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リアとキール
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王子の病が癒え、リアは城を去ることになった。
しかし、それを聞いた王子、キールはリアにべったりとくっついている。
「リア、どうしてだい? このまま城にいればいいのに」
「王子様、私は子爵様に養女にしていただきますがもとは平民です。こうして引き取っていただけるだけでも幸せなことです。私は勉強もしたいですし」
「僕と一緒にすれば?」
「王子様がするのは、政治のお勉強でしょう? 私はお金儲けの勉強がしたいのです」
「お金が欲しいならあげるよ。限りはあるけど……」
リアは、王子黙れと腹の中で思った。
あの国王と違い、王子の頭の中は少しお花畑気味だったのだ。
だが、それも今まで寝て過ごしたせいだろう。これからはびしばし、勉強させ教育していくと国王が張り切っていたことをリアは思い出す。
「自分でお金を稼ぎたいので、与えられるのは嫌なのです」
リアがアステリオ家に行く前日、キールは駄々をこねた。
キールは11歳。リアはおそらく、9歳だった。
キールはまだまだ病み上がりで体は出来上がっていないが、見目は良かった。白金の髪に蒼い瞳。微笑めば一層柔らかになる視線。優しげな雰囲気の少年といったところ。
看病していることから、リアの事が好きだと言っていた。リアはそれを感謝と友愛だと思っていたのだが、キールにとっては恋情だったのだ。
キールは自分を助けたのだから、リアと結婚したいと言う。子供のいう事だからと国王は取り合わなかった。
その前に、そう言う願いをかなえたいならまず王子としてしっかり働けるようになってからにしなさいと言われたほどなのだ。
わかったと頷いたキールは王子としての勉強もしっかりと始めた。
それがどんな不純な動機であろうとも、やることをやっているなら良い。
表向き、キールは優秀な王子といったところだった。
しかし、リアが関わると頭がお花畑になる。リアも自分が好きだと思っているのだ。
リアが返せるのは友愛だけ。友としての気持ちだけだ。そもそも身分が違う。いくら望まれても、と思っていたのだ。
だからこれで会うのは最後、ではないだろうけれど。キールの気持ちは受け取れないのだとぴしゃっと言い放った。
それでもキールは諦められない。だが言い募っても嫌われるだけかと、ひとまず引き下がることにしたのだ。
「僕たち、まだ子供だしね。でも大人になってもこの気持ちが変わらなかったら、その時はまたリアに好きだって言うよ?」
「大人にならないとその気持ちはわかりませんよ」
「そうだね。でも僕は、リアの事が好きだよ」
にこっと笑って言う。
リアはその気持ちは、嬉しいですよと返した。
それが――いけなかった。
何がどうしてどうなったのか、キールの中で何かが良いように改ざんされ、そしてぴしぴしとパズルのことにはまったのだ。
リアは自分の事が、なんだかんだでやっぱり好き。
でも身分差があることを気にしていて、素直になれないのだと。時折垣間見せてくれる本心。それがあの、笑顔。
大人になってもこの気持ちは変わらないだろう。では大人になった時までに、リアがもっと素直になってくれていたら。
そして身分差なんて気にしないでいいほど、自分が優秀であればすべてうまく行く。
キールの頭の中ではそんな流れが出来上がってしまった。あっという間に、誰からもそれは違う、飛躍しすぎだちょっとおちつこうと言われることも――もちろん頭の中での出来事なのでなかったわけだ。
その日から、キールのリアに対してのお花畑脳は、大お花畑脳へと成り、生来秘めていたスペックを余すことなく振るわれ始めた。
リアが子爵家へと行った日から、キールは変わる。
勉学に励み、誰の前に出ても恥じぬ礼儀を身に着け、王子として胸を張れるように。
病から開けてどこかほやっとしていたところがまだあった王子は、本当の、立派な王子としてこのしばらく後、覚醒することとなる。
国王たち、国の重鎮は良い事だと喜んだのだが、それが自分の欲の為だとはしらない。
一人のいとしい少女と、幸せになるために――いや、すでに大お花畑の中で幸せな未来は描かれきっていたのだけれども。
そんなことはつゆ知らず。
リアはアステリオ家の養女となり、文字、計算などの勉強も続けて少しずつ。そして礼儀作法や商売の事などを学び始めた。
もともと興味のあったことだ、その吸収は早く養父母たちも面白がって色々と教えるようになった。
そして養父母達はリアの為にも、同じ年齢の友人たちを作るべきではと思い始める。
そうなると王都の学園に通うのが一番だろう。
貴族の子弟が通う学園、そこは子爵夫妻も通った場所だ。
リアが平民だということは知られているが、癒しの手の持ち主だという話は聞こえているはず。王子を助けた相手に不当なことをすることもないだろうと思ったのだ。
リアにその話をすると、学校、行ってみたい! とすぐに表情を輝かせた。
子爵夫妻はすぐに手続きをし、リアは学園へと通うことになった。
学園ではもっといろいろな事が学べる。言葉遣いや礼儀はまだまだだが、そこは先に謝って、直しているのだと言おう。
それから友達ができるといいなとリアは思う。
