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 そうこうしているうちに、車は目的地近辺に着いた。
目的地の公園に行く道は車が通れる幅ではなかったので、近所のパーキングに車を停めて歩いていくことにした。

この辺一帯は、古くからある住宅地らしく、昭和に建てられたような古い家が多かった。公園に続く道も細い路地で、二人並んで歩くと道一杯になるような狭さだった。

「こんな僻地に何の用だよ?」
安藤は辺りを見回してウンザリしながら旭に聞いた。

「気になるヤツがいるんだよ。」
「えっ? 誰? 何者なんだよそいつは?」

「うちのクラスの男子なんだけどさ、もう気になって気になってしょうがないんだよ。」
旭は前を向いたまま、黙々と歩きながら答えた。

「えっ、何? 俺そんな話聞いてない! 何なのそれ! どこのどいつだよ!」
旭が全く聞いていないにも関わらず、安藤は延々と文句を垂れた。


「なんかこの辺、怖くない? 幽霊とかゾンビとか出てきそうな雰囲気じゃん。」
類はもうすでに帰りたがっていた。

「私もなんだか怖くなってきた~。」
凜は怖がるフリをして安藤の耳にダイレクトに入るように囁いた。


何なんだ、この女の声は! 骨伝導の如く、声が脳髄に突き刺さってくる!!!


安藤は鳥肌が立って、凜の方に振り向いた。

凜はこの瞬間逃がすまじ! とばかりにお得意の360度超絶笑顔プラス怯え顔をしてみせた。


「あ、みんな帰っていいよ。ここからは大勢より一人のほうがいいかもしれないし。」

「こんな人気の無いおどろおどろした場所でそんな訳のわからないやつと旭を二人っきりで会わせる訳にはいかないだろ! 俺も行く。」

安藤がそう言うと

「じゃ、私も行く。」
凜がソッコー従った。

「えー、マジ~? 栗原は俺と先にパフェでも食べて待ってようよ~!」
類は文句タラタラだったが、3人がスタスタと先へ行ってしまうので、仕方なく後を追った。


路地の終点が公園の入口だった。


「何ここ…。なんでこんな場所に公園があるの? 不気味すぎ…。しかも袋小路じゃん…。」

類は全身鳥肌を立てて恐れおののいた。


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