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二 アザの伝説
side千波7
しおりを挟むあ、あれー……? 藍田くんとお姉ちゃんの視線がバチバチしている気がするのはわたしだけ……?
「千波ちゃん、俺はこれで帰るね。またね」
「あ、うん。また……」
妙な別れになってしまったけど、そこで藍田くんには手を振った。
「お姉ちゃん、藍田くんのこと知ってたの?」
「ん? ああ、そういうわけじゃないんだけど……やっと来たか、って感じかな」
「? どういう意味?」
「あとで教えてあげる。お父さんは発狂するかもしれないから、今はまだお父さんには秘密ね?」
え。
そのときのお姉ちゃんににやにやが、今まで何度も見て来たにやにやだった……。
+++
「ちな、入るよー」
「はーい」
明日の授業がお昼からになって、それまでバイトの予定もないというお姉ちゃんは泊まっていくことになった。
お姉ちゃんは大学生になると同時に一人暮らしをはじめた。
電車で一本のところだけど、このあたりよりはだいぶ都会なところだ。
お風呂を済ませてベッドに寝転び、今日借りて来た本を読んでいたわたしは、お姉ちゃんに答えると同時に起き上がった。
「ちな、髪ちゃんとかわかした?」
「わしたよー」
かわかさないと、翌日爆発するから。
今お風呂上がりのお姉ちゃんも、わたしのベッドに腰かける。
「でさ、ちな。さっきの藍田くんだけど……」
「うん」
お姉ちゃんは長い足を組んで、ふう、と軽く息をついた。
「こんな目立つのつけるんだから、相当独占欲強い奴だろうなあって思ってたけど、想像以上だった」
「……なんの話?」
「これ。知らない? 生まれつきのアザの伝説」
と、お姉ちゃんは自分の左頬をさした。
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