上 下
30 / 64
三 前世と現世

side千波2

しおりを挟む

「うん」

「アザをつけてごめん、ってこと……?」

時折わたしの左頬を見る目からは、申し訳なさを感じる。

けれど藍田くんは首を横に振った。

「それについてはつけといてよかったって思ってる。じゃないと今頃、千波ちゃんに彼氏いたかもしれないし」

「………」

「謝ったのは、俺がそれつけたことで、千波ちゃんが嫌な思いしてきたことに対して」

嫌な思い……。

「……醜女って呼ばれてたやつ?」

「うん……。牽制のためとはいえ、そんな扱いされてるって知らなかったから……」

「牽制?」

「アザのこと、知ってるやつは結構知ってるでしょ? お姉さんとか」

「……お姉ちゃんはずっと知ってたみたいだけど……」

「だから、まだ出逢ってなくても千波ちゃんには俺がいるよ、っていう、牽制」

にっこり藍田くん。

また大天使が堕天した……!

しおりを挟む

処理中です...