた。
26
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。【短編集】
長岡更紗
恋愛
異世界恋愛短編詰め合わせです。
気になったものだけでもおつまみください!
『君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません』
『悪役令嬢は、友の多幸を望むのか』
『わたくしでは、お姉様の身代わりになりませんか?』
『婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。 』
『婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?』
他多数。
他サイトにも重複投稿しています。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる