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無駄になる努力。そして、死?
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それから半年ほど経った。あれから私の人生は大きく進んだ。止まって動かなかった時計の針は、勢いよく前に走っていく。修行は一日も欠かさず、毎日続けた。続けることは慣れっこだった。
ホームレス時代では一日も欠かさず、生きる努力をしなければならかった。失敗したら当然死ぬ。同情も憐れみも何の役にも立たない。周囲の助けも運も一切あてにできない。自分の力でいつだって困難を乗り越えてきた。どんなことでも成功するまで続けた。そうすれば必ず成功する。金も家族もいない私には諦めるという選択肢など与えられてすらいなかった。
そんな私が全ての力を賭して、全身全霊をかけて電撃装備の訓練を続けた。そして、未だ私は電撃を装備できないでいた。いや、できる気配すら見えない。
「もうやめてもいいんだぞ? 電撃が装備できなくても十分戦力になる」
「いいえ。もう一度やる!」
私は目を閉じて、手を前に出す。力を抜いて可能な限りリラックスする。
「やって!」
先生は何も言わずに、装備した電撃を発動した。先生の大きな体の周りを青白い電撃の衣が覆い尽くす。最高密度の電気の流れは音を立てて、先生の体の周りを廻る。先生は電撃の密度をさらに高め、巨大な電気の手を体から生やした。左右の肩の辺りから一本ずつ計二本の電流が揺らめいている。
「いくぞ!」
そして、先生はその電気でできた手を私に思いっきり叩きつけた。その瞬間、落雷のような衝撃が私の躯体を吹き飛ばした。私の体は吹き飛ばされて弧を描く。体に擦りつけられた電気の粒が放電しながら私の体から飛び出ていく。青白い電気は夜空に向かって縦横無尽に駆け巡る。様々な形に枝分かれしながら、黒いキャンパスに複雑な絵を描いた。まるでそれは一つの芸術作品のようだった。
私はふらつく上体を何とか起こして先生の顔を見た。
「まだまだ大丈夫よ! もう一度!」
電撃を装備するのは困難を極めた。女神様の魔法により物理法則を無視して何らかの概念を装備する場合、被装備対象物から装備の同意を得なければならない。
例えば、先生が私を装備する場合、私から同意を得たのがそうだ。
電撃や火炎、重力や、空気など武器になりっこない実態のないものを装備しようとすればするほど難易度は上がる。意思のない自然現象から“同意を得なければならない”のだ。修行は雲を掴むようなものだ。だけど、成功した人は何人もいる。先生だって電撃を装備できている。
「言い出したのは俺だし、どうしてもやりたいなら協力するが、無理してやらなくてもいいんだぞ? 俺が電撃を装備できたのはたまたまだった。落雷に直撃した後、奇跡的に生きていて、気づいたら勝手に装備されていたんだ。確率は一パーセントすらない。落雷に当たろうと思って当たりに行くようなものだ。それにもうあれから半年も経つ」
「一パーセントすらないか。私がホームレス生活を抜け出せる確率は、もっと少なかったわ。それに半年一日も欠かさず続けた程度の努力で、何かが変わるなんて思っていないわ」
「頑固なやつだな」
先生は少しだけ呆れているみたいだ。だけど私はそんなの気にしなかった。ホームレスは他人にどう思われても、どうだっていい。他人からの視線なんて何よりもどうでもいいことだった。
「さあ! もう一度よ! 私は絶対に諦めない! 何があっても必ずやり遂げる! 諦めずに成功するまで続ければ、必ず成功する!」
そして、一年間諦めずに修行したが、何の成果も出なかった。
[一年後]
直剣が私の腸を舐める。体につき通された長い剣は、私の中のいくつかの臓器を容赦なく傷つけながら体の前面から外に飛び出た。鮮やかな宝石のように美しい鮮血が地面を美しく飾る。どくどく脈打つ心臓から、どくどく血液が全身に送られる。だけど、その血液はどくどくと床に流れ落ちる。私の傷口から流れる血の川は、せせらぎになり、滝になり、やがて荒れ狂う海のように激しく波を生み出す。
全身を痺れによく似た何かが這いずり回る。手足の梢までが何か黒いものに侵されていく。先ほどまで熱く熱を放っていたのに、次第に熱が空気中に溶けて消えていく。冷たく硬くなっていく体からは精気と魂がガスになって抜けていく。
私は震える体を必死で動かし、後ろを振り返る。
「裏切ったの?」
私の声は、小さくてか細くて、消え入りそうなほど弱々しかった。声にならない声が喉を震わせて飛び出たが、目の前の人物にしっかりと届いただろうか? 届いていないのなら声を出した意味がない。
「そうだ」
目の前の人物は冷静に言葉の刃を振り下ろす。よかった。しっかり彼に私の言葉は届いていた。安堵は私を少しだけ落ち着かせる。
「どうして? ジャック!」
私は最後に訳を訪ねるフリをした。戸惑いを顔に貼り付けてみた。
「お前らと一緒にいても勝つ算段はない。俺は強い方につく」
「今までの私たちの全ては嘘だったの? 何もかもまやかしだったの?」
私は精一杯苦しいフリをした。
「そうだ」
そういうと、ジャックは勢いよく剣を引き抜いた。
「驚いたな。お前本当に人間か?」
あいつの声がする。ホームレス狩りをしていたあいつ。私がホームレスとして先生に装備されるきっかけになったあいつ。黒髪の少年。今での彼の冷たい瞳が夢に出てくる。二度と忘れない。人生に絶望したような、まるで諦めたような、氷よりも冷たい瞳が。
「これくらいのことを平気でやってのけないと今の時代は生きていけないんだよ」
ジャックの声が響く。薄れいく意識の中で最後に見たのは、かつて修行をともにした人物が怒りに任せて私にとどめを刺す瞬間だった。私は、心の中で願った、この作戦がうまくいくことを。
ホームレス時代では一日も欠かさず、生きる努力をしなければならかった。失敗したら当然死ぬ。同情も憐れみも何の役にも立たない。周囲の助けも運も一切あてにできない。自分の力でいつだって困難を乗り越えてきた。どんなことでも成功するまで続けた。そうすれば必ず成功する。金も家族もいない私には諦めるという選択肢など与えられてすらいなかった。
そんな私が全ての力を賭して、全身全霊をかけて電撃装備の訓練を続けた。そして、未だ私は電撃を装備できないでいた。いや、できる気配すら見えない。
「もうやめてもいいんだぞ? 電撃が装備できなくても十分戦力になる」
「いいえ。もう一度やる!」
私は目を閉じて、手を前に出す。力を抜いて可能な限りリラックスする。
「やって!」
先生は何も言わずに、装備した電撃を発動した。先生の大きな体の周りを青白い電撃の衣が覆い尽くす。最高密度の電気の流れは音を立てて、先生の体の周りを廻る。先生は電撃の密度をさらに高め、巨大な電気の手を体から生やした。左右の肩の辺りから一本ずつ計二本の電流が揺らめいている。
「いくぞ!」
そして、先生はその電気でできた手を私に思いっきり叩きつけた。その瞬間、落雷のような衝撃が私の躯体を吹き飛ばした。私の体は吹き飛ばされて弧を描く。体に擦りつけられた電気の粒が放電しながら私の体から飛び出ていく。青白い電気は夜空に向かって縦横無尽に駆け巡る。様々な形に枝分かれしながら、黒いキャンパスに複雑な絵を描いた。まるでそれは一つの芸術作品のようだった。
私はふらつく上体を何とか起こして先生の顔を見た。
「まだまだ大丈夫よ! もう一度!」
電撃を装備するのは困難を極めた。女神様の魔法により物理法則を無視して何らかの概念を装備する場合、被装備対象物から装備の同意を得なければならない。
例えば、先生が私を装備する場合、私から同意を得たのがそうだ。
電撃や火炎、重力や、空気など武器になりっこない実態のないものを装備しようとすればするほど難易度は上がる。意思のない自然現象から“同意を得なければならない”のだ。修行は雲を掴むようなものだ。だけど、成功した人は何人もいる。先生だって電撃を装備できている。
「言い出したのは俺だし、どうしてもやりたいなら協力するが、無理してやらなくてもいいんだぞ? 俺が電撃を装備できたのはたまたまだった。落雷に直撃した後、奇跡的に生きていて、気づいたら勝手に装備されていたんだ。確率は一パーセントすらない。落雷に当たろうと思って当たりに行くようなものだ。それにもうあれから半年も経つ」
「一パーセントすらないか。私がホームレス生活を抜け出せる確率は、もっと少なかったわ。それに半年一日も欠かさず続けた程度の努力で、何かが変わるなんて思っていないわ」
「頑固なやつだな」
先生は少しだけ呆れているみたいだ。だけど私はそんなの気にしなかった。ホームレスは他人にどう思われても、どうだっていい。他人からの視線なんて何よりもどうでもいいことだった。
「さあ! もう一度よ! 私は絶対に諦めない! 何があっても必ずやり遂げる! 諦めずに成功するまで続ければ、必ず成功する!」
そして、一年間諦めずに修行したが、何の成果も出なかった。
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全身を痺れによく似た何かが這いずり回る。手足の梢までが何か黒いものに侵されていく。先ほどまで熱く熱を放っていたのに、次第に熱が空気中に溶けて消えていく。冷たく硬くなっていく体からは精気と魂がガスになって抜けていく。
私は震える体を必死で動かし、後ろを振り返る。
「裏切ったの?」
私の声は、小さくてか細くて、消え入りそうなほど弱々しかった。声にならない声が喉を震わせて飛び出たが、目の前の人物にしっかりと届いただろうか? 届いていないのなら声を出した意味がない。
「そうだ」
目の前の人物は冷静に言葉の刃を振り下ろす。よかった。しっかり彼に私の言葉は届いていた。安堵は私を少しだけ落ち着かせる。
「どうして? ジャック!」
私は最後に訳を訪ねるフリをした。戸惑いを顔に貼り付けてみた。
「お前らと一緒にいても勝つ算段はない。俺は強い方につく」
「今までの私たちの全ては嘘だったの? 何もかもまやかしだったの?」
私は精一杯苦しいフリをした。
「そうだ」
そういうと、ジャックは勢いよく剣を引き抜いた。
「驚いたな。お前本当に人間か?」
あいつの声がする。ホームレス狩りをしていたあいつ。私がホームレスとして先生に装備されるきっかけになったあいつ。黒髪の少年。今での彼の冷たい瞳が夢に出てくる。二度と忘れない。人生に絶望したような、まるで諦めたような、氷よりも冷たい瞳が。
「これくらいのことを平気でやってのけないと今の時代は生きていけないんだよ」
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