1 / 17
プロローグ 夢屋の噂
しおりを挟む『夢屋』というものを知っているか?
今はもう衰退し、崩れ果てた世界にその夢屋はあるんだ。
毒ガスで満ちた通りを抜け、荒廃した都市を横切り、赤い空の下を進む。そうするとほら、見えてくるだろう?
ポツンと灯る、淡いエメラルドグリーンの光が……。
光は一つの小さな扉の隙間から漏れている。淡く、儚く、それでいて幻想的な輝きだ。
綺麗だろう?まさに夢のような輝きだ。
お前も、不思議と気持ちが高ぶってるんじゃないか?胸が高揚して、なぜだか吸い込まれるような感覚がしてるんじゃないか?
それでいい。それが正常だ。
あの光が漏れる場所こそ『夢屋』なのだから。気持ちが高まるのも仕方がない。
だって、あそこには夢がある。
夢。そう夢だ。甘い蜜のような、希望の塊。
え?そんなものがあるわけないだろう、だって?
なら見てみるといい。自分のその目で確かめるといい。
扉に手をかけ開いてみれば、淡い光がふわりと漏れ出す。同時に吹く優しい風は、どこか優しく懐かしい。
店の中をぐるりと見回せば、一番に視界に写るのは大、中、小、様々なガラス瓶。キッチリとコルクのされたその瓶たちには、値札のプレートらしきものが付けられている。
しかし、肝心の値札には何も書かれていない。稀に何か書かれていることがあっても全てミミズが這ったような字なので読むことは不可能。そしてその稀な瓶は全てショーケースや木製の棚の中に閉じ込められている。
一般客が容易に触れることができないわけだ。
おっと、ようやく興味を持ってきたな。まあこんな光景を見たんじゃ仕方ないか……。
え?違う?怪しいと思ってるだけ?
なんだ、まだ疑ってたのか。疑り深い奴だな。まあいい。
そう言うのなら、ここの店主と一度話してみるといいさ。そうすればお前もきっと、気づくだろう。
この『夢屋』が本物だと──……。
0
あなたにおすすめの小説
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる