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番外編2

side千波9

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「そういえばお姉ちゃんは彼氏いないの?」

お姉ちゃんはわたしと違って美形だ。更に可愛いよりはキレイ系。

「私は興味ないわね。ちなが幸せでいてくれたら私は幸せだから」

「……わたし中学のときとかだいぶお姉ちゃんへの橋渡し頼まれたんだけど……」

お姉ちゃんの連絡先教えて、とか、これ渡して、とか。もちろん全部断った。

自分でやった方がカッコいいですよ、と。

実際は、お姉ちゃんがどうせ断るだろうなーと思って、お断りをわたしから伝えるのが面倒だっただけだけど。

……はっ!

「お姉ちゃん、今ので気づいたんだけど、お姉ちゃんってもしかして……」

「え、な、なに? どうしたの?」

声をひそめたわたしに、お姉ちゃんはびくっと肩を震わせた。

そして顔色がいきなり悪くなった。やっぱりわたしに隠していたな……?

「お姉ちゃんってもしかして……」

「………っ」

「シスコンなの?」

「………え?」

わたしの疑問に、お姉ちゃんは一気に間の抜けた顔になった。

「そこまで言ってくれるとか、シスコンとしか思えない……」

わたしの幸せが自分の幸せとか、すごい発言だよ。

お姉ちゃんはハッとした顔になって、顔を何度も肯かせた。

「そ、そう! シスコンなのよ私! ちなが可愛くてしかたないの!」

「あ、ありがとう……?」

ありがとうって言うのもヘンな気がしたけど、お姉ちゃんの肯定の勢いがすごすぎてほかになんて言えばいいのかわからなかった。

しかしそうか。お姉ちゃんはシスコンだったのか。

だからあんなに味方してくれたのか。今日もお母さんのお友達にまで連絡取ってくれたみたいだし……。

「あのさ、お姉ちゃん」

「ど、どうした?」

お姉ちゃんが挙動不審だ。シスコンってバレたくなかったのかな? 

わたし別に、お姉ちゃんの弱み握ったとか考えないよ?

「お父さんに、ちゃんと話してみようと思う。わたしが玲哉くんをすきなんだって」

視線は自分の膝に置いた手に向かってしまった。

どう伝えれば解決するのかはわからないけど……。ちゃんと。

わたしの想いに、お姉ちゃんは短い言葉を返してくれた。

「そうね」

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