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第十六章 天界の裁定
しおりを挟むダミアンを倒したクラリッサの力は、周囲に静寂を取り戻させた。しかし、その直後、空間に巨大な裂け目が現れた。そこから眩い光が差し込み、複数の天界の使者たちが姿を現した。彼らは厳格な表情でクラリッサを見下ろし、その中心に立つのは天界の最高権威を象徴する存在、〈裁定者〉エリュシオンだった。
「リリス、またはクラリッサ・エバレット。天界の名においてお前に裁きを下す。」
その声は雷鳴のように響き渡り、周囲の大気を震わせた。ゼファーでさえ表情を曇らせ、一歩下がった。
「裁き……?」
クラリッサは冷静を保とうとしながらも、心臓が高鳴るのを感じた。
「お前がこの地上で引き起こした運命の歪み、そして天界への反逆に等しい行為を見過ごすわけにはいかない。」
エリュシオンはそのまっすぐな視線をクラリッサに向けた。
「私は反逆などしていません。ただ、生きるために戦っただけです。」
「生きるため、か。その言葉がどれほどの意味を持つのか、理解しