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 頭の中がパニックになってしまった。

沢井君が家まで送って行ってあげると言ってくれたが、少し頭を整理したかったので、丁重に断った。

沢井君はとても心配してくれて、何かあったらいつでも連絡してと、連絡先を交換してくれた。


「チカコ…」

急に耳元でカスミが囁いた。全身に鳥肌が立った。

「カスミ! どこに居たの?」

「急にあんな男が現れるから! チカコ、あんな男に近寄っちゃダメよ! ほんとロクな奴じゃないから! 変態やろう! 死ねばいいのに!」

「…カスミ…」

「あんな見るからに陰気でうだつが上がらなさそうな男、近寄ったら運気下がっちゃうわ! 悪い事言わないさっさと…」

カスミは沢井君の悪口を言い続けている…。


 沢井君って…そんなに悪い人なのかしら…?
 
 …死ねばいいのにって…死ななきゃいけないほど…悪い事…した…?


 カスミが言うことは、いつも正しかったけど…

 …あれ…いつも正しかった…っけ…?

「チカコ! ちゃんと聞いてる? 私、間違ったこと言ってないよね!」

 
 …そうよ…

 私の友達にカスミなんて子

 いない!!!!


「…カスミ…あなた…誰なの?」

「…どうして…?」

振り向くと、髪を振り乱したカスミが上目遣いでこっちを睨んでいる。

「…チカコ…ずっと守ってあげたじゃない。どうしてそんな事言うの? あんたも私の事捨てるの?」

カスミは2、3歩歩み寄ると、いきなり誰かに殴られたようのけぞった。あっという間にカスミの目の周りは内出血して膨れ上がった。

「…あんたも! 私の事ボロボロにして捨てるの?」

今度は反対側を殴られたように頭が動いた。そしてお腹を蹴られたように飛び上がってうずくまった。誰かがカスミの髪を掴んで引っ張った。カスミの体は引きずられた。

「…う…うぅ…」

「カスミ…。」

カスミはうずくまったままうめき声をあげた。

「…見つけたのよ。痛みを共有できる相手を…。あんたには責任がある。だって…あんたたち兄弟でしょ! 私から逃れられるなんて考えないで!」

カスミはいきなり顔をあげて大声で怒鳴った。

「…カスミ…、私、あなたと知り合った記憶も無いし、あなたのこと、誰だかも知らない!」

カスミは震えながらゆっくりと立ち上がった。鼻から血が流れ落ちていた。カスミはゆっくりと手で鼻血を拭った。

「…もう少しだった…。もう少しだったのに! ううん、絶対連れて行く。逃がしはしない。」

カスミは全身を小刻みに震わせた。



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