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5.父と娘
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「おかえりなさいませ。マチルダお嬢様」
アレックスの花束愛の告白を受け、またアレックスが接触してくるんじゃないかと心配して、私を守ろうとしてくれるルーカスをよそに、私は無事に授業を終え帰宅した。
「今日の報告をお願い」
「お嬢様に確認していただきたい書類はこちらになります。右側に重要なのをまとめています。そして、お嬢様のサインが欲しい書類はこちらにまとめていますが、なるべく早くとのことです」
出迎えの執事に服と荷物を預けると、執事は机の上に整理された書類の束の説明をはじめた。
今日も確認しなくてはいけない書類が沢山あるのね。
自分のためにも、しなくてはいけないことだと分かってはいるけれど、やってもやっても減らない書類の数に目が回りそうになる。
椅子に座り、書類の確認をしてサインをしようとすると執事は私に言われるでもなく、ペンを差し出す。
部屋の中に書類にペンを走らせる音だけが響く。
執事が差し出した書類を確認して、サインをする。そして、執事は私のサインを確認して書類をまとめる。
私の執事は優秀だ。
彼は屋敷に出入りする業者の少年だった。私が彼に屋敷の使用人に応募するように推薦すると、今や私の専属執事にまでなった。
「ありがとう。サインをした書類は送っておいて」
「かしこまりました」
伸びをしながら部屋の外を見ると、太陽は沈みかけ月が上がっている。
知らない間に随分と時間が経ったみたいね。
学園での授業に加え書類仕事。そして、アレックスの愛の告白事件で精神的にも疲れが溜まっている。
今日は早く寝るのも悪くないわね。
けれど、その前に……。
「アンナはどうしているの?」
「アンナお嬢様は部屋から出ることなく過ごされています」
「そう……。食事は取っているの?」
「問題なく取られています」
アンナは現在自室で謹慎中だ。
決定権があるお父様が不在のため、私が代理としてアンナに自室で謹慎するように言ったから。
淡々と書類を整理する執事に「あなたは――」と口を開くと。
コンコン
部屋をノックする音に、執事がメイドから要件を聞くとこちらを振り返って言った。
その表情は夕日のせいか少し強張って見えた。
「お嬢様。旦那様がおかえりです」
――――
私とお父様の関係は冷めきっている。
仲が悪いと言うには、そこまで感情が伴っていない関係。
私はお父様が怒ったり、悲しんだり、感情を露わにしているところを見たことがない。
お母様が生きていた時は、まだ親子らしい交流をした記憶があるが、それは昔の話だ。
「彼の何が気に食わないんだ。家柄も身分も申し分のないだろう」
「家柄も身分も、中身が伴っていなければ意味がないですから。私の義妹であるアンナとの浮気は私への裏切り行為であり、看過できません。そして、アレックスの度重なる問題行為は以前から報告していた通りです」
血の繋がった親子にも関わらず、事務的な会話。
感動の再会という訳もなく……。
領地に視察に行っていたお父様と会うのは何日ぶりだろうか。
「婚約破棄を許可する」
えっ?
婚約破棄の許可は嬉しいけれど、今まで何度も婚約破棄したいと言ってはダメだったのに。
婚約破棄を許してくれないことを考えて、お父様を説得するための言葉を考えていた。
あっさりとした婚約破棄の許可に驚いていると、次に続くお父様の言葉で、どうして許可をしたか理解する。
「その代わり、早急に新しい婚約者を見つけるように。ジョルジュ家に劣らない婚約者候補を探したから、この中から選びなさい」
そう言って、お父様は机の上に婚約破棄候補達の資料を置いた。
机の上に置かれた婚約者候補達の資料を見て、なぜか私は悲しい気持ちなった。
無意識のうちにドレスの裾を握る手は赤くなっている。
お父様は私の気持ちなんて知らないんだわ――。
アレックスの花束愛の告白を受け、またアレックスが接触してくるんじゃないかと心配して、私を守ろうとしてくれるルーカスをよそに、私は無事に授業を終え帰宅した。
「今日の報告をお願い」
「お嬢様に確認していただきたい書類はこちらになります。右側に重要なのをまとめています。そして、お嬢様のサインが欲しい書類はこちらにまとめていますが、なるべく早くとのことです」
出迎えの執事に服と荷物を預けると、執事は机の上に整理された書類の束の説明をはじめた。
今日も確認しなくてはいけない書類が沢山あるのね。
自分のためにも、しなくてはいけないことだと分かってはいるけれど、やってもやっても減らない書類の数に目が回りそうになる。
椅子に座り、書類の確認をしてサインをしようとすると執事は私に言われるでもなく、ペンを差し出す。
部屋の中に書類にペンを走らせる音だけが響く。
執事が差し出した書類を確認して、サインをする。そして、執事は私のサインを確認して書類をまとめる。
私の執事は優秀だ。
彼は屋敷に出入りする業者の少年だった。私が彼に屋敷の使用人に応募するように推薦すると、今や私の専属執事にまでなった。
「ありがとう。サインをした書類は送っておいて」
「かしこまりました」
伸びをしながら部屋の外を見ると、太陽は沈みかけ月が上がっている。
知らない間に随分と時間が経ったみたいね。
学園での授業に加え書類仕事。そして、アレックスの愛の告白事件で精神的にも疲れが溜まっている。
今日は早く寝るのも悪くないわね。
けれど、その前に……。
「アンナはどうしているの?」
「アンナお嬢様は部屋から出ることなく過ごされています」
「そう……。食事は取っているの?」
「問題なく取られています」
アンナは現在自室で謹慎中だ。
決定権があるお父様が不在のため、私が代理としてアンナに自室で謹慎するように言ったから。
淡々と書類を整理する執事に「あなたは――」と口を開くと。
コンコン
部屋をノックする音に、執事がメイドから要件を聞くとこちらを振り返って言った。
その表情は夕日のせいか少し強張って見えた。
「お嬢様。旦那様がおかえりです」
――――
私とお父様の関係は冷めきっている。
仲が悪いと言うには、そこまで感情が伴っていない関係。
私はお父様が怒ったり、悲しんだり、感情を露わにしているところを見たことがない。
お母様が生きていた時は、まだ親子らしい交流をした記憶があるが、それは昔の話だ。
「彼の何が気に食わないんだ。家柄も身分も申し分のないだろう」
「家柄も身分も、中身が伴っていなければ意味がないですから。私の義妹であるアンナとの浮気は私への裏切り行為であり、看過できません。そして、アレックスの度重なる問題行為は以前から報告していた通りです」
血の繋がった親子にも関わらず、事務的な会話。
感動の再会という訳もなく……。
領地に視察に行っていたお父様と会うのは何日ぶりだろうか。
「婚約破棄を許可する」
えっ?
婚約破棄の許可は嬉しいけれど、今まで何度も婚約破棄したいと言ってはダメだったのに。
婚約破棄を許してくれないことを考えて、お父様を説得するための言葉を考えていた。
あっさりとした婚約破棄の許可に驚いていると、次に続くお父様の言葉で、どうして許可をしたか理解する。
「その代わり、早急に新しい婚約者を見つけるように。ジョルジュ家に劣らない婚約者候補を探したから、この中から選びなさい」
そう言って、お父様は机の上に婚約破棄候補達の資料を置いた。
机の上に置かれた婚約者候補達の資料を見て、なぜか私は悲しい気持ちなった。
無意識のうちにドレスの裾を握る手は赤くなっている。
お父様は私の気持ちなんて知らないんだわ――。
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