長い間、付き合っていけるような素敵な友達と。
学園での日々。その期待に胸ふくらませ、リアはまた新たな一歩を踏み出す。
その学園は――シシリィが通っている学園でもあった。
しかし、それを聞いた王子、キールはリアにべったりとくっついている。
「リア、どうしてだい? このまま城にいればいいのに」
「王子様、私は子爵様に養女にしていただきますがもとは平民です。こうして引き取っていただけるだけでも幸せなことです。私は勉強もしたいですし」
「僕と一緒にすれば?」
「王子様がするのは、政治のお勉強でしょう? 私はお金儲けの勉強がしたいのです」
「お金が欲しいならあげるよ。限りはあるけど……」
リアは、王子黙れと腹の中で思った。
あの国王と違い、王子の頭の中は少しお花畑気味だったのだ。
だが、それも今まで寝て過ごしたせいだろう。これからはびしばし、勉強させ教育していくと国王が張り切っていたことをリアは思い出す。
「自分でお金を稼ぎたいので、与えられるのは嫌なのです」
リアがアステリオ家に行く前日、キールは駄々をこねた。
キールは11歳。リアはおそらく、9歳だった。
キールはまだまだ病み上がりで体は出来上がっていないが、見目は良かった。白金の髪に蒼い瞳。微笑めば一層柔らかになる視線。優しげな雰囲気の少年といったところ。
看病していることから、リアの事が好きだと言っていた。リアはそれを感謝と友愛だと思っていたのだが、キールにとっては恋情だったのだ。
キールは自分を助けたのだから、リアと結婚したいと言う。子供のいう事だからと国王は取り合わなかった。
その前に、そう言う願いをかなえたいならまず王子としてしっかり働けるようになってからにしなさいと言われたほどなのだ。
わかったと頷いたキールは王子としての勉強もしっかりと始めた。
それがどんな不純な動機であろうとも、やることをやっているなら良い。
表向き、キールは優秀な王子といったところだった。
しかし、リアが関わると頭がお花畑になる。リアも自分が好きだと思っているのだ。
リアが返せるのは友愛だけ。友としての気持ちだけだ。そもそも身分が違う。いくら望まれても、と思っていたのだ。
だからこれで会うのは最後、ではないだろうけれど。キールの気持ちは受け取れないのだとぴしゃっと言い放った。
それでもキールは諦められない。だが言い募っても嫌われるだけかと、ひとまず引き下がることにしたのだ。
「僕たち、まだ子供だしね。でも大人になってもこの気持ちが変わらなかったら、その時はまたリアに好きだって言うよ?」
「大人にならないとその気持ちはわかりませんよ」
「そうだね。でも僕は、リアの事が好きだよ」
にこっと笑って言う。
リアはその気持ちは、嬉しいですよと返した。
それが――いけなかった。
何がどうしてどうなったのか、キールの中で何かが良いように改ざんされ、そしてぴしぴしとパズルのことにはまったのだ。
リアは自分の事が、なんだかんだでやっぱり好き。
でも身分差があることを気にしていて、素直になれないのだと。時折垣間見せてくれる本心。それがあの、笑顔。
大人になってもこの気持ちは変わらないだろう。では大人になった時までに、リアがもっと素直になってくれていたら。
そして身分差なんて気にしないでいいほど、自分が優秀であればすべてうまく行く。
キールの頭の中ではそんな流れが出来上がってしまった。あっという間に、誰からもそれは違う、飛躍しすぎだちょっとおちつこうと言われることも――もちろん頭の中での出来事なのでなかったわけだ。
その日から、キールのリアに対してのお花畑脳は、大お花畑脳へと成り、生来秘めていたスペックを余すことなく振るわれ始めた。
リアが子爵家へと行った日から、キールは変わる。
勉学に励み、誰の前に出ても恥じぬ礼儀を身に着け、王子として胸を張れるように。
病から開けてどこかほやっとしていたところがまだあった王子は、本当の、立派な王子としてこのしばらく後、覚醒することとなる。
国王たち、国の重鎮は良い事だと喜んだのだが、それが自分の欲の為だとはしらない。
一人のいとしい少女と、幸せになるために――いや、すでに大お花畑の中で幸せな未来は描かれきっていたのだけれども。
そんなことはつゆ知らず。
リアはアステリオ家の養女となり、文字、計算などの勉強も続けて少しずつ。そして礼儀作法や商売の事などを学び始めた。
もともと興味のあったことだ、その吸収は早く養父母たちも面白がって色々と教えるようになった。
そして養父母達はリアの為にも、同じ年齢の友人たちを作るべきではと思い始める。
そうなると王都の学園に通うのが一番だろう。
貴族の子弟が通う学園、そこは子爵夫妻も通った場所だ。
リアが平民だということは知られているが、癒しの手の持ち主だという話は聞こえているはず。王子を助けた相手に不当なことをすることもないだろうと思ったのだ。
リアにその話をすると、学校、行ってみたい! とすぐに表情を輝かせた。
子爵夫妻はすぐに手続きをし、リアは学園へと通うことになった。
学園ではもっといろいろな事が学べる。言葉遣いや礼儀はまだまだだが、そこは先に謝って、直しているのだと言おう。
それから友達ができるといいなとリアは思う。
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