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2 現実って残酷
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2 現実って残酷
翌日、朝陽の中で俺は目が覚めた。
戦々恐々しながら部屋を見回してみてもやっぱりここは小さい子が好みそうなぬいぐるみが沢山ある西洋貴族の部屋だ。夢でも何でもなくて相変わらずベッドは不釣り合いな程広くて、よくよく見れば豪華な天蓋まで付いているお貴族様仕様。
ぼんやりする頭のまま、ふらつく体で何とか高いベッドから降りようとした。やはり感覚で覚えている自分の体より随分小さくて動くのにいちいち違和感が付き纏う。
半分転がり落ちるように床に降りれば、足元は柔らかな絨毯だった。見るからに織りも図柄も緻密なそれは一般庶民の俺でも一発で高級品と分かる代物。恐る恐る踏みながら向かうのは部屋の隅に置いてあるこれまた立派な姿見だ。
毎朝メイドに身支度してもらう場所。俺はメイドさんに身支度してもらった覚えなんてないのに、確かに記憶に存在している。
名前はメアリーだ。茶色の髪をおさげにしているのが可愛らしい、姉のような存在の人。
心臓が早鐘のように鳴り響く中、鏡に自分の姿を写して見る。
そこにいたのはひとりの可愛らしい幼児だ。さらさらの銀色の髪にくりくりした宝石のような蒼い瞳。身長は俺の記憶にある自分の身長の半分もない。
思わず眩暈がして尻餅をつけば、鏡の中の幼児も同じように尻餅をついた。嗚呼、やっぱり「これ」が俺なのか。
ぺたりと頬に触れれば、もちもち柔らかく滑らか。俯いた視界に入る髪は日本人の見慣れた黒髪ではなツヤツヤした銀色。掌は真っ白で柔らかく、ろくに手入れもせずに日焼けしていた俺の知る手とは程遠い。
『異世界転生ってのが今の流行りなんだよ』
ふと流行りの漫画やアニメの話をしていた同級生の話が思い出される。曰く、死んだり神様に呼ばれた人間がアニメやゲームなんかの異世界に飛ばされ、登場人物に転生して破滅するフラグを回避するとかしないとか。嘘だろとは思いつつ、目の前の鏡は嫌でも現実を突き付けてくる。
そういえば、父は昨夜俺の事を『ノア』と呼んだ。朧げなもう一つの記憶の中でもそう呼ばれていたからこれが今の俺の名前なのだろう。
姓はなんだったか……。記憶を掘り起こしてみれば、それらしい響きが思い出された。
「ノア・リフキンド……?」
その名の響きには覚えがある。同時にサーッと血の気が引くのを感じた。
ノア・リフキンド!! よりにもよって!?
いきなり幼児になっただけでも十分すぎるくらいショックなのに、更に深い絶望感を覚えて足元に真っ暗な穴が開いている気分だ。
「まてまて、そんなのうそだ。ゆめにちがいない」
自分を落ち着かせようと声に出すが、聞き慣れた自分の声とは全然違ってずっと高くて舌ったらずだった。ありとあらゆる絶望に打ちひしがれて頭を抱えている俺を他所にドアがノックされる。
程なくして入ってきたのはメイドのメアリーだ。記憶にある相貌より随分と憔悴している彼女は鏡の前でしゃがみ込む俺を見て緑色の瞳を潤ませた。
「ノア様! 良かった、本当に良かった……!!」
駆け寄ってきたメアリーに強く抱き締められて安堵を覚える。これはきっとノアの記憶と感覚だ。優しい花のような香りのする彼女はいつもこうして抱き締めてくれたから。
自分の意思とは無関係にじわりと視界が滲む。精神がノアの方に引き摺られているのかもしれない。声を挙げてなるものかと唇を噛み締めながら嗚咽していれば、メアリーにそっと頭を撫でられた。
「もう大丈夫ですよ、ノア様。お怪我も問題ないとお医者様も仰ってましたから」
メアリーはそう言うが、俺にとっちゃ人生を懸けた大問題だ。
何故なら、ノア・リフキンドは17歳でこの国を壊し尽くして死ぬ運命なのだから。
翌日、朝陽の中で俺は目が覚めた。
戦々恐々しながら部屋を見回してみてもやっぱりここは小さい子が好みそうなぬいぐるみが沢山ある西洋貴族の部屋だ。夢でも何でもなくて相変わらずベッドは不釣り合いな程広くて、よくよく見れば豪華な天蓋まで付いているお貴族様仕様。
ぼんやりする頭のまま、ふらつく体で何とか高いベッドから降りようとした。やはり感覚で覚えている自分の体より随分小さくて動くのにいちいち違和感が付き纏う。
半分転がり落ちるように床に降りれば、足元は柔らかな絨毯だった。見るからに織りも図柄も緻密なそれは一般庶民の俺でも一発で高級品と分かる代物。恐る恐る踏みながら向かうのは部屋の隅に置いてあるこれまた立派な姿見だ。
毎朝メイドに身支度してもらう場所。俺はメイドさんに身支度してもらった覚えなんてないのに、確かに記憶に存在している。
名前はメアリーだ。茶色の髪をおさげにしているのが可愛らしい、姉のような存在の人。
心臓が早鐘のように鳴り響く中、鏡に自分の姿を写して見る。
そこにいたのはひとりの可愛らしい幼児だ。さらさらの銀色の髪にくりくりした宝石のような蒼い瞳。身長は俺の記憶にある自分の身長の半分もない。
思わず眩暈がして尻餅をつけば、鏡の中の幼児も同じように尻餅をついた。嗚呼、やっぱり「これ」が俺なのか。
ぺたりと頬に触れれば、もちもち柔らかく滑らか。俯いた視界に入る髪は日本人の見慣れた黒髪ではなツヤツヤした銀色。掌は真っ白で柔らかく、ろくに手入れもせずに日焼けしていた俺の知る手とは程遠い。
『異世界転生ってのが今の流行りなんだよ』
ふと流行りの漫画やアニメの話をしていた同級生の話が思い出される。曰く、死んだり神様に呼ばれた人間がアニメやゲームなんかの異世界に飛ばされ、登場人物に転生して破滅するフラグを回避するとかしないとか。嘘だろとは思いつつ、目の前の鏡は嫌でも現実を突き付けてくる。
そういえば、父は昨夜俺の事を『ノア』と呼んだ。朧げなもう一つの記憶の中でもそう呼ばれていたからこれが今の俺の名前なのだろう。
姓はなんだったか……。記憶を掘り起こしてみれば、それらしい響きが思い出された。
「ノア・リフキンド……?」
その名の響きには覚えがある。同時にサーッと血の気が引くのを感じた。
ノア・リフキンド!! よりにもよって!?
いきなり幼児になっただけでも十分すぎるくらいショックなのに、更に深い絶望感を覚えて足元に真っ暗な穴が開いている気分だ。
「まてまて、そんなのうそだ。ゆめにちがいない」
自分を落ち着かせようと声に出すが、聞き慣れた自分の声とは全然違ってずっと高くて舌ったらずだった。ありとあらゆる絶望に打ちひしがれて頭を抱えている俺を他所にドアがノックされる。
程なくして入ってきたのはメイドのメアリーだ。記憶にある相貌より随分と憔悴している彼女は鏡の前でしゃがみ込む俺を見て緑色の瞳を潤ませた。
「ノア様! 良かった、本当に良かった……!!」
駆け寄ってきたメアリーに強く抱き締められて安堵を覚える。これはきっとノアの記憶と感覚だ。優しい花のような香りのする彼女はいつもこうして抱き締めてくれたから。
自分の意思とは無関係にじわりと視界が滲む。精神がノアの方に引き摺られているのかもしれない。声を挙げてなるものかと唇を噛み締めながら嗚咽していれば、メアリーにそっと頭を撫でられた。
「もう大丈夫ですよ、ノア様。お怪我も問題ないとお医者様も仰ってましたから」
メアリーはそう言うが、俺にとっちゃ人生を懸けた大問題だ。
何故なら、ノア・リフキンドは17歳でこの国を壊し尽くして死ぬ運命なのだから。
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