2 / 13
2 現実って残酷
しおりを挟む
2 現実って残酷
翌日、朝陽の中で俺は目が覚めた。
戦々恐々しながら部屋を見回してみてもやっぱりここは小さい子が好みそうなぬいぐるみが沢山ある西洋貴族の部屋だ。夢でも何でもなくて相変わらずベッドは不釣り合いな程広くて、よくよく見れば豪華な天蓋まで付いているお貴族様仕様。
ぼんやりする頭のまま、ふらつく体で何とか高いベッドから降りようとした。やはり感覚で覚えている自分の体より随分小さくて動くのにいちいち違和感が付き纏う。
半分転がり落ちるように床に降りれば、足元は柔らかな絨毯だった。見るからに織りも図柄も緻密なそれは一般庶民の俺でも一発で高級品と分かる代物。恐る恐る踏みながら向かうのは部屋の隅に置いてあるこれまた立派な姿見だ。
毎朝メイドに身支度してもらう場所。俺はメイドさんに身支度してもらった覚えなんてないのに、確かに記憶に存在している。
名前はメアリーだ。茶色の髪をおさげにしているのが可愛らしい、姉のような存在の人。
心臓が早鐘のように鳴り響く中、鏡に自分の姿を写して見る。
そこにいたのはひとりの可愛らしい幼児だ。さらさらの銀色の髪にくりくりした宝石のような蒼い瞳。身長は俺の記憶にある自分の身長の半分もない。
思わず眩暈がして尻餅をつけば、鏡の中の幼児も同じように尻餅をついた。嗚呼、やっぱり「これ」が俺なのか。
ぺたりと頬に触れれば、もちもち柔らかく滑らか。俯いた視界に入る髪は日本人の見慣れた黒髪ではなツヤツヤした銀色。掌は真っ白で柔らかく、ろくに手入れもせずに日焼けしていた俺の知る手とは程遠い。
『異世界転生ってのが今の流行りなんだよ』
ふと流行りの漫画やアニメの話をしていた同級生の話が思い出される。曰く、死んだり神様に呼ばれた人間がアニメやゲームなんかの異世界に飛ばされ、登場人物に転生して破滅するフラグを回避するとかしないとか。嘘だろとは思いつつ、目の前の鏡は嫌でも現実を突き付けてくる。
そういえば、父は昨夜俺の事を『ノア』と呼んだ。朧げなもう一つの記憶の中でもそう呼ばれていたからこれが今の俺の名前なのだろう。
姓はなんだったか……。記憶を掘り起こしてみれば、それらしい響きが思い出された。
「ノア・リフキンド……?」
その名の響きには覚えがある。同時にサーッと血の気が引くのを感じた。
ノア・リフキンド!! よりにもよって!?
いきなり幼児になっただけでも十分すぎるくらいショックなのに、更に深い絶望感を覚えて足元に真っ暗な穴が開いている気分だ。
「まてまて、そんなのうそだ。ゆめにちがいない」
自分を落ち着かせようと声に出すが、聞き慣れた自分の声とは全然違ってずっと高くて舌ったらずだった。ありとあらゆる絶望に打ちひしがれて頭を抱えている俺を他所にドアがノックされる。
程なくして入ってきたのはメイドのメアリーだ。記憶にある相貌より随分と憔悴している彼女は鏡の前でしゃがみ込む俺を見て緑色の瞳を潤ませた。
「ノア様! 良かった、本当に良かった……!!」
駆け寄ってきたメアリーに強く抱き締められて安堵を覚える。これはきっとノアの記憶と感覚だ。優しい花のような香りのする彼女はいつもこうして抱き締めてくれたから。
自分の意思とは無関係にじわりと視界が滲む。精神がノアの方に引き摺られているのかもしれない。声を挙げてなるものかと唇を噛み締めながら嗚咽していれば、メアリーにそっと頭を撫でられた。
「もう大丈夫ですよ、ノア様。お怪我も問題ないとお医者様も仰ってましたから」
メアリーはそう言うが、俺にとっちゃ人生を懸けた大問題だ。
何故なら、ノア・リフキンドは17歳でこの国を壊し尽くして死ぬ運命なのだから。
翌日、朝陽の中で俺は目が覚めた。
戦々恐々しながら部屋を見回してみてもやっぱりここは小さい子が好みそうなぬいぐるみが沢山ある西洋貴族の部屋だ。夢でも何でもなくて相変わらずベッドは不釣り合いな程広くて、よくよく見れば豪華な天蓋まで付いているお貴族様仕様。
ぼんやりする頭のまま、ふらつく体で何とか高いベッドから降りようとした。やはり感覚で覚えている自分の体より随分小さくて動くのにいちいち違和感が付き纏う。
半分転がり落ちるように床に降りれば、足元は柔らかな絨毯だった。見るからに織りも図柄も緻密なそれは一般庶民の俺でも一発で高級品と分かる代物。恐る恐る踏みながら向かうのは部屋の隅に置いてあるこれまた立派な姿見だ。
毎朝メイドに身支度してもらう場所。俺はメイドさんに身支度してもらった覚えなんてないのに、確かに記憶に存在している。
名前はメアリーだ。茶色の髪をおさげにしているのが可愛らしい、姉のような存在の人。
心臓が早鐘のように鳴り響く中、鏡に自分の姿を写して見る。
そこにいたのはひとりの可愛らしい幼児だ。さらさらの銀色の髪にくりくりした宝石のような蒼い瞳。身長は俺の記憶にある自分の身長の半分もない。
思わず眩暈がして尻餅をつけば、鏡の中の幼児も同じように尻餅をついた。嗚呼、やっぱり「これ」が俺なのか。
ぺたりと頬に触れれば、もちもち柔らかく滑らか。俯いた視界に入る髪は日本人の見慣れた黒髪ではなツヤツヤした銀色。掌は真っ白で柔らかく、ろくに手入れもせずに日焼けしていた俺の知る手とは程遠い。
『異世界転生ってのが今の流行りなんだよ』
ふと流行りの漫画やアニメの話をしていた同級生の話が思い出される。曰く、死んだり神様に呼ばれた人間がアニメやゲームなんかの異世界に飛ばされ、登場人物に転生して破滅するフラグを回避するとかしないとか。嘘だろとは思いつつ、目の前の鏡は嫌でも現実を突き付けてくる。
そういえば、父は昨夜俺の事を『ノア』と呼んだ。朧げなもう一つの記憶の中でもそう呼ばれていたからこれが今の俺の名前なのだろう。
姓はなんだったか……。記憶を掘り起こしてみれば、それらしい響きが思い出された。
「ノア・リフキンド……?」
その名の響きには覚えがある。同時にサーッと血の気が引くのを感じた。
ノア・リフキンド!! よりにもよって!?
いきなり幼児になっただけでも十分すぎるくらいショックなのに、更に深い絶望感を覚えて足元に真っ暗な穴が開いている気分だ。
「まてまて、そんなのうそだ。ゆめにちがいない」
自分を落ち着かせようと声に出すが、聞き慣れた自分の声とは全然違ってずっと高くて舌ったらずだった。ありとあらゆる絶望に打ちひしがれて頭を抱えている俺を他所にドアがノックされる。
程なくして入ってきたのはメイドのメアリーだ。記憶にある相貌より随分と憔悴している彼女は鏡の前でしゃがみ込む俺を見て緑色の瞳を潤ませた。
「ノア様! 良かった、本当に良かった……!!」
駆け寄ってきたメアリーに強く抱き締められて安堵を覚える。これはきっとノアの記憶と感覚だ。優しい花のような香りのする彼女はいつもこうして抱き締めてくれたから。
自分の意思とは無関係にじわりと視界が滲む。精神がノアの方に引き摺られているのかもしれない。声を挙げてなるものかと唇を噛み締めながら嗚咽していれば、メアリーにそっと頭を撫でられた。
「もう大丈夫ですよ、ノア様。お怪我も問題ないとお医者様も仰ってましたから」
メアリーはそう言うが、俺にとっちゃ人生を懸けた大問題だ。
何故なら、ノア・リフキンドは17歳でこの国を壊し尽くして死ぬ運命なのだから。
180
あなたにおすすめの小説
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
第2王子は断罪役を放棄します!
木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。
前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。
それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。
記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる!
ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる!
スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します!
この話は小説家になろうにも投稿しています。
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
【第二部開始】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる