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最終話 煮え切らなかった人食い鬼と美味そうだった妻
2 化かし合っていた
「雪音!」
日当たりがよく暖かな部屋の中央で、雪音が寝具の上で上体を起こし薬湯を飲んでいる。
傍らで湯呑みを手にしていた侍医は、血相を変えて現れた城主を目にすると軽く目礼して、剛厚の脇を低頭しながらすり抜けて部屋を出た。
「まあ、殿。そのように慌てられて」
まるで憑き物が落ちたかのように健康的な顔色をした雪音は何度か瞬きを繰り返し、寝具から滑り出て畳に三つ指を突いた。
「此度は、ご心配をおかけしてしまい申し訳ございませんでした」
「な、何を申すか」
突然の改まった態度に、剛厚は半ば狼狽えながら雪音の正面に片膝を突き、顔を上げさせた。
「いいからまだ横になり休んでいるのだ。それに、今回のことはむしろ、某の方が謝らねばならぬ」
「殿が?」
「うむ。狭瀬のお家騒動に巻き込んでしまった結果、そなたの命を危険にさらした」
「命だなんて大袈裟な。それに源三郎様は身を呈して私を救ってくださいました。真冬の川に飛び込み、それに……ここに口付けを」
「く、くくちっ! そなた、目覚めておったのか?」
「目覚めるも何も、気を失う前でしたから」
「あ、そうだった。そうだったな」
雪音が言っているのは、川岸での接吻のことだろう。昨晩の話ではない。
顔を赤くしたり青くしたりする夫に、雪音は不思議そうな目を向ける。やがて、ふい、と視線が逸らされた。言葉なく、もじもじと手を揉みながら畳に目を固定する雪音。二人の間に、生ぬるい空気が漂った。
しばらくの後、どこか心地よさを感じるほどの熱の帯を破ったのは、雪音の言葉であった。
「何も仰らないのですね」
「うん?」
「私たちの間の隠しごとについて」
雪音が顔を上げる。どんぐりのような大きな目が真っ直ぐに剛厚を見つめた。黒く透き通る瞳が不安げに揺れている。剛厚は尻を下ろし居住まいを正すと、膝の上で拳を握り雪音に向き合った。
「雪音、黙っていてすまぬ。某は鬼だ。人間は鬼を恐れるだろう。それが辛くて、正体をずっと隠していた」
なぜか虚を衝かれたかのように眉を上げ、雪音は口を半分開けて閉じ、それからまた開いた。
「まあ。知っていましたわ」
「へ?」
「祝言の日、初めてあなた様のお姿を目にした瞬間から、ああ、鬼ねと思ったものです」
「な、なぜわかった」
「化けることに関しては、精通しているものですから」
「化け……」
「源三郎様」
雪音は柔らかく微笑んで少し肩をすくめた。気丈を装ってはいるが、ほんの少し緩めば、今にも泣き出しそうな笑みだった。
「私が話題にしようとしたのは、あなた様の正体のことではありません。私が、正真正銘の妖狐であるというお話ですわ。人間のふりをしていたというのは私も同じ。私たちは互いに化かし合っていたのです」
「う、うむ。妖狐、なのだな。先日大兄者に飛びかかったのはやはり、その、生気を」
雪音はゆったりと首肯した。
「義兄上様もご家臣の方々も、ほんの少し生気を吸っただけであの様子。たいそう情けないお姿でしたわね。やっぱり私、強い殿方が好きなのです。あなた様のような」
「それは何というか」
「私はこれまで、多くの殿方と親密に触れ合ってきましたの。幻滅なさいました?」
「い、いいや」
何でもないことのようにあっけらかんと言う雪音。けれどもその瞳には、何かを恐れるような微かな影がある。
いじらしくて愛おしい。そう感じてしまうのは、妖狐に誑かされているからなのだろうか。……いいや、違う。この半年以上、あやかしの本能とはそぐわない、雪音の真心を感じてきたではないか。剛厚は上体を乗り出した。
「幻滅されるべきは某の方だろう。それこそ初対面の日から、最悪な夫であった。その、実のところ祝言の晩から今日までずっと、隙あらばそなたを食いたい食いたいと卑劣な欲に襲われ続けきたのだ。聡明なそなたのこと。某がいつも腹を鳴らしていたことに気づいていたのだろう?」
雪音は曖昧な笑みを浮かべた。
「美味そうな匂いがするのでしょう? 私は人間の娘に化けた妖狐ですから」
「その通りだ。しかし雪音は某を恐れることも不快な顔をすることもなく、ただ優しく受け止めて、腹の足しにしろと、きゅうりをくれた」
雪音が長い睫毛を瞬かせた。
「きゅうり」
「我らは共にあやかしゆえ、本能には逆らえぬ。しかし思い合う心があれば、乗り越えられる。間違いないぞ」
「源三郎様」
いよいよ雪音の瞳が潤む。湿っぽい空気に腰が落ち着かず、剛厚はわざとおどけて言った。
「だが某は、いつかそなたを食ってしまわぬかと思い、気が気でないのだ。いっそのこと城主などやめて、仏門に入り、殺生を禁忌として修業に励み」
「まあ。それはご心配に及びませんわ」
言うや否や、雪音の頭部の黒髪が何かに押し上げられて、二つの塊に膨らんだ。やがて、絹糸のような髪を割り、白く尖った大きな三角が現れる。狐の耳だと理解したと同時、剛厚の胃を熱くし続けていた濃厚な血肉の香りが薄れ、代わりに麝香のような甘酸っぱい匂いが微かに漂った。
「半分狐の姿をしてみましたが、いかがです。今でも人間の肉の美味い香りがしますか? 鬼はあやかしのことは食べませんわよね」
「いいや、腹を刺激する匂いは消えた。むしろ何だか甘くて、こう、身体の奥底がぞわぞわとだな……」
おそらく妖狐の身体が発する誘惑の香りなのだろう。剛厚はいっそう落ち着かない気分になる。
「その姿ならば肉を食いたいなどとは思わぬぞ。むしろ別の意味で……ではなくて!」
「まあ」
いつも通りしどろもどろになる剛厚に、雪音は袖で口元を覆い、くす、と笑った。彼女の呼吸に合わせ、白くて柔らかそうな三角耳が、ひくひくと揺れている。
「それでは、お腹が空いたら私ではなくて、またきゅうりをお召し上がりくださいね」
言いしれぬ愛おしさに包まれた。このまま雪音を抱き締めて、二度と離したくないほどだが、あいにく広間では異母兄や家臣が待っている。剛厚は後ろ髪を引かれる気分で、頭を掻いた。
「いやはや、何というか、そういうことだから、これからも変わらず頼むぞ、雪音」
視線を合わせるのが気まずく、宙に視線を彷徨わせて一方的に告げる。
「某は合議に戻るゆえ、しばしゆっくり休まれよ」
ぶっきらぼうな言葉とは対照的に、ごつごつとした強面に不釣り合いな優しさを浮かべる剛厚に、雪音は微笑みを返してくれた。その瞳に浮かんだ一片の憂いが気にかかったが、弱々しい色はすぐにかき消えた。
「行ってらっしゃいませ」
「うむ」
極上の笑みに見送られ、かろうじて威厳の欠片を保ったまま病間を出る。
晴れの日中、雨戸は全て開け放たれている。底冷えする廊下から、剛厚は庭の積雪を眺めた。
冬は深まっている。けれどもあやかしの身体にはさほど堪えるものではなく、日差しが降り注ぐ日には清々しい気分になる。陽光を弾く白雪が、目に染みるほど輝いて見えた。
けれどもその晩、雪音は再度発熱をした。
そうして別室で過ごした夜が明けると、朝日に照らされた病間はもぬけの殻となっていた。雪音がそこにいた証といえば、寝具の上に文がぽつりと残されているだけである。
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傍らで湯呑みを手にしていた侍医は、血相を変えて現れた城主を目にすると軽く目礼して、剛厚の脇を低頭しながらすり抜けて部屋を出た。
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「いいからまだ横になり休んでいるのだ。それに、今回のことはむしろ、某の方が謝らねばならぬ」
「殿が?」
「うむ。狭瀬のお家騒動に巻き込んでしまった結果、そなたの命を危険にさらした」
「命だなんて大袈裟な。それに源三郎様は身を呈して私を救ってくださいました。真冬の川に飛び込み、それに……ここに口付けを」
「く、くくちっ! そなた、目覚めておったのか?」
「目覚めるも何も、気を失う前でしたから」
「あ、そうだった。そうだったな」
雪音が言っているのは、川岸での接吻のことだろう。昨晩の話ではない。
顔を赤くしたり青くしたりする夫に、雪音は不思議そうな目を向ける。やがて、ふい、と視線が逸らされた。言葉なく、もじもじと手を揉みながら畳に目を固定する雪音。二人の間に、生ぬるい空気が漂った。
しばらくの後、どこか心地よさを感じるほどの熱の帯を破ったのは、雪音の言葉であった。
「何も仰らないのですね」
「うん?」
「私たちの間の隠しごとについて」
雪音が顔を上げる。どんぐりのような大きな目が真っ直ぐに剛厚を見つめた。黒く透き通る瞳が不安げに揺れている。剛厚は尻を下ろし居住まいを正すと、膝の上で拳を握り雪音に向き合った。
「雪音、黙っていてすまぬ。某は鬼だ。人間は鬼を恐れるだろう。それが辛くて、正体をずっと隠していた」
なぜか虚を衝かれたかのように眉を上げ、雪音は口を半分開けて閉じ、それからまた開いた。
「まあ。知っていましたわ」
「へ?」
「祝言の日、初めてあなた様のお姿を目にした瞬間から、ああ、鬼ねと思ったものです」
「な、なぜわかった」
「化けることに関しては、精通しているものですから」
「化け……」
「源三郎様」
雪音は柔らかく微笑んで少し肩をすくめた。気丈を装ってはいるが、ほんの少し緩めば、今にも泣き出しそうな笑みだった。
「私が話題にしようとしたのは、あなた様の正体のことではありません。私が、正真正銘の妖狐であるというお話ですわ。人間のふりをしていたというのは私も同じ。私たちは互いに化かし合っていたのです」
「う、うむ。妖狐、なのだな。先日大兄者に飛びかかったのはやはり、その、生気を」
雪音はゆったりと首肯した。
「義兄上様もご家臣の方々も、ほんの少し生気を吸っただけであの様子。たいそう情けないお姿でしたわね。やっぱり私、強い殿方が好きなのです。あなた様のような」
「それは何というか」
「私はこれまで、多くの殿方と親密に触れ合ってきましたの。幻滅なさいました?」
「い、いいや」
何でもないことのようにあっけらかんと言う雪音。けれどもその瞳には、何かを恐れるような微かな影がある。
いじらしくて愛おしい。そう感じてしまうのは、妖狐に誑かされているからなのだろうか。……いいや、違う。この半年以上、あやかしの本能とはそぐわない、雪音の真心を感じてきたではないか。剛厚は上体を乗り出した。
「幻滅されるべきは某の方だろう。それこそ初対面の日から、最悪な夫であった。その、実のところ祝言の晩から今日までずっと、隙あらばそなたを食いたい食いたいと卑劣な欲に襲われ続けきたのだ。聡明なそなたのこと。某がいつも腹を鳴らしていたことに気づいていたのだろう?」
雪音は曖昧な笑みを浮かべた。
「美味そうな匂いがするのでしょう? 私は人間の娘に化けた妖狐ですから」
「その通りだ。しかし雪音は某を恐れることも不快な顔をすることもなく、ただ優しく受け止めて、腹の足しにしろと、きゅうりをくれた」
雪音が長い睫毛を瞬かせた。
「きゅうり」
「我らは共にあやかしゆえ、本能には逆らえぬ。しかし思い合う心があれば、乗り越えられる。間違いないぞ」
「源三郎様」
いよいよ雪音の瞳が潤む。湿っぽい空気に腰が落ち着かず、剛厚はわざとおどけて言った。
「だが某は、いつかそなたを食ってしまわぬかと思い、気が気でないのだ。いっそのこと城主などやめて、仏門に入り、殺生を禁忌として修業に励み」
「まあ。それはご心配に及びませんわ」
言うや否や、雪音の頭部の黒髪が何かに押し上げられて、二つの塊に膨らんだ。やがて、絹糸のような髪を割り、白く尖った大きな三角が現れる。狐の耳だと理解したと同時、剛厚の胃を熱くし続けていた濃厚な血肉の香りが薄れ、代わりに麝香のような甘酸っぱい匂いが微かに漂った。
「半分狐の姿をしてみましたが、いかがです。今でも人間の肉の美味い香りがしますか? 鬼はあやかしのことは食べませんわよね」
「いいや、腹を刺激する匂いは消えた。むしろ何だか甘くて、こう、身体の奥底がぞわぞわとだな……」
おそらく妖狐の身体が発する誘惑の香りなのだろう。剛厚はいっそう落ち着かない気分になる。
「その姿ならば肉を食いたいなどとは思わぬぞ。むしろ別の意味で……ではなくて!」
「まあ」
いつも通りしどろもどろになる剛厚に、雪音は袖で口元を覆い、くす、と笑った。彼女の呼吸に合わせ、白くて柔らかそうな三角耳が、ひくひくと揺れている。
「それでは、お腹が空いたら私ではなくて、またきゅうりをお召し上がりくださいね」
言いしれぬ愛おしさに包まれた。このまま雪音を抱き締めて、二度と離したくないほどだが、あいにく広間では異母兄や家臣が待っている。剛厚は後ろ髪を引かれる気分で、頭を掻いた。
「いやはや、何というか、そういうことだから、これからも変わらず頼むぞ、雪音」
視線を合わせるのが気まずく、宙に視線を彷徨わせて一方的に告げる。
「某は合議に戻るゆえ、しばしゆっくり休まれよ」
ぶっきらぼうな言葉とは対照的に、ごつごつとした強面に不釣り合いな優しさを浮かべる剛厚に、雪音は微笑みを返してくれた。その瞳に浮かんだ一片の憂いが気にかかったが、弱々しい色はすぐにかき消えた。
「行ってらっしゃいませ」
「うむ」
極上の笑みに見送られ、かろうじて威厳の欠片を保ったまま病間を出る。
晴れの日中、雨戸は全て開け放たれている。底冷えする廊下から、剛厚は庭の積雪を眺めた。
冬は深まっている。けれどもあやかしの身体にはさほど堪えるものではなく、日差しが降り注ぐ日には清々しい気分になる。陽光を弾く白雪が、目に染みるほど輝いて見えた。
けれどもその晩、雪音は再度発熱をした。
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