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11 真紅のお姫様
side真紅6
しおりを挟む私は黙って黒ちゃんの言葉を聞く。
周囲には、転生以外の影小路の人には、どう認識されているのか知りたかった。
「影小路(うち)で始祖って呼ばれるのは、一人のことを指しているわけじゃない。影小路の始まった年代にいた者たち、複数人のことを指している。ただ、その中でも当主であった一人だけは『始祖当主(しそとうしゅ)』って呼ばれる。――真紅は複数人いた始祖のうちの一人の生まれ変わりで、海雨は始祖当主の生まれ変わり。……違いないな? 真紅」
私の知る真実を指摘されて、もう逃げ場はない。
隠し続けた、海雨の正体。
「……そう。海雨は、……ずっと前の海雨は、私たちのお姫様。ご当主様だよ」
「でも――海雨ちゃん、見鬼でもないし、普通の人、ですよね?」
澪さんは、私と黒ちゃんを交互に見る。
私の、自分の腕を摑む手に力がこもった。
「ご当主様は、普通の人になったんです」
黒ちゃんが目を細める。
「なった? 真紅。俺や、ほかの影小路の人間も、これ以上は知らない。お前たち始祖の転生があまりに頑なに口を閉ざすから、始祖の転生とは何者なのか、どうして転生を繰り返すのか――。……話してもらえないか? 今の海雨を助ける策も講じられるかもしれない」
海雨を助ける。
その言葉に、私の心は動いた。
私にとって海雨は大事に護って来たお姫様だけど、それを思い出すより前から、大事な大切な、親友だった。
「……始祖たちは、禁忌を犯したんです」
私は、ずっとうつむけていた顔をあげた。
「禁忌?」
そこで初めて、黎の声を聞いた。
少しだけ頭を上下させる。
「泰山府君祭(たいざんふくんさい)を行ったんです」
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