悪役キャラに転生したので破滅ルートを死ぬ気で回避しようと思っていたのに、何故か勇者に攻略されそうです

菫城 珪

文字の大きさ
8 / 10

8 決意

しおりを挟む
8  決意

 治療を終えてから少しして、俺達は無事に父様達と合流出来た。
 喋る魔物の出現、それが発した不吉な予言は同行していた騎士達によって直ぐに父様とブラッドの父親に報告される。二人は一様に表情を硬くするが、不安そうにしている俺達に気がついて直ぐに表情を和らげた。
「よく頑張ったな、ノア。無事で良かった」
 そう言いながら優しく頭を撫でてくれる父様の手に、じわりと涙が浮かぶ。
 怖かったのだ。日本での生活も含めて、あんなに怖い思いをしたのは初めてだ。
 急に強敵に襲われた事も、それに名指しされた事も、シナリオ通りに進もうとする世界も。何もかもが恐ろしい。
 同時に小さな違和感を覚える。怖い。怖いのは確かだが、俺はこんなに臆病だっただろうか、と…。現代日本にいた時と状況が全く違うといえばそうなんだが、こんなに臆病ではなかった筈だ。これも何かの影響なのだろうか。
 小さく息を吐き、滲んだ涙を拭う。いつまでもメソメソしていられない。
「父様、あの魔物は私を名指ししました。一体何なのでしょう」
 俺の問いに、父様は少しばかり難しい顔をした。しかし、直ぐに小さく息を付いて口を開く。
「……お前には話しておいた方が良いだろう。ブラッドも、お前達も良く聞きなさい」
 真剣な表情で子供達に向けて父様が話し始めたのはこの大陸にずっと昔から伝わるお伽話だ。
 昔々から始まる物語は魔王によって魔物が発生して、人々が蹂躙されたところから始まる。追い詰められた人々が天に祈りを捧げると、厚い雲を切り裂いて、天から白銀の剣が現れた。
 白銀の剣の名は「レーヴァテイン」。
 天から贈られた聖剣は一人の少年の元へと降りてきた。そして、聖剣を手にした少年は仲間達と共に長い戦いの末に魔王を封じる事に成功する…。
 ここまでは巷で流布している聖剣レーヴァテインと勇者の伝説だ。しかし、実は話には続きがあった。
 勇者と仲間達によって大怪我を負って弱った魔王は、魔の山に封印される間際に予言を残していたのだ。
『いずれ余はこの地に帰る。その時はリフキンドの血を贄として、聖剣をも屠ってみせよう』
 そう言って高い哄笑と共に魔の山に封じられたのだという。
 父様の話を聞いて愕然とする。どこからどう聞いたってフラグじゃん!!
 ゲーム内ではこういった事は語られていなかったように思うが、どうやらしっかりばっちりフラグが立っていたらしい。同時に、魔王に付け狙われるのはどう頑張っても回避不可能という事が判明してしまった。
 思わず頭を抱える俺の姿に、父様は優しく俺を抱き締めてくれる。怯えたと思われたのだろう。しきりに大丈夫だと繰り返す父様の声を聞きながら、俺はこの先の事を考える。
 どんな形で魔王が手を出してくるのかはわからない。しかし、こうして名指しで狙われている以上、何かしらの仕掛けてくるのは確定だろう。
 対する俺はあまりにも貧相。魔法は扱えても父様や先生にはまだ遠く及ばない。剣も扱えず、体力すらあまりついていない。自衛出来る手段がないのだ。
 どうしたもんかと悩む俺の肩を掴みながら父様は俺をまっすぐに見つめる。
「ノア、今からお前に告げる事はとても残酷な話かもしれない。だが、こうなった以上、お前は知っておかねばならない話だ」
 これまでになく真剣な面持ちをした父様に、俺は頷く事しか出来ない。なんとなく予想は出来ているが、突きつけられるのはまた話が違ってくる。
「今現在この地に存在しているリフキンド一族の中でお前が最も幼く、また最も高い魔力を持っている。魔王は必ずお前を狙うだろう」
 容赦無く話す父の表情と言葉に否応にも現実を突き付けられる。不安が押し寄せる中、知らず強く握り締めていた俺の手を取って、父様は優しく微笑んだ。
「だから、強くなりなさい。魔王なぞに屈せぬよう強く在りなさい」
 優しい眼差しに、真っ直ぐな言葉に、自然と頷いていた。そうか、強くなれば良いのか。
 不安を全て吹っ飛ばして、生贄に出来るもんならやってみろって笑って言えるくらいに強く。
 少しだけ肩の力が抜けたような気がする。やる事はとてもシンプルだとわかったから。
 魔王の手先になって故郷を滅ぼすのも、俺自身が乗っ取られるのも死んでもごめんだ。ならば、魔王を倒すまでいかなくとも撃退、或いは身を守る術を身につけないといけない。
 魔王の復活までまだ時間がある。その間、俺は出来る限り強くならなければならない。
 幸い、ここは最前線だ。手本になる人も教えてくれる人も自分を鍛える手段もいくらでもある。
 決意も新たに、俺はぎゅっと拳を握り締めた。
 これまでの俺は、まだどこかに油断があったと思う。この世界は俺の知るゲームに似てはいるが、魔王の復活なんて眉唾物だと思っていた。
 しかし、現状は無慈悲にも俺に現実を突き付けてきた。魔王復活もノアが狙われる事も全て確定して、否応にも焦燥感と不安を煽る。
 まだ時間はある。どうするか考えて、自分を鍛えるだけの時間はまだあるのだ。
「父様、私に魔法を教えて下さい」
 強くなりたい。もっともっと強くなって、どんな魔物にも魔王にだって負けないくらい強く。俺は勇者になる事は出来ないが、それでも出来る事はある筈だ。
 頭を撫でてくれる大きな父様の手に誓う。
 俺は絶対に屈しない、と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!

雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。 共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。 《キャラ紹介》 メウィル・ディアス ・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き リィル・ディアス ・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも レイエル・ネジクト ・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き アルト・ネジクト ・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。 ーーーーー 閲覧ありがとうございます! この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください! 是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...