168 / 179
九 たまにでいいから、こうしてもいいか?
side咲桜2
しおりを挟む
「咲桜笑満―、バスケのお誘いだけど行くー?」
「行く!」
昼休み、友人からかかった召集に、笑満と揃って肯いた。頼は今日も机に突っ伏している。
体育館に向かって廊下を進んでいると、眼鏡の神宮先生がやってきた。
「神宮先生」
私が声をかける。この程度の会話は、どの先生とも日常だから、変に思われることもないはずだ。すると先生――流夜くんは、少し困ったように微笑んだ。『神宮先生』の顔だ。笑満も立ち止まる。
「次うちらの授業ですよね」
「そうですよ。けど華取さん。またやりましたね」
「え、なにを――うっ」
ファイルの端から見せられたそれ。小テストのプリントだ。紅い字で『名前を書きましょう』と書かれている。小学生の答案のような文句に、咲桜は固まった。またやった……。私は、小学生の頃からテストなんかで名前の書き忘れをよくしていた。
「これ専用の補習でもいりますか?」
「……気を付けます」
「そうしてください」
『神宮先生』とは、それだけの会話ですれ違う。
なんで書き忘れるかなあ。
「咲桜、気にしなくていいと思うよ。これからは」
「? なんで?」
「だってあれ、流夜くんと逢う前のテストでしょ?」
「うん? あー、そうだね。……なんでこれからは書き忘れない、みたいに言えるの?」
「あたしが咲桜の親友だからかなー?」
「ど、どういう意味っ?」
泡喰った私を、笑満は「どういう意味だろうねー」と軽くあしらっていく。そりゃあ、流夜くんが名前で呼んでくれたのは嬉しかったけど……。
………。
思わず、ちらっと振り返った。
「行く!」
昼休み、友人からかかった召集に、笑満と揃って肯いた。頼は今日も机に突っ伏している。
体育館に向かって廊下を進んでいると、眼鏡の神宮先生がやってきた。
「神宮先生」
私が声をかける。この程度の会話は、どの先生とも日常だから、変に思われることもないはずだ。すると先生――流夜くんは、少し困ったように微笑んだ。『神宮先生』の顔だ。笑満も立ち止まる。
「次うちらの授業ですよね」
「そうですよ。けど華取さん。またやりましたね」
「え、なにを――うっ」
ファイルの端から見せられたそれ。小テストのプリントだ。紅い字で『名前を書きましょう』と書かれている。小学生の答案のような文句に、咲桜は固まった。またやった……。私は、小学生の頃からテストなんかで名前の書き忘れをよくしていた。
「これ専用の補習でもいりますか?」
「……気を付けます」
「そうしてください」
『神宮先生』とは、それだけの会話ですれ違う。
なんで書き忘れるかなあ。
「咲桜、気にしなくていいと思うよ。これからは」
「? なんで?」
「だってあれ、流夜くんと逢う前のテストでしょ?」
「うん? あー、そうだね。……なんでこれからは書き忘れない、みたいに言えるの?」
「あたしが咲桜の親友だからかなー?」
「ど、どういう意味っ?」
泡喰った私を、笑満は「どういう意味だろうねー」と軽くあしらっていく。そりゃあ、流夜くんが名前で呼んでくれたのは嬉しかったけど……。
………。
思わず、ちらっと振り返った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる