転生息子は残念系

ナギ

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新たな出会いの6歳(4)

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 無事に生まれた。母さんも元気、という報せを貰ったのは、俺が王都で過ごし始めてから二週間くらい後の事だった。
 生まれたのは女の子。名前はノエルとなったそうだ。
 あの距離なのに報せがすぐ、っていうのは転送の魔法陣がなんとかかんとか。まだ実験段階らしいんだけど、ちゃんと機能してるみたいだ。
 なんかそれ調整してるの父さんらしいんだけど。
 で、大分落ち着いてきたので俺は領地に帰ることに。伯父さんと伯母さん、それからフラウも一緒に俺を送ってくれるって。
 じいちゃんばあちゃんも行きたい、と言ってたんだけど。仕事がーとかなんとかで無理だったみたい。
 しばらく世話してくれてありがとーってじいちゃんとばあちゃんに礼を言ってまた遊びに来ることを約束する。
 次はきっと、父さんも母さんも、それから妹も一緒だ。
 で、帰りもあの馬乗って強行軍するのかとびびってたんだけど、今回はちゃんと馬車だった。
 よかった!! 本当に、良かった!!
 が、しかし。
「イア、ほら。あーんだ、あーん」
「え、ちょ……フラウ、俺自分で」
「娘を呼び捨てとはいい度胸だな」
「父上、私が良いと言ったのです。ほら、イア」
 右から、フラウがあーんをしろと口の所にぐいぐいと菓子をつきつけ。俺お腹減ってないんだけど。
 それを見た、正面にいる伯父が眉を吊り上げる。何これこわい。
 伯母さんは面白そうに笑ってるだけだし。
「私のあーんは受け取れないのか?」
「お腹減ってないからいらないんだけど……」
「フラウから施しが腹が減ってないからいらない? 何様だお前は」
 ヒエッ! この大人、本気で言ってる! ちょ、コワッ!
 し、しかも施しとかなんかこう、言い方に含みというかあーんされることは許さないが、そもそも断る事が許されると思うなよみたいな、なんだこの圧力!
 ええええ、この兄がいてなんでああなるんだよ母さんはあああああ!!!
 今てへぺろ! みたいな顔してる母さんの姿しか思い浮かばなかったんだけど!!
 そんな、ぐりぐりと無理矢理口を開けられるようなあーん攻撃に耐えながら旅は続き。
 疲弊しながら領地へと帰ってきた。
 まじで! ただいま! 旅の終わり! ありがとう!
 領地大好き!!
 王とも楽しかったけど、やっぱり俺は駆けまわれる領地が大好きだ。
 おかえりーと待っていてくれた母さんと父さん。
 うおおおおお会いたかったあああああああ!!!!
 俺を伯父さんから守ってくれええええええ!!!!
 ちょっとどうかなと思いつつ母さんはやめて父さんに飛びついてみた。
 父さんはびっくりしながら、俺を受け止めて抱き上げてくれる。
 父さんのスパルタと伯父さんのちくちく。どっちが嫌かっていうと、もちろんちくちくのほうだ!!
「……どうかした?」
「馬車の中で……伯父さんに色々と」
「ああ。イラもされたのか。よく頑張ったね」
 父さんにこそっというと苦笑して。父さんもきっと身に覚えのある様な事なんだろう。
 ほんとウッ。辛かった、ウッ。
「久しぶりの我が家だな」
「えー、もうお兄様の家じゃないのよ? それに領地になんてほとんどいなかったじゃない」
「それでも生家は生家だ」
「お兄様は王都の家で生まれたの知ってるんですからね」
 そんな、俺の隣で。母さんは伯父さんとふつーにやりとりしてる。
 何か言われてもえー、と言ってさらっと流して。すごいな、兄と妹さすが。
 それから家の中に入って、応接間に。母さんはノエルを連れてくるからと少し離れる。
 その間、伯父さんの相手は父さんがしてたけど難しい話ばっかりだ。
 王都での政治の話とか、産業とか。俺には難しくてまだわかんねーな。
 シエルはその話を右から左できょろきょろと見回している。
 しばらくすると母さんが戻ってきた。
 その腕に赤ん坊を抱いて。ソファに座ると、母さんはまず俺をみる。
「いらっしゃい、イラ」
 あなたの妹よと紹介される。
 俺の、妹。
 その響きにどきどきする。
 招かれて、隣から覗き込めばすやすや眠っている、幸せそうな顔。
「俺の、妹……」
「そう。お兄ちゃんなんだから、守ってあげてね」
「うん!」
「お前みたいな子にならないといいな……」
「ちょっ、お兄様ひどい!」
 後ろから覗き込んだ伯父さんが零した言葉に母さんは文句言いつつ笑う。
 フラウも私もと傍にきて、母さんはノエルを紹介していた。
「母さん、触って良い?」
「ええ。抱っこ……はまだ難しいからできないかな」
 俺は妹の頬に手を伸ばす。やわかい、すごくぷにぷにしてる。
 かわいい。かわいい!!
 へにゃっと笑っているのか、あーと言葉にならない声。
 俺はこの妹、ノエルを大事にしていこうと思った。
 それから、伯父さんたちは一日泊まってすぐに王都へ戻っていく。忙しいなぁと思いつつ見送って、俺の領地での生活再び!
 また父さんに色々、稽古つけられるんだろうなぁとある程度、覚悟していた。
 が、しかし。そこで俺に選択肢が与えられた
「イラ、七歳になったら学校に通うのと、家庭教師つけるのと。どっちがいい?」
「え、学校」
「ああ、そう」
「ほら、テオ行ったじゃない。学校で良いって」
「ああ、うん……じゃあ学校だけど、王都と領地。どちらでも行けるけど」
「領地ので良いけど」
「だから私の言った通りだったでしょ」
「そうだね。じゃあ領地の学校で……足りないところは俺が補おうか」
 いやいや。家庭教師とか、そんなの四六時中ってことだろ。ない、ない。無理。
 俺は遊びたいさかりだ。いや、ちゃんと勉強もするけど。
 それに、学校……友達は、やっぱり欲しい。
 俺は貴族の家の子だから、友達作るのは難しいかもしれないけど。でも、望みがないわけじゃないし!
 父さんは本当に大丈夫? という顔をしている。大丈夫大丈夫。
 母さんは家で勉強なんていやよねーと俺の気持ちをわかっているみたいだ。
 そんなわけで。
 俺は学校に通う準備もちょっとずつ始めてその日を楽しみにした。
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