ぬいぐるみ

果報は寝て待て

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「お話はわかりました。けれども、うちには小さな子はいません。ご近所にもあなたの言っているような歳の子はいないのではないかしら。」そっけなくいい放たれ不安になる。けれど、たしかにはいっていった、いないなんてそんなわけはない。手のひらにはまだほんのり温もっているし、ビクビクドキドキしながら、ここまでやってきた。だが明らかにいま目の前の家人は、だんだんイライラしてきているのも事実である。
「もうよろしいでしょうか。これから出かけなければいけないのです。」
この人はまだ解決していない私を残して外出すると言う。
「忘れたものを取りに来ただけで、本当に、急いでいるのです。もう、よろしいでしょうか?」
この家には小さな女の子はいない、私は天井を見上げる。目の前の家人が嘘をついているようには見えない。一刻も早く忘れ物を持って行きたいのがわかる。家人の右手には鍵が握られており左手には少し汚れたベージュの何かが握られている。
私はそれこそあの子のぬいぐるみなのではないかと感じる。
「それは。」
 
 
 
 
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