上 下
12 / 216
一 突撃

side水都11

しおりを挟む

「それでも、父様も母様も実の子のように可愛がってくださって……恩返ししたいのと同時に、父様や母様みたいになりたいんです」

優しくお強い父様と、お強く優しい母様。

くださった愛情に、少しでも答えたい。

「そして母様は、わたしの憧れそのものです。母様みたいになるにはヤンキーを経験しないと!」

「……藤沢さん」

「はい?」

コガサクくんが、一段低い声で呼んできた。なんだろう、気が変わってくれたのかな?

「やめなさい」

「え……」

「ヤンキーはやめておきなさい。藤沢さんには向いてないよ」

「っ……、こ、コガサクくんはヤンキーで有名じゃないですか!」

「俺は自衛のために仕方なくって言ったろ。自分からヤンキーになりたいなんて乗り込んでないよ。そもそも――」

「……なんですか」

コガサクくんは、軽く息を吸ってから長く吐いた。

そのあと、平坦な目で私を見て言った。

「ヤンキーのなりかたなんて、俺もわかんない」

「あ……」

しおりを挟む

処理中です...