それつけたの、俺だよ？－六花の恋５ー【完】

番外編２

side玲哉２

総真の顔が引きつっている。

こいつの場合、まさかだけど羽咲ちゃんを好きな奴とか現れたら、全力でツブしにいくだろうな。

昨日の美結さんとの電話の内容がよみがえる。

『千早？　うん、憶えてるよ。明るくていい子だった』

『その、旦那さんが坂野さんって苗字なんですけど、父さんとすごいもめたとかありますか？』

『坂野？　うーん……、あっ。尚にシメられた坂野くんならいたと思うよ』

『……いるんですね』

『その坂野くんに彼女さんとのお付き合いを反対された、と？』

『そうです』

『あー、たぶんだけど、尚にシメられたのだけが原因じゃないかも』

『？　ほかにも何か？』

『……言っていいのか迷うんだけど、千早って尚のこと好きだったの』

『……千波ちゃんのお母さんが……？』

『そう。でも尚は玲奈以外眼中ナシだから、千早も確か告白とかはしなかったと思うんだけど……』

うそだろ。それが正直な感想だった。嫌われて当然だわ、とまで思った。

一通りの話を聞いた総真は深く肯いた。

「尚哉さんに惚れたんなら坂野さんのお母さんはまともな人だな。想に惚れるのはろくな奴がいない」

「それって一周まわって自虐ネタだからな？」

自虐を通り越して羽咲ちゃんをディスっているくらいだ。

俺が父さんと似ているのは見た目くらいだから。総真は想さんの生き写しレベル。

「で？　諦めるのか？」

真剣な顔の総真の言葉は俺には一蹴できる。

「なわけない」

「――って言うんなら、お前はそうするんだろうな」

かはっと笑う総真。

当たり前だろ。こちとら時空超えて恋してんだ。

反対されたからって諦めるわけがない。

何をしてでも認めてもらえるよう最善を尽くす。それだけだ。

「反対されたくらいで諦めつく心臓じゃないんでな」

「それは重畳。がんばれ」

「なに？　味方してくれんの？」

「当然」

「そうか」