龍神様とあの日の約束。【完】

桜月真澄

文字の大きさ
49 / 83
3 美也と奏

しおりを挟む

「奏さんの私への認識を無理やり変えるつもりはありません。ですが、奏さんの言いなりにはならないことも伝えておきます」

「……!」

奏は美也に向かって手を振り上げた。叩かれることを覚悟した美也は目を閉じた。――が、衝撃は来ない。

(……叩かれない?)

うっすら目を開けると、唇を噛んで悔しそうな顔の奏が肩を震わせていた。

「あんたなんて……顔だけのくせに!」

(……はい?)

美也が、どういう暴言だろう、と意味がわからずにいると、奏は美也を突き飛ばして玄関から飛び出して行ってしまった。

「え……なに? どういうこと?」

奏が意味不明なことを言って飛び出していったので、美也はその上をいくくらい意味がわからなかった。

(と、とりあえず……追いかけた方がいいよね?)

奏は明らかに様子がおかしかった。このまま事故に遭われでもしたら大変だ。

美也はカバンを玄関に置いて駆け出した。



「奏さん――」

いつの間にか、ぽつぽつと雨が降り出していた。

十字路で美也は周囲を見渡すが、奏の姿はない。

大降りになる前に見つけないと――

「巫女さま? どうされたのですか?」

「えっ? あっ! 開斗くん!」

聞き覚えのある声に呼ばれて振り返ると、小龍の姿でふよふよと浮いている開斗だった。

美也を見つけてぱあっと明るい顔になる。

「榊さまのところへ来られるのですか? でしたら雨も降っていますから――」

「開斗くん! 奏さん見てない!?」

美也は血相を変えて開斗に詰め寄った。

開斗は一瞬呆気にとられてから、むすっとした顔になる。

「ふえっ? かなでって……巫女さまにいじわるしてる人じゃないですかっ。ぼくそんな人知りませんっ」

ぷいっとそっぽを向く開斗だが、それどころではない。

「奏さん、家を飛び出しちゃったんです。なんか私のせいみたいで……お願い開斗くん、文句はあとでたくさん聞くから、一緒に探してくれませんかっ?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

6年前の私へ~その6年は無駄になる~

夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。 テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...