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しおりを挟むストレスでフラフラになりながら家へ向かった。途中幼稚園に寄ってリコを拾った。リコは美穂と里香と遥の娘たちと楽しそうに遊んでいた。
もし私がみんなと縁を切れば、リコも仲良しの友達を失ってしまうだろう。
そんなことを考えると、吐き気がするほど嫌な気持ちを抱えていても、ママ友たちとの関係は崩せない。
私が我慢すればいいんだ…。
家に着いて夕食の支度をしていると、夫が帰ってきた。夫に悩みを聞いてもらおうと思った。
吐き出してスッキリしたかった。
「ねぇ、パパ…」
「ママ! あのさ、ちょっと相談があるんだけど…」
私の相談を先に聞いてもらいたかったがしょうがない。夫の相談とやらをさっさと片付けてゆっくり聞いてもらおう!
「何? 相談って?」
「実はさ、五十嵐達がさ、キャンプ行かないかって誘ってきて…もちろん何家族か来るからママとリコも一緒にね。
でねっ、我が家は今までキャンプとか行ったことないじゃん! 道具とかもいろいろいるからさっ! 家計から出せないかな~と思って…。
五十嵐がさ、ホームセンターで働いてるから、アイツが買うことにして社員割引にしてくれるっていうんだよ!」
「はぁ? キャンプって、テントとかなんだかんだ一式揃えたらすごい金額になるじゃない!」
「でもさ、一度揃えればずっと使えるし、旅行でホテルとかに泊まるより全然安くつくから長い目で見たらお得だよ! 家族旅行も気軽に行けるようになるじゃん!」
「そんな無駄遣い…マンションのローン払ってかなきゃいけないっていうのに…」
「ママだって友達としょっちゅうランチ行ってるだろ! そっちの方が無駄遣いじゃないか! キャンプなら家族みんなで楽しめるけど、ランチはママだけだろ!」
顔面から火を噴きだしそうになった。
好きでママ友のランチ会なんかに行ってるわけじゃない!
リコの友人関係を考えてるから、気が進まなくてもマウンティングされても、体に鞭打って財布にも鞭打って付き合っているんじゃない!
ましてや友人から憐みを受けてしまうほど余裕のない我が家なのにキャンプ道具揃えるだと?
ふざけんな!
私は無言で夫とリコの食事をテーブルに並べると、エプロンを外して丸めてリビングに投げ捨てた。あっけにとられる夫を尻目に財布と鍵だけ持って外へ出た。
エレベーターから降りて、マンションの出口へ向かう途中の鏡に自分の姿が映った。
私、なんてしょぼくれてるんだろう…。
身の程に合わない豪華なマンションホールに自分とのギャップが際立っていた。
行く当てもなく彷徨った。
気が付くと駅前の商店街を歩いていた。焼き鳥屋、居酒屋、コンビニの灯りが薄暗くなった商店街を照らしていた。
ふと見上げると
空にはお月様
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