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王都編12 所有印
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王都編12 所有印
昼休みも終わり、オルテガに送り届けられる形で宰相の執務室に戻ってからは怒涛の勢いで仕事を進めた。
とにかくやらないと終わらない。腱鞘炎に怯えながら時には説明を聞きつつも、ひたすらサインをし続けるうちに窓から射し込む光はいつしか燃えるようなオレンジ色になっていた。
夕焼けの中で終業を告げる鐘が鳴ったものの、もう少しでキリが良い所になるからと残業するつもりでいたその時だ。
昼間と同じようにドアがノックされ、ルファスが対応に出る。うーん、デジャヴ。深い溜め息を零しつつ、視線でルファスに訪問者を追い払うよう指示を出して俺はひたすら手を動かす。
兎にも角にも少しでも終わらせたい。まだこれからやらなきゃいけない事が山積みなのに、通常業務に足を引っ張られている場合ではないのだ。
「リア」
…と思っているのに、この男は俺が仕事にうつつを抜かすのが許せないらしい。ルファスの脇を通り抜けてやんわり押し入ってくると、デスクの前でオルテガがにこやかに圧を掛けてきやがる。
「終業の鐘は鳴ったぞ」
「……もう少しやってから帰る」
手を動かして視線も上げずに告げれば、雰囲気がピリつく。ご機嫌を損ねたか。正直に言えば、帰ったらピアスを開けるのも待ってるから帰りたくないのが本音だ。
バリバリと手を動かしていると急にペンを取り上げられる。あ、と思って顔を上げた俺はそこにいたオルテガの表情に思わずフリーズした。
笑っている。笑っているんだが、雰囲気が不穏だ。大人しく言う事を聞いておけ、痛い目を見るぞと本能が警鐘を鳴らす。
「わかった。帰る。ただ、あと三枚だけサインさせてくれ」
両手を挙げて降参を示しつつも交渉にはいれば、オルテガが少々不服そうにしながらもペンを返してくれた。
キリの良かった三枚にサインをして文官に渡すとオルテガが俺の手を取り、有無も言わさず帰路に着く。引っ張られるように歩きながら残っている者達に帰るように指示するが、ちゃんと聞こえただろうか。
城から出ればドナドナよろしく直ぐ様馬車に乗せられ、無情にも軽快に馬車はレヴォネ家に向かって走り出す。
隣に座ったオルテガはすっかり御機嫌だ。行きと同じように時折俺の耳に触れながら他愛のない話をしている。対する俺は少々憂鬱だった。
先端恐怖症までいかないものの、注射の類いがものすごく苦手なのだ。体に針が刺さっているのを想像するだけで背筋がゾワゾワする。
どういう手段で開けるのか分からないが、何かしら針を刺すのは間違いないだろう。嗚呼、憂鬱だ。出来る事なら一瞬で終わらせて欲しい。なんなら、寝てる間にやって欲しいくらいだ。
そんな正反対な心情の俺達を乗せて馬車はレヴォネ家に向かって駆け抜けた。
そして、夜である。
レヴォネ家の屋敷に帰ってからたっぷり甘やかされ、世話を焼かれ。ダーランからの報告を聞いたりして少々疲れつつも一人で長風呂を楽しんでから寝室に行けば、準備万端なオルテガが待ち構えていた。
ぽんぽんと叩かれたのはソファーに座ったオルテガの膝だ。ここに座れという事らしい。
仕方ない、朝に約束をしたからな…。
気が重いながらオルテガの片膝の上に座りながらテーブルの上を見れば、ピアスを開けるためと思しき太い針に消毒用の物が一式とピアスが入っている様子のアクセサリーケース。それ以外には何故か酒やら果物やらが置かれている。
太い針に怯えつつも他の品を見て何をするんだと思っていれば、オルテガが膝に座った俺を支えたまま器用に酒の瓶を手に取った。グラスに注がれるそれは僅かに濁った赤い酒で果物のような甘い香りがする。
「ガーランド領で作っている果実酒だ」
甘い香りはスモモだろうか。美味しそうな匂いがするが、グラスが一つしかない事に気がつく。
どうするつもりなんだろうかと思っているうちにオルテガが酒を注いだグラスを自分の口元に運ぶ。まさか自分だけ飲むつもりなのか!? と思った時だ。
流れるように顎を捉えられ、キスをされる。びっくりして口を閉じる間もなかった唇の隙間から流し込まれるのは少し温くなった果実酒。少し薬っぽい風味をした甘酸っぱい酒の味と口移しに驚くしかない俺を更に追い詰めるようにオルテガの舌が口内に入ってくる。
「んっ……ふぅ……」
熱い舌がぬるりと絡んできて背筋がぞくぞくする。甘酸っぱい酒を擦り込むように舌を動かされ、零れるのは甘い吐息だ。
領地からの移動の間はこういった触れ合いをしてこなかったから久々で、酒も手伝って直ぐに思考がふわふわしてくる。堪らずにオルテガの首に腕を回して抱き付けば、逞しい腕が体を支えてくれた。
上顎を舌先でなぞられ、口腔内をくまなく犯される。水音と熱とオルテガの匂いに胎の奥が疼くのを感じて身動げば、察したらしいオルテガの瞳が優しく笑んだ。
そんな表情がどうしようもなく好きで。世界で俺だけが見られる顔だと思ったら胸にある仄暗い穴が満たされるような気がした。
「は……」
散々蹂躙されて漸く解放される。
酒による酩酊感と久方振りの快楽、酸欠とトリプルパンチでクラクラしていれば、突然左耳の耳朶に鋭い痛みが奔った。思ったより痛くなかったものの、突然の痛みにびっくりして体が跳ねるとオルテガがすまないと謝りながら俺の額にキスを落としてくれる。
どうやら、片耳分が開けられたようで消毒やら何やらをしているらしいが久々に与えられた快楽はその恐怖や痛みすら甘い物に変えてしまうようだ。
ちりちりとした痛みが心地良くて思わず腰が揺れる。キスだけで宙ぶらりんにされた俺の体はすっかりその気になっているのに、オルテガは触れてくれない。
「フィン……」
「こら、ダメだ」
相手の耳をはみながら誘う様に甘く啼いてみせたのに、子供に言い含める様に叱られてムッとする。朝の仕返しなのか、オルテガは俺を無視して淡々と針を消毒していた。面白くない。
腹いせに飲んでやろうとグラスに酒を注いで口に運ぶ。甘い香りにハーブの風味が強く効いた程良い酸味の酒は俺の好みだ。食前酒や寝る前に少し飲むのに良さそうなので今度ガーランド領から買い付けるとしよう。
良く冷えた果実酒は先程よりもキリリとした口当たりだ。うん、ロックで飲んでも炭酸で割っても美味しそうだな。
「リア」
名前を呼ばれるが無視してもう一杯注ぐ。小さなグラスだから直ぐに飲めてしまうな。
「……飲みやすいが酒精が強いから程々にしておけ」
そう忠告しながらオルテガが俺の首筋に鼻先を擦り寄せてきた。大型犬が甘える様なこの仕草に弱いことを知っていてやってくるのだからタチが悪い。
「もう一杯だけならいいだろう?」
飲ませろ、とグラスを差し出しながら暗に強請ってやれば黄昏色の瞳が嬉しそうに細くなる。俺からグラスを奪うと口に含み、オルテガが顔を近付けてきた。
応えるように目を閉じてオルテガの首に腕を回す。近くなる体温に、オルテガの匂い。全部が全部熱を煽る。
薄く口を開けていれば、直ぐに唇が触れ、ゆっくりと果実酒が流し込まれる。与えられる酒を飲み下し、熱い舌を誘うように舌を重ねればぐいと腰を引き寄せられた。
密着しながら貪る様なキスを交わす。部屋の中に落ちる互いの呼吸と濡れた音に嫌でも煽られてしまう。
「ん……む……」
分厚い舌に嬲られ、大きな手が体をなぞる。喰らい尽くすように貪られながらそれに応えようと舌を絡め、オルテガの髪を撫でた。
気持ちが良い。思考がとろりと溶けて些細な刺激すら快楽として拾い上げていくせいでじくじくと体が熱くなり、オルテガを求めて疼く。
呼吸もままならなくなってきた辺りで解放され、今度は右耳に痛みが走った。先程と同じように消毒やら何やらをされる間も、思考はぽやぽやと浮ついて目の前の男の事しか考えられない。
やがてオルテガが少し体を離してテーブルの上に置いてあった手鏡を取った。俺の顔が映るように持ってくると優しい手付きで顔に掛かる髪を耳に掛けられる。
鏡の中に映る俺の両耳にはオルテガの瞳と同じ黄昏色の宝石が嵌まったピアスが在った。
見慣れないそれに違和感を覚えながらも、胸の奥がじわりと熱くなる。これはまるで所有印だ。
「……お前が俺の色を身に付けてるのは堪らないな」
頬に口付けられ、唇で耳介を弄られながら囁き掛けられた言葉にぎゅんとなる。ちりりとした痛みと言葉、羞恥と歓喜と愛おしさとドM心なんかのいろんな感情がごちゃ混ぜになって胎の奥が疼く。
「フィン……」
このまま気絶するまで…いや、気絶してもぐちゃぐちゃに抱かれたい。耳だけじゃなくて体の奥の奥まで彼のものなのだと刻み込んで欲しい。
そんな俺の思いが顔にも出ていたのか、オルテガが小さく苦笑する。
「足りない。もっと私に触れてくれ」
鏡を取り上げてからオルテガの膝を跨ぐように膝立ちになりながら彼の頬を両手で包んで先を強請る。
支える様に腰を抱き締めてくれる熱い腕。こちらを真っ直ぐ見つめる夕焼け色の瞳。
「……いいのか?」
探る様に俺を見上げる瞳は躊躇している様だ。確かに王都に戻るにあたってなるべく醜聞になるような事は避けようと言っていたが、もう今更だ。
昨日も今日も人前で散々俺に構っていたんだ。とっくの昔に噂になっている。
熱を煽るだけ煽ってお預けなんて酷い事をしてくれるな。
「早くここにお前が欲しい。奥まで来て、私の胎をお前で満たしてくれ」
すり、と指先で自分の腹を撫でて見せれば、オルテガが黄昏色の瞳を微かに開き、それから獲物を前にした飢えた野獣の顔をする。その表情に背筋がゾクゾクしてしまう。
「……手加減を期待するなよ」
低く落ちた呟きに艶やかに微笑んで応えて見せた。
昼休みも終わり、オルテガに送り届けられる形で宰相の執務室に戻ってからは怒涛の勢いで仕事を進めた。
とにかくやらないと終わらない。腱鞘炎に怯えながら時には説明を聞きつつも、ひたすらサインをし続けるうちに窓から射し込む光はいつしか燃えるようなオレンジ色になっていた。
夕焼けの中で終業を告げる鐘が鳴ったものの、もう少しでキリが良い所になるからと残業するつもりでいたその時だ。
昼間と同じようにドアがノックされ、ルファスが対応に出る。うーん、デジャヴ。深い溜め息を零しつつ、視線でルファスに訪問者を追い払うよう指示を出して俺はひたすら手を動かす。
兎にも角にも少しでも終わらせたい。まだこれからやらなきゃいけない事が山積みなのに、通常業務に足を引っ張られている場合ではないのだ。
「リア」
…と思っているのに、この男は俺が仕事にうつつを抜かすのが許せないらしい。ルファスの脇を通り抜けてやんわり押し入ってくると、デスクの前でオルテガがにこやかに圧を掛けてきやがる。
「終業の鐘は鳴ったぞ」
「……もう少しやってから帰る」
手を動かして視線も上げずに告げれば、雰囲気がピリつく。ご機嫌を損ねたか。正直に言えば、帰ったらピアスを開けるのも待ってるから帰りたくないのが本音だ。
バリバリと手を動かしていると急にペンを取り上げられる。あ、と思って顔を上げた俺はそこにいたオルテガの表情に思わずフリーズした。
笑っている。笑っているんだが、雰囲気が不穏だ。大人しく言う事を聞いておけ、痛い目を見るぞと本能が警鐘を鳴らす。
「わかった。帰る。ただ、あと三枚だけサインさせてくれ」
両手を挙げて降参を示しつつも交渉にはいれば、オルテガが少々不服そうにしながらもペンを返してくれた。
キリの良かった三枚にサインをして文官に渡すとオルテガが俺の手を取り、有無も言わさず帰路に着く。引っ張られるように歩きながら残っている者達に帰るように指示するが、ちゃんと聞こえただろうか。
城から出ればドナドナよろしく直ぐ様馬車に乗せられ、無情にも軽快に馬車はレヴォネ家に向かって走り出す。
隣に座ったオルテガはすっかり御機嫌だ。行きと同じように時折俺の耳に触れながら他愛のない話をしている。対する俺は少々憂鬱だった。
先端恐怖症までいかないものの、注射の類いがものすごく苦手なのだ。体に針が刺さっているのを想像するだけで背筋がゾワゾワする。
どういう手段で開けるのか分からないが、何かしら針を刺すのは間違いないだろう。嗚呼、憂鬱だ。出来る事なら一瞬で終わらせて欲しい。なんなら、寝てる間にやって欲しいくらいだ。
そんな正反対な心情の俺達を乗せて馬車はレヴォネ家に向かって駆け抜けた。
そして、夜である。
レヴォネ家の屋敷に帰ってからたっぷり甘やかされ、世話を焼かれ。ダーランからの報告を聞いたりして少々疲れつつも一人で長風呂を楽しんでから寝室に行けば、準備万端なオルテガが待ち構えていた。
ぽんぽんと叩かれたのはソファーに座ったオルテガの膝だ。ここに座れという事らしい。
仕方ない、朝に約束をしたからな…。
気が重いながらオルテガの片膝の上に座りながらテーブルの上を見れば、ピアスを開けるためと思しき太い針に消毒用の物が一式とピアスが入っている様子のアクセサリーケース。それ以外には何故か酒やら果物やらが置かれている。
太い針に怯えつつも他の品を見て何をするんだと思っていれば、オルテガが膝に座った俺を支えたまま器用に酒の瓶を手に取った。グラスに注がれるそれは僅かに濁った赤い酒で果物のような甘い香りがする。
「ガーランド領で作っている果実酒だ」
甘い香りはスモモだろうか。美味しそうな匂いがするが、グラスが一つしかない事に気がつく。
どうするつもりなんだろうかと思っているうちにオルテガが酒を注いだグラスを自分の口元に運ぶ。まさか自分だけ飲むつもりなのか!? と思った時だ。
流れるように顎を捉えられ、キスをされる。びっくりして口を閉じる間もなかった唇の隙間から流し込まれるのは少し温くなった果実酒。少し薬っぽい風味をした甘酸っぱい酒の味と口移しに驚くしかない俺を更に追い詰めるようにオルテガの舌が口内に入ってくる。
「んっ……ふぅ……」
熱い舌がぬるりと絡んできて背筋がぞくぞくする。甘酸っぱい酒を擦り込むように舌を動かされ、零れるのは甘い吐息だ。
領地からの移動の間はこういった触れ合いをしてこなかったから久々で、酒も手伝って直ぐに思考がふわふわしてくる。堪らずにオルテガの首に腕を回して抱き付けば、逞しい腕が体を支えてくれた。
上顎を舌先でなぞられ、口腔内をくまなく犯される。水音と熱とオルテガの匂いに胎の奥が疼くのを感じて身動げば、察したらしいオルテガの瞳が優しく笑んだ。
そんな表情がどうしようもなく好きで。世界で俺だけが見られる顔だと思ったら胸にある仄暗い穴が満たされるような気がした。
「は……」
散々蹂躙されて漸く解放される。
酒による酩酊感と久方振りの快楽、酸欠とトリプルパンチでクラクラしていれば、突然左耳の耳朶に鋭い痛みが奔った。思ったより痛くなかったものの、突然の痛みにびっくりして体が跳ねるとオルテガがすまないと謝りながら俺の額にキスを落としてくれる。
どうやら、片耳分が開けられたようで消毒やら何やらをしているらしいが久々に与えられた快楽はその恐怖や痛みすら甘い物に変えてしまうようだ。
ちりちりとした痛みが心地良くて思わず腰が揺れる。キスだけで宙ぶらりんにされた俺の体はすっかりその気になっているのに、オルテガは触れてくれない。
「フィン……」
「こら、ダメだ」
相手の耳をはみながら誘う様に甘く啼いてみせたのに、子供に言い含める様に叱られてムッとする。朝の仕返しなのか、オルテガは俺を無視して淡々と針を消毒していた。面白くない。
腹いせに飲んでやろうとグラスに酒を注いで口に運ぶ。甘い香りにハーブの風味が強く効いた程良い酸味の酒は俺の好みだ。食前酒や寝る前に少し飲むのに良さそうなので今度ガーランド領から買い付けるとしよう。
良く冷えた果実酒は先程よりもキリリとした口当たりだ。うん、ロックで飲んでも炭酸で割っても美味しそうだな。
「リア」
名前を呼ばれるが無視してもう一杯注ぐ。小さなグラスだから直ぐに飲めてしまうな。
「……飲みやすいが酒精が強いから程々にしておけ」
そう忠告しながらオルテガが俺の首筋に鼻先を擦り寄せてきた。大型犬が甘える様なこの仕草に弱いことを知っていてやってくるのだからタチが悪い。
「もう一杯だけならいいだろう?」
飲ませろ、とグラスを差し出しながら暗に強請ってやれば黄昏色の瞳が嬉しそうに細くなる。俺からグラスを奪うと口に含み、オルテガが顔を近付けてきた。
応えるように目を閉じてオルテガの首に腕を回す。近くなる体温に、オルテガの匂い。全部が全部熱を煽る。
薄く口を開けていれば、直ぐに唇が触れ、ゆっくりと果実酒が流し込まれる。与えられる酒を飲み下し、熱い舌を誘うように舌を重ねればぐいと腰を引き寄せられた。
密着しながら貪る様なキスを交わす。部屋の中に落ちる互いの呼吸と濡れた音に嫌でも煽られてしまう。
「ん……む……」
分厚い舌に嬲られ、大きな手が体をなぞる。喰らい尽くすように貪られながらそれに応えようと舌を絡め、オルテガの髪を撫でた。
気持ちが良い。思考がとろりと溶けて些細な刺激すら快楽として拾い上げていくせいでじくじくと体が熱くなり、オルテガを求めて疼く。
呼吸もままならなくなってきた辺りで解放され、今度は右耳に痛みが走った。先程と同じように消毒やら何やらをされる間も、思考はぽやぽやと浮ついて目の前の男の事しか考えられない。
やがてオルテガが少し体を離してテーブルの上に置いてあった手鏡を取った。俺の顔が映るように持ってくると優しい手付きで顔に掛かる髪を耳に掛けられる。
鏡の中に映る俺の両耳にはオルテガの瞳と同じ黄昏色の宝石が嵌まったピアスが在った。
見慣れないそれに違和感を覚えながらも、胸の奥がじわりと熱くなる。これはまるで所有印だ。
「……お前が俺の色を身に付けてるのは堪らないな」
頬に口付けられ、唇で耳介を弄られながら囁き掛けられた言葉にぎゅんとなる。ちりりとした痛みと言葉、羞恥と歓喜と愛おしさとドM心なんかのいろんな感情がごちゃ混ぜになって胎の奥が疼く。
「フィン……」
このまま気絶するまで…いや、気絶してもぐちゃぐちゃに抱かれたい。耳だけじゃなくて体の奥の奥まで彼のものなのだと刻み込んで欲しい。
そんな俺の思いが顔にも出ていたのか、オルテガが小さく苦笑する。
「足りない。もっと私に触れてくれ」
鏡を取り上げてからオルテガの膝を跨ぐように膝立ちになりながら彼の頬を両手で包んで先を強請る。
支える様に腰を抱き締めてくれる熱い腕。こちらを真っ直ぐ見つめる夕焼け色の瞳。
「……いいのか?」
探る様に俺を見上げる瞳は躊躇している様だ。確かに王都に戻るにあたってなるべく醜聞になるような事は避けようと言っていたが、もう今更だ。
昨日も今日も人前で散々俺に構っていたんだ。とっくの昔に噂になっている。
熱を煽るだけ煽ってお預けなんて酷い事をしてくれるな。
「早くここにお前が欲しい。奥まで来て、私の胎をお前で満たしてくれ」
すり、と指先で自分の腹を撫でて見せれば、オルテガが黄昏色の瞳を微かに開き、それから獲物を前にした飢えた野獣の顔をする。その表情に背筋がゾクゾクしてしまう。
「……手加減を期待するなよ」
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