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ep.13 伊吹くんと温泉付きホテルに宿泊します
2.
「はるちゃんはこんなにも可愛いんだ! スタイルも抜群だし、色気のある風呂上がりの浴衣姿をジロジロ見てくる輩は絶対にいる。それに本当は女性同士でも君の一糸まとわぬ姿を誰にも見せたくないんだ」
あまりにも真剣に言ってくる伊吹の姿があった。
(えーーっ…………)
まさか、そこまで心配されるとは思ってもみなかった。その上、完全に伊吹から見た贔屓目である。
(……仕方ない。大浴場は諦めるか……)
そう思っていた矢先だった。
「……だが、本当に本意じゃない、かなり妥協した結果ではあるが……、せっかくの広い温泉を楽しみにしていた君の思いを無下にするわけにもいかない。だから……仕方ない、俺も大浴場に行く。男湯に入った後、ロビーで待っているから」
まるで涙を飲んで苦渋の決断でもしたかのような伊吹の様子に、榛名はポカンとしていた。だけど、そこまで執着されるのは悪い気がしなかった。
「それじゃあ、はるちゃん。気をつけて行ってくるんだよ」
大浴場が男湯と女湯の暖簾で分かれているところで、伊吹から送り出された。
広い大浴場はそれなりに人がいたけれど、まだ混雑する前といったところだろう。
(良いタイミングで入浴できたな)
と、榛名はご機嫌だった。
榛名にはあまり長風呂の習慣はなかったので、露天風呂を堪能し、比較的早く風呂から上がったと思う。
伊吹のことをそんなには待たせていないはずだ。
浴衣に着替え、髪は部屋に戻ってからドライヤーをかければいいやと、タオルドライした後はブラシで梳かして軽く結わいた。
ロビーに行くと、伊吹がソファで新聞を読んでいた。その姿は絵画のように様になっている。
伊吹の方こそ女性陣の注目の的である。
皆、あからさまに取り囲んだりはしないけれど、遠巻きにしながらも視線は伊吹に釘付けである。
そんな熱視線に彼は気づいているのか、いないのか……
(そっちの方がよっぽど心配よ)
榛名の思いもなんのその、伊吹はすぐに榛名に気づくと、まるで尻尾を振ったワンちゃんのように駆け寄ってきたのだった。
(ふふっ、可愛い)
などと、その姿を見てのんきに微笑んでいると、
「はるちゃん、肩からこれを羽織って」
榛名が持っていたバスタオルを手に取ると、伊吹はファサッと肩掛けのようにして榛名に巻き付けて、きっちり襟元で結んだ。
――つまり、首や胸元が見えないように完全に隠したのである。
「よし、これでOK。さあ、部屋に帰ろう」
満足げに言うと、伊吹は榛名の肩を抱き、顔を見せないようにしてロビーの廊下を移動し、エレベーターの中でも同様にしていた。
(け……警戒心が強すぎる……)
果たして、伊吹のこの警戒心の強さは生来の気質なのだろうか――?
(きっと、生まれ持った性質にプラスして、離れていた間に拍車がかかったのね……)
厳しいビジネスの世界に身を置いて、油断できない日々を送っていたのだろう。
(それだったら、せめてもの私は伊吹くんを安心させる行動を取ろう)
これまでも思っていたことだけど、より強く意識するのだった。
あまりにも真剣に言ってくる伊吹の姿があった。
(えーーっ…………)
まさか、そこまで心配されるとは思ってもみなかった。その上、完全に伊吹から見た贔屓目である。
(……仕方ない。大浴場は諦めるか……)
そう思っていた矢先だった。
「……だが、本当に本意じゃない、かなり妥協した結果ではあるが……、せっかくの広い温泉を楽しみにしていた君の思いを無下にするわけにもいかない。だから……仕方ない、俺も大浴場に行く。男湯に入った後、ロビーで待っているから」
まるで涙を飲んで苦渋の決断でもしたかのような伊吹の様子に、榛名はポカンとしていた。だけど、そこまで執着されるのは悪い気がしなかった。
「それじゃあ、はるちゃん。気をつけて行ってくるんだよ」
大浴場が男湯と女湯の暖簾で分かれているところで、伊吹から送り出された。
広い大浴場はそれなりに人がいたけれど、まだ混雑する前といったところだろう。
(良いタイミングで入浴できたな)
と、榛名はご機嫌だった。
榛名にはあまり長風呂の習慣はなかったので、露天風呂を堪能し、比較的早く風呂から上がったと思う。
伊吹のことをそんなには待たせていないはずだ。
浴衣に着替え、髪は部屋に戻ってからドライヤーをかければいいやと、タオルドライした後はブラシで梳かして軽く結わいた。
ロビーに行くと、伊吹がソファで新聞を読んでいた。その姿は絵画のように様になっている。
伊吹の方こそ女性陣の注目の的である。
皆、あからさまに取り囲んだりはしないけれど、遠巻きにしながらも視線は伊吹に釘付けである。
そんな熱視線に彼は気づいているのか、いないのか……
(そっちの方がよっぽど心配よ)
榛名の思いもなんのその、伊吹はすぐに榛名に気づくと、まるで尻尾を振ったワンちゃんのように駆け寄ってきたのだった。
(ふふっ、可愛い)
などと、その姿を見てのんきに微笑んでいると、
「はるちゃん、肩からこれを羽織って」
榛名が持っていたバスタオルを手に取ると、伊吹はファサッと肩掛けのようにして榛名に巻き付けて、きっちり襟元で結んだ。
――つまり、首や胸元が見えないように完全に隠したのである。
「よし、これでOK。さあ、部屋に帰ろう」
満足げに言うと、伊吹は榛名の肩を抱き、顔を見せないようにしてロビーの廊下を移動し、エレベーターの中でも同様にしていた。
(け……警戒心が強すぎる……)
果たして、伊吹のこの警戒心の強さは生来の気質なのだろうか――?
(きっと、生まれ持った性質にプラスして、離れていた間に拍車がかかったのね……)
厳しいビジネスの世界に身を置いて、油断できない日々を送っていたのだろう。
(それだったら、せめてもの私は伊吹くんを安心させる行動を取ろう)
これまでも思っていたことだけど、より強く意識するのだった。
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