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一 俺は何をしたんですか。
side咲桜5
しおりを挟む「………」
三秒ほどその人を見て、私は『黙る』という行動しか出来なかった。
なんというか……今まで見て来た中で、飛び抜けたイケメンさんがいるんだけど。
テレビだろうが雑誌だろうがをひっくるめても一等をとれるんだけど。
背が高く、真っ黒の髪は清潔感のある長さで、形のいい眉と鋭い視線。
少しすると目つきが悪くも見えるけど、今はお疲れのご様子だ。
あと身体のバランスがすごく整っている。
……本当、何者?
私が『りゅうやくん』さんの観察で精いっぱいになっていると、向こうから口を開いた。
聞こえた声に、私は耳を疑った。
「すみません、在義さん。今日は愛子を止められなかった……」
「あ、いや、そこは気にしないでいいよ」
自分も止められなかったし、と話している在義父さんと……えっと……うーん? あれ?
「大体この話も――」
続けて言いかけて、見上げていた私と目が合って固まった……。
「? 流夜くん?」
「どうかした?」
在義父さんとマナさん、双方から声をかけられて、はっと意識を取り戻したようだった。
「すみません、在義さん。愛子抜きで状況確認したいので、少し娘さんと話をさせてもらってもいいですか?」
「咲桜と? 構わないけど……片腕を折られる覚悟はあるかい?」
「俺は何をしたんですか」
真剣な目の在義父さんを、平坦な瞳で見返している。
「まーまー華取先輩。これはあれですよ、お若い者同士でにふふ、みたいな。ロビーに行きましょうよ」
何やら見合いの仕掛ける側に願望を持っているらしいマナさんは、提言に反対せずに在義父さんを引っ張って行ってしまった。
マナさんの足音が消えたのを確認するように間を置いてから、『りゅうやくん』は眼鏡のない瞳を私に向けた。
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