溺甘系朧咲夜【完】

桜月真澄

文字の大きさ
上 下
74 / 109

side咲桜22

しおりを挟む

「……どういう意味ですか」

「壁見て言わないで俺見て言いな?」

くそっ、せめてもの抵抗だったのに。

流夜くんに誘導されてのろのろと顔を向けると――にこっとした大すきな人の顔があって、頭が火を噴いた。

「面白いなあ、お前は」

反抗する力を失って、流夜くんのシャツにしがみついて顔を伏せる私の頭を、流夜くんがぐりぐり撫でまわす。うう……なんというご褒美……。

「ま、咲桜がいるから断ったんだけどな」

思わずびくっと、自分の肩が大きく跳ねた。なんてことを言うんだ!

「……私のため、なんですか?」

せ、責任転嫁?

そろっと顔を離して見上げると、流夜くんはふっと口の端に笑みを刻んだ。

「咲桜以外と一緒になりたくない、っていう俺の願望のため」

しおりを挟む

処理中です...