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第八章 世界大戦
115.空に咲くのは
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「敵襲!! 敵襲だ!! 急げ!! 急いで武器の保管庫へ迎え!!」
わあわあぎゃあぎゃあ
騒ぎながら駆けて行く敵陣営。流石に武器庫を破壊されれば焦りも出るようで、慌てながら走り行く者らの顔は血の気が引き青ざめてしまっていた。
そんな者らを建物の陰から眺めつつ、リンは「いやぁ、あっぱれだね」とニコニコ笑った。そんなリンに、ついて行っている味方の兵が「リオル様が頼るだけあり、すごいっすね」と呟いた。リンは「そうだね」と笑みを深める。
「すごいけど、多分、それだけじゃないんだろうね」
「? と言いますと?」
「んやぁ? こっちの話。とりあえず、俺らは俺らの仕事やりましょか。リレイヌちゃんたちが陽動してる今がチャンスだしね。──敵陣営の配置は大体分かってるね?」
「はい。ここから南東、三キロ先に人質たちが捕らえられた建物があるはずです」
「おっけー、行くよ」
笑みを消し、駆け出したリン。そんなリンを追う者らは、その顔に不安の色を浮かべている。
いくら実力があるからといえ、陽動しているのは自分たちよりも遥かに年下な若いふたり。心配がないと言えば嘘になる。
「……隊長。やっぱり、少しだけ向こうに人員割いた方がいいんじゃないですか?」
駆けるリンの後を追いかけながら、軍の中でもわりかし若めな顔立ちの青年が言った。癖のある、薄い茶の髪を揺らす青年だ。そばかすの目立つその青年は、翡翠の瞳を不安そうに揺らしている。
リンはそんな青年に、「それはやめときな」と一言。ぽつりと返した。青年はそれに、抗議するように口を開く。
「でも、さすがにアイツらだけじゃあの数……!」
「もう一度言う。やめとけ。俺らが居たら、かえってあの子たちは戦い辛い。さっきの見てわかるだろ? 単純に、実力差がありすぎる。俺らはあの子たちの足元にも及ばない。お荷物でしかないわけ。わかる?」
「……」
キュッと口を噤む青年。どこか悔しげな彼の様子に、「俺らは俺らの出来ることをやるんだ」とリンは告げた。青年は頷き、キッと顔を上げて前を向く。
「──隊長。間もなく人質がいるエリアです」
副隊長らしき、顔に傷のある男が言った。オールバックにした黒髪をそのままに、髪と同じ黒い瞳でまっすぐ敵陣営を見据える彼は、片手に剣を携えたまま前を走るリンの背中を視界に写す。
リンはそんな彼に「了解」と一言。銃を手に取り、見えた建物内に突撃する。
建物内には、たくさんの老若男女が揃っていた。もちろん、子供の姿もある。
彼・彼女らは突然の味方軍の登場に大きく驚き、やがてそっと、震えながら涙を流した。リンはそれを視界、「無事っぽいね」と一言。安堵するように肩を撫で下ろす。
「人質の皆さん。今からあなた方を魔法道具を用いて国に返します。なので、出来るだけ速やかに我々の指示に従ってください」
「……」
返事はない。
それに違和感を覚えたリンをよそ、「魔法道具の準備を急げ」と指示する副隊長。冷静なそれを「待って」の一言で止めさせ、リンは近くにいた女性の前へ。青ざめ震える彼女の目の前で膝を折り、「何があった?」と問いかけた。女性はハラハラと涙を流しながら、ゆっくりと顔を上げ、言う。
「……殺してください」
「えっ」
茶髪の青年が驚いたように声を上げた。どうしてと、そう言いたげな彼の疑問を代弁するように、黒髪の男が前へ。「何かされたのか?」と問いかける。
「……私たちは国へは帰れない」
「ど、どうして!」
「……」
女性は己の顔を両手で覆った。そうして泣きじゃくり出す彼女を助けるように、近場にいた男が口を開く。
「俺らは奴らの武器に成り果てた。だから、祖国へ帰れば、国を滅ぼしかねない」
「どういうことだ?」
「分からないか? 爆弾だ。奴ら、魔導具で俺らに爆弾を植え付けやがった……俺らは奴らの爆薬として生かされている。祖国へ帰ったら爆発するよう設定されてるんだ」
「……本当に?」
「こんな嘘、誰がつくかよ……」
悔しそうに拳を握る男。震えながら泣きじゃくる女。
そして、周りの人質たちも、嘆くように下を向き、明日への期待は出来ていないようだった。
リンはそっと膝を伸ばして立ち上がると、そのまま踵を返して建物の外へ。懐から合図用の銃を取り出すと、それを空に向かい打ち上げる。
バンッ!!
広がる発砲音。
作戦の失敗を意味する赤色の光を大きく花咲かせたソレに、敵を薙ぎ払っていたアジェラが「嘘でしょ」とぽつり。最後の敵を倒したリレイヌが、眉を寄せてその赤色を見つめていた。
わあわあぎゃあぎゃあ
騒ぎながら駆けて行く敵陣営。流石に武器庫を破壊されれば焦りも出るようで、慌てながら走り行く者らの顔は血の気が引き青ざめてしまっていた。
そんな者らを建物の陰から眺めつつ、リンは「いやぁ、あっぱれだね」とニコニコ笑った。そんなリンに、ついて行っている味方の兵が「リオル様が頼るだけあり、すごいっすね」と呟いた。リンは「そうだね」と笑みを深める。
「すごいけど、多分、それだけじゃないんだろうね」
「? と言いますと?」
「んやぁ? こっちの話。とりあえず、俺らは俺らの仕事やりましょか。リレイヌちゃんたちが陽動してる今がチャンスだしね。──敵陣営の配置は大体分かってるね?」
「はい。ここから南東、三キロ先に人質たちが捕らえられた建物があるはずです」
「おっけー、行くよ」
笑みを消し、駆け出したリン。そんなリンを追う者らは、その顔に不安の色を浮かべている。
いくら実力があるからといえ、陽動しているのは自分たちよりも遥かに年下な若いふたり。心配がないと言えば嘘になる。
「……隊長。やっぱり、少しだけ向こうに人員割いた方がいいんじゃないですか?」
駆けるリンの後を追いかけながら、軍の中でもわりかし若めな顔立ちの青年が言った。癖のある、薄い茶の髪を揺らす青年だ。そばかすの目立つその青年は、翡翠の瞳を不安そうに揺らしている。
リンはそんな青年に、「それはやめときな」と一言。ぽつりと返した。青年はそれに、抗議するように口を開く。
「でも、さすがにアイツらだけじゃあの数……!」
「もう一度言う。やめとけ。俺らが居たら、かえってあの子たちは戦い辛い。さっきの見てわかるだろ? 単純に、実力差がありすぎる。俺らはあの子たちの足元にも及ばない。お荷物でしかないわけ。わかる?」
「……」
キュッと口を噤む青年。どこか悔しげな彼の様子に、「俺らは俺らの出来ることをやるんだ」とリンは告げた。青年は頷き、キッと顔を上げて前を向く。
「──隊長。間もなく人質がいるエリアです」
副隊長らしき、顔に傷のある男が言った。オールバックにした黒髪をそのままに、髪と同じ黒い瞳でまっすぐ敵陣営を見据える彼は、片手に剣を携えたまま前を走るリンの背中を視界に写す。
リンはそんな彼に「了解」と一言。銃を手に取り、見えた建物内に突撃する。
建物内には、たくさんの老若男女が揃っていた。もちろん、子供の姿もある。
彼・彼女らは突然の味方軍の登場に大きく驚き、やがてそっと、震えながら涙を流した。リンはそれを視界、「無事っぽいね」と一言。安堵するように肩を撫で下ろす。
「人質の皆さん。今からあなた方を魔法道具を用いて国に返します。なので、出来るだけ速やかに我々の指示に従ってください」
「……」
返事はない。
それに違和感を覚えたリンをよそ、「魔法道具の準備を急げ」と指示する副隊長。冷静なそれを「待って」の一言で止めさせ、リンは近くにいた女性の前へ。青ざめ震える彼女の目の前で膝を折り、「何があった?」と問いかけた。女性はハラハラと涙を流しながら、ゆっくりと顔を上げ、言う。
「……殺してください」
「えっ」
茶髪の青年が驚いたように声を上げた。どうしてと、そう言いたげな彼の疑問を代弁するように、黒髪の男が前へ。「何かされたのか?」と問いかける。
「……私たちは国へは帰れない」
「ど、どうして!」
「……」
女性は己の顔を両手で覆った。そうして泣きじゃくり出す彼女を助けるように、近場にいた男が口を開く。
「俺らは奴らの武器に成り果てた。だから、祖国へ帰れば、国を滅ぼしかねない」
「どういうことだ?」
「分からないか? 爆弾だ。奴ら、魔導具で俺らに爆弾を植え付けやがった……俺らは奴らの爆薬として生かされている。祖国へ帰ったら爆発するよう設定されてるんだ」
「……本当に?」
「こんな嘘、誰がつくかよ……」
悔しそうに拳を握る男。震えながら泣きじゃくる女。
そして、周りの人質たちも、嘆くように下を向き、明日への期待は出来ていないようだった。
リンはそっと膝を伸ばして立ち上がると、そのまま踵を返して建物の外へ。懐から合図用の銃を取り出すと、それを空に向かい打ち上げる。
バンッ!!
広がる発砲音。
作戦の失敗を意味する赤色の光を大きく花咲かせたソレに、敵を薙ぎ払っていたアジェラが「嘘でしょ」とぽつり。最後の敵を倒したリレイヌが、眉を寄せてその赤色を見つめていた。
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