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13.差し出された手
先日の王宮の回廊で投げかけたのと同じ質問。
けれど今は声が低く、掠れていた。
いつも溢れ出ている自信など微塵もない、剥き出しの動揺があらわになっている。
ナディアは答えず、ただ彼を見つめ返す。
今日は初めて見る姿のイサークばかり。
けれど、今のナディアにとって――
攻略対象の愛を求めてヒロインとの恋を阻めば、破滅エンド確定の存在。
愛されたいと望んだら破滅エンド確定なんて、なんという皮肉なゲームだろう。
愛などもう意味がない。
私が望むのは破滅エンドを回避して、静かに生きたいだけ。
アメジストの瞳に、感情の色はほとんど映っていない。
静かにイサークを見つめる。
「殿下こそ、私をどう思っているのですか?」
穏やかで、静かな問い。
「俺が、お前を……?」
イサークは驚いたように言葉を失い、沈黙する。
ほら、答えられない。
ナディアは心の中で小さく自嘲した。
イサークにとって、私は第一王子に対抗するための権力を固めるだけの駒。
そして、愛のためにあっけなく捨てられる当て馬でしかない。
唇の端に、自嘲した笑みが浮かぶ。
その笑みを見たイサークの顔が、一瞬痛々しく歪む。
なぜ、あなたが傷ついた顔をするのですか?
そう問いかけることも出来たけれど、ナディアは全てを諦めたように微笑んだ。
イサークは一度、強く目を閉じる。
そして、再び開いた瞳には決意のようなものが宿っていた。
ゆっくりと手を差し出される。
その手を静かに見つめると。
「俺の手を取れ」
突然の言葉に、ナディアの眉がわずかに上がる。
「……なぜですか?」
「どこでもいい。お前が行きたいところへ連れて行ってやる」
イサークの誘いにナディアはわずかに目を見開く。
返事を聞くことなく、イサークは馬丁に向き直り短く命じる。
「一番良い馬車を用意しろ。すぐにだ」
馬丁は慌てて頭を下げ、逃げるように走り去る。
ナディアはただ、黙ってイサークの横顔を見つめていた。
こんなシーンはゲームのシナリオには存在しない。
イサークが振り返り、再びナディアに手を差し出す。
「……来い、ナディア」
その手は強引に掴むものではなく、ただ静かに待っている。
差し出された手をじっと見つめる。
沈黙するナディアに、イサークが口を開きかけたその瞬間――
「イサーク殿下!!」
背後から、鋭く切迫した声が響いた。
後ろを振り返ると、外出していたはずのルペルトが立っていた。
慌てて走ってきたのか、灰色がかった水色の髪が乱れている。
後ろには、老齢の執事が慌てた様子でついてきていた。
ルペルトは服を乱したまま、イサークとナディアの間に割って入る。
その背中は大きく、イサークからナディアを隠すように広がっている。
ルペルトの登場にナディアはホッと息を吐く。
ナディアはソッと足を引く。
突然の誘いに驚いたけれど、イサークはペルトに会いに来たのだろう。
そう思い、ナディアは話す2人に気付かれないように、静かにその場を立ち去ろうとした。
「ナディア、どこに行くつもりだ?」
鋭いイサークの声に、足が止まる。
「……どことは?殿下はお兄様に用があって来られたのではないですか?」
眉をひそめるイサークに、ナディアは気まずそうに視線を逸らす。
「ナディア、こちらに来なさい」
ルペルトの落ち着いた、しかし有無を言わさぬ声。
ナディアは、ゆっくりと視線を上げる。
イサークとルペルト。
二人の視線がナディアに突き刺さっていた。
けれど今は声が低く、掠れていた。
いつも溢れ出ている自信など微塵もない、剥き出しの動揺があらわになっている。
ナディアは答えず、ただ彼を見つめ返す。
今日は初めて見る姿のイサークばかり。
けれど、今のナディアにとって――
攻略対象の愛を求めてヒロインとの恋を阻めば、破滅エンド確定の存在。
愛されたいと望んだら破滅エンド確定なんて、なんという皮肉なゲームだろう。
愛などもう意味がない。
私が望むのは破滅エンドを回避して、静かに生きたいだけ。
アメジストの瞳に、感情の色はほとんど映っていない。
静かにイサークを見つめる。
「殿下こそ、私をどう思っているのですか?」
穏やかで、静かな問い。
「俺が、お前を……?」
イサークは驚いたように言葉を失い、沈黙する。
ほら、答えられない。
ナディアは心の中で小さく自嘲した。
イサークにとって、私は第一王子に対抗するための権力を固めるだけの駒。
そして、愛のためにあっけなく捨てられる当て馬でしかない。
唇の端に、自嘲した笑みが浮かぶ。
その笑みを見たイサークの顔が、一瞬痛々しく歪む。
なぜ、あなたが傷ついた顔をするのですか?
そう問いかけることも出来たけれど、ナディアは全てを諦めたように微笑んだ。
イサークは一度、強く目を閉じる。
そして、再び開いた瞳には決意のようなものが宿っていた。
ゆっくりと手を差し出される。
その手を静かに見つめると。
「俺の手を取れ」
突然の言葉に、ナディアの眉がわずかに上がる。
「……なぜですか?」
「どこでもいい。お前が行きたいところへ連れて行ってやる」
イサークの誘いにナディアはわずかに目を見開く。
返事を聞くことなく、イサークは馬丁に向き直り短く命じる。
「一番良い馬車を用意しろ。すぐにだ」
馬丁は慌てて頭を下げ、逃げるように走り去る。
ナディアはただ、黙ってイサークの横顔を見つめていた。
こんなシーンはゲームのシナリオには存在しない。
イサークが振り返り、再びナディアに手を差し出す。
「……来い、ナディア」
その手は強引に掴むものではなく、ただ静かに待っている。
差し出された手をじっと見つめる。
沈黙するナディアに、イサークが口を開きかけたその瞬間――
「イサーク殿下!!」
背後から、鋭く切迫した声が響いた。
後ろを振り返ると、外出していたはずのルペルトが立っていた。
慌てて走ってきたのか、灰色がかった水色の髪が乱れている。
後ろには、老齢の執事が慌てた様子でついてきていた。
ルペルトは服を乱したまま、イサークとナディアの間に割って入る。
その背中は大きく、イサークからナディアを隠すように広がっている。
ルペルトの登場にナディアはホッと息を吐く。
ナディアはソッと足を引く。
突然の誘いに驚いたけれど、イサークはペルトに会いに来たのだろう。
そう思い、ナディアは話す2人に気付かれないように、静かにその場を立ち去ろうとした。
「ナディア、どこに行くつもりだ?」
鋭いイサークの声に、足が止まる。
「……どことは?殿下はお兄様に用があって来られたのではないですか?」
眉をひそめるイサークに、ナディアは気まずそうに視線を逸らす。
「ナディア、こちらに来なさい」
ルペルトの落ち着いた、しかし有無を言わさぬ声。
ナディアは、ゆっくりと視線を上げる。
イサークとルペルト。
二人の視線がナディアに突き刺さっていた。
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