毒殺された令嬢は侯爵の手を取り婚約者の破滅を願う〜侯爵様の溺愛は聞いてません!〜

桃瀬さら

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2.目覚め

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「……っは!」 
   
 喉の渇きで飛び起きる様に目を覚ます。

「はぁ…はぁ……」

 脂汗が額に滲み心臓が激しく脈打つのを感じながら、呼吸を整える為に深呼吸をすると、ニコラスに毒殺された記憶が頭の中に流れ込んでくる。

 どうなっているの?さっきまで私はニコラス様の屋敷にいたはず。それなのに、目を覚ましたら自分の寝室のベッドの上にいる。

 確かに私は死んだはずだ。

 手で喉を触れながら目を瞑ると焼ける様な痛さはないが、喉の痛みも床の冷たさも鮮明に覚えている。

 身体におかしい所がないか探していると、扉を叩く音がした。

コンコンッ

「お嬢様。お目覚めの時間ですよ」

 メイドのエラの声だ。  
 私は震えそうになる声を抑えて口を開いた。

「……起きているわ」

 入ってきたエラは死ぬ前に見た最後と変わらない姿をしていた。 

「おはようございます。セシリアお嬢様」
 
 あぁ、エラだわ。エラが目の前にいる。
 もう会えないと思っていたのに……

 変わらないエラの姿に涙を浮かべて見つめていると「どうかされましたか?」と不思議そうに聞いてくる。

「ただ、いつもお世話をしてくれるエラに感謝しないとって思って」

 そう言って笑う私にエラは「まぁ!そんな風に思って頂けるなんて、私は幸せ者です」と言って微笑んだ。

 服を着替える為に鏡を見ると、鏡の中に映る自分は過去に戻る前と変わらなく見える。

 外の風景は最後の記憶では秋だった筈だが、庭は春の陽気に包まれている。

 私は確かに死んだ筈だ、それなのに私は生きて今、ここにいる。

 死んだ者が生き返るなんて聞いた事がない。考えれば考える程、過去に戻って来た事への混乱と、私を毒殺したニコラス様への怒りで頭が痛くなってきた。

「今日は体調が優れないみたいだから、部屋で朝食を取れるように朝食を運んでくれる?」

 頭を押さえる私を見てエラは顔を青褪めた。

「そんな…!今日はお嬢様の誕生日ですので、旦那様達がお嬢様が来るのを待っておられますのに……」

「誕、生日…?」

 確かに私の誕生日は春だが、そんなにも過去に戻ってきたの?

 「医者をお呼びしましょうか?」というエラを横目に、呆然とする鏡の中の私を見てエラに尋ねる。

「ねぇ、エラ。今日は私の何歳の誕生日?」
 
「今日はセシリアお嬢様の18歳の誕生日でございます」

 18歳……

 18歳の誕生日という事は、殺された日は秋だったから半年ほど過去に戻ってきた事になる。

「そう、ね…今日は私の18歳の誕生日だったわね」

「そうですよ。早く準備をしないと、旦那様、奥様、お坊ちゃまがお嬢様が来るのを待っておられます」

「分かったわ。誕生日ならいつもより着飾らないといけないわね。エラ、宝石箱を持って来てくれる?」

 本当に過去に戻って来たなら、宝石箱には死んだ時に付けていたネックレスはない筈だ。

 なぜなら、そのネックレスは誕生日プレゼントとしてお父様から貰った物だから。

 「どうぞ」と差し出された宝石箱を見るとそこには…。

 ない…。ネックレスがない。煌びやかな宝飾品が並ぶなか、そこにはレッドダイヤモンドのネックレスがなかった。

 ネックレスを貰う前の過去に戻って来たのを確信した私は、動揺を悟られないように「これにするわ」とダイヤモンドのピアスとネックレスを付け「行きましょう」と部屋を後にした。
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