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四 ……求婚は、ちゃんとするから。
side咲桜7
しおりを挟む「………アホ」
毒づくように言って、流夜くんの腕がそっと回って来た。え、えと……これは突き飛ばす方? このままで大丈夫な方? 戸惑っていると、頭の後ろから流夜くんの声がした。
「そこまで安心されてると、自分がストッパーじゃないといけないじゃないか」
「……だから言ってるんだよ」
彷徨っていた手を、流夜くんの背中に廻して私からも抱きついた。
……大分、と言うか、かなり、流夜くんのことがすきだと思う。だから、もし流夜くんのしたいことがあったら受け止めたいとも思う。よこしまでもなんでもいいから、流夜の一番近い場所は譲りたくない、って。けれど、流夜くんが言うようなことを――心配するようなことを、しないともわかってもいる気がする。
流夜くんは言葉にすることでストッパーをかけている。私から口にすることで、歯止めになる。……流夜くんは、眼差し一つですら、私を大事だと伝えてくれるから……。
だ、だから泣きそうになるからそういうことを考えるな!
私が恋愛関係に幼いから、だろうか。自分の気持ちを伝えることで、流夜くんは合わせてくれている。そんなことが、なんとなくだけどわかっている。
「咲桜……その、無理させてたらすまない」
流夜くんはそう考えてしまう自分を責める。どこまで甘い人なんだ。
だから、私から抱きしめ返すことで応える。
「……そんなこと、ないよ。私はちゃんと答えてもないのに」
曖昧な形を、また見つけてしまった。流夜くんはそれでいいと言ってくれたけど。……今、答えを求めている。自分の中に。
そんな私に、流夜くんはまたささやく。
「……こうして傍にいてくれたら、それだけでいいんだ」
微かな声。
夜くんの願いを、私は叶えられる人なんだろうか。もっと相応しい人はいると思う。私なんかより美人さんで、流夜くんくらい頭がよくて、もっと同じ目線に立てる人は。
………いやだ。
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