日々充実したいだけの僕と食物部の立川さん

まんまるムーン

文字の大きさ
41 / 62
4. デート代は男が払うのか否か

4

しおりを挟む


 男のいた場所から離れたところで繁充は立ち止まった。

「部活の買い出しだなんて嘘ついて、どうしちゃったの?」
絵美が繁充に聞いた。繁充はどう言えばいいのか戸惑っているようだった。

「まぁ、おかげで助かったけど。あいつ、面倒くさいんだ。もう別れたいのに別れてくれなくってさ…。」
絵美はうんざりした顔で言った。

「前田さん…ちょっと身辺気を付けた方がいいよ…。」
繁充は言った。

「繁充…もしかして私の事心配してくれてんの?」

「いや…むしろ君では無くて彼…の方だけど…」

「はぁ? マジ何言ってんのか分かんない。」
絵美は眉間に皺を寄せて繁充を見た。その時、絵美のスマホが鳴った。

「あ、私もう行かなきゃ。」

「…もしかしてさっきの彼とまた会うの?」
綾女が聞いた。

「会うわけないじゃん。あいつとはもう終わりよ。今日は他の人と約束があったのに、あいつが突然やって来たのよ。私のこと付けまわしてたみたい。」
絵美は吐き捨てるように言った。

「大丈夫なの? また追っかけて来るんじゃない?」
綾女は心配になった。

「そうなったら警察呼ぶわ。」
そう言うと、絵美はさっさとその場を立ち去った。

 繁充は何も言わず、ただじっと絵美の後姿を見つめていた。




 その日以来、絵美は学校に来なくなった。

 学校には風邪で欠席となっているらしいが、あれから一週間以上経っている。いくらなんでも風邪にしては長すぎるのではないか…と綾女は思っていた。

「立川さん。」
ふいに繁充に呼びかけられた。

「…付き合って欲しいんだけど…。」

―え!?
綾女の顔は急に赤くなり、血が上ってクラクラし出した。

「…無理かな?」
繁充は問いかけた。

―無理とかじゃないけど…いきなりすぎるよ、繁充君!
綾女は熱を帯びる頬を両手で抑えてドギマギした。

「無理だったらいいよ。他の調理部の子誘うから。」

―えぇ~??? そんな簡単に他の子に乗り換えるの、繁充君っっっ???
綾女は立ち上がった。

「私もほんとはずっと前から…」
綾女は目をギュっと瞑ったまま告白しようとした。が…話の途中で繁充が遮るように言った。

「あ、そうなんだ。じゃ、話は早いね! 前田さんちに行くの、男の俺だけじゃちょっとアレだし、女子がいた方が良いと思って。」

―え? 何ですと? さっきの「付き合って」…は、そういう意味なの?
綾女はガックリと肩を落とした。

「じゃあ、さっそくなんだけど、今日の放課後いい?」

「…了解です。」
綾女は情けない顔で答えた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...