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着地

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「きゃあっほおおおおおおう!」
魔法少女が俺の背中で叫び声を上げる。まるでゴリラのビートボックスみたいだ。

「いやほおおおおおおおい!」
アリシアも俺の背中で叫び声を上げる。

「そろそろ着くぞ」
二人はドラゴンナイト状態の俺の背中に乗っている。
二人分の体重くらいドラゴンナイト状態なら余裕だ。

だって、ドラゴンナイト状態の俺は、あの先代竜王に勝ったんだぜ! って思っていたけど魔法少女が重い。

背中にのしかかる重力の束が俺を地表に叩きつけようとしてくる。
この体重が、“魔法少女ゴリアテのはちきれんばかりの筋肉量”を物語っている。

袋詰めにされた砂の大袋をいくつも背負っているかのようだ。
まじで何食ってんだこいつ? こいつ一人で二百キロくらいあるだろ。

そして、あっと言う間にエルジービーティーの国についた。俺はその国にカッコよく降り立った。
片膝をつくヒーロー着地だ。

そこに着くと、あっという間に筋肉の肉塊に包囲された。もう逃げ場などどこにもない。

「いやあああああん」「ドラゴンなんて初めて見たわあ!」「すっごおおおおい!」「おかまの風上にもおけないわねえん」「魔法少女ゴリアテもいるわよ!」「二人ともすごい筋肉ね!」「筋繊維がはちきれそう!」

と言いながら大量のエルジービーティーの方達が群がってきた。っていうかお前らの筋肉の方がやばくね?

おかまさんたちの筋肉は、太く分厚く濃厚だった。
肌はまるで地下のマグマを押し固める地殻のよう。
ゴツゴツした皮膚には当然ミミズが這いずっているような青筋がグラデーションを描いている。

触れずとも筋肉量がすごいのがわかる。おかまさんが「あはは」と笑うたびに、筋肉も「ピクク」と皮下で動く。
ぎちぎちのぎゅうぎゅうに詰まった筋肉は、ムチムチのパンパンに盛り上がっている。

巨大な宇宙戦艦と対峙しているかのような気分になる。

肉でできた海の荒波は俺に幾度もぶつかる。その度に俺の強靭な体がギシつき悲鳴を上げる。
「ちょ、ちょっと! やめ――」
俺の悲鳴は海面に溶けて消えた。筋肉にもみくちゃにされながら俺は必死でもがく。

「可愛いわね!」「剥製にしておうちに飾りましょう!」「やだ。この筋肉ピクピクしているわ!」

「誰か! 助け――」
肉の海面から俺は右手を出す。外から見れば、海で溺れかかっている人が右手を伸ばしているように見えるだろう。

「お兄ちゃん。とっても楽しそうでしゅね!」
と、魔法少女ゴリアテ。
「でしゅね!」
と、アリシア。何処かだよっ!
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