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失ったもの、手に入れたもの。
side尚哉4
しおりを挟む隣町は、スポーツの大会では俺らの中学と同じ区域だから、これから先も関わることはあるだろう。
女バスなら美結とも関わりあるかもしれない。
俺の所為で美結に害があったら想に合わせる顔がないから、無下に追い返すことも出来ないと思ってパイプ椅子を勧めた。
新垣は、見るからに顔を明るくさせて椅子についた。
「リハビリの順番待ちしてるから、あまり話す時間ないかもしれないけど」
「藍田くんの顔を見られただけで十分です。こんな押しかけるみたいな真似して、ごめんなさい」
ふむ? 常識はある方のようだな。
そんな奴がなんで知り合いでもない俺のところに来たんだろうか。
本当に親戚のついで?
「足、どうですか……?」
「うん、一応手術は成功。あとはリハビリ次第」
と、俺は誤魔化した言い方をした。
もう二度と走れない、コートには戻れない、なんて……言う気にはならなかった。
「そうですか……部活の皆さん、藍田くんの帰り、待ってますね」
……笑顔で言う新垣の言葉に、後ろめたいものを感じた。
自分から誤魔化したんだから、本当のところを新垣が知っているわけもないのに。
「……新垣さんって、同い年?」
「はい。二年です」
「じゃ、お互い敬語やめない?」
「あっ、そうですね――じゃない、そうだね」
「うん。……新垣さんって、俺のこと知ってたの? そりゃ、女子と会場一緒になることもあったかもしれないけど……」
俺の問いに、新垣は大きく瞬いた。
「知ってるも何も……藍田くんたち、すごい有名人だよ? 近隣の中学の子ならほとんど知ってるんじゃないかな? 藍田くんと塚原さんと碓氷くん、毎回全国模試で上位常連だし」
「………」
それか。
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