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4. デート代は男が払うのか否か

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 男のいた場所から離れたところで繁充は立ち止まった。

「部活の買い出しだなんて嘘ついて、どうしちゃったの?」
絵美が繁充に聞いた。繁充はどう言えばいいのか戸惑っているようだった。

「まぁ、おかげで助かったけど。あいつ、面倒くさいんだ。もう別れたいのに別れてくれなくってさ…。」
絵美はうんざりした顔で言った。

「前田さん…ちょっと身辺気を付けた方がいいよ…。」
繁充は言った。

「繁充…もしかして私の事心配してくれてんの?」

「いや…むしろ君では無くて彼…の方だけど…」

「はぁ? マジ何言ってんのか分かんない。」
絵美は眉間に皺を寄せて繁充を見た。その時、絵美のスマホが鳴った。

「あ、私もう行かなきゃ。」

「…もしかしてさっきの彼とまた会うの?」
綾女が聞いた。

「会うわけないじゃん。あいつとはもう終わりよ。今日は他の人と約束があったのに、あいつが突然やって来たのよ。私のこと付けまわしてたみたい。」
絵美は吐き捨てるように言った。

「大丈夫なの? また追っかけて来るんじゃない?」
綾女は心配になった。

「そうなったら警察呼ぶわ。」
そう言うと、絵美はさっさとその場を立ち去った。

 繁充は何も言わず、ただじっと絵美の後姿を見つめていた。




 その日以来、絵美は学校に来なくなった。

 学校には風邪で欠席となっているらしいが、あれから一週間以上経っている。いくらなんでも風邪にしては長すぎるのではないか…と綾女は思っていた。

「立川さん。」
ふいに繁充に呼びかけられた。

「…付き合って欲しいんだけど…。」

―え!?
綾女の顔は急に赤くなり、血が上ってクラクラし出した。

「…無理かな?」
繁充は問いかけた。

―無理とかじゃないけど…いきなりすぎるよ、繁充君!
綾女は熱を帯びる頬を両手で抑えてドギマギした。

「無理だったらいいよ。他の調理部の子誘うから。」

―えぇ~??? そんな簡単に他の子に乗り換えるの、繁充君っっっ???
綾女は立ち上がった。

「私もほんとはずっと前から…」
綾女は目をギュっと瞑ったまま告白しようとした。が…話の途中で繁充が遮るように言った。

「あ、そうなんだ。じゃ、話は早いね! 前田さんちに行くの、男の俺だけじゃちょっとアレだし、女子がいた方が良いと思って。」

―え? 何ですと? さっきの「付き合って」…は、そういう意味なの?
綾女はガックリと肩を落とした。

「じゃあ、さっそくなんだけど、今日の放課後いい?」

「…了解です。」
綾女は情けない顔で答えた。



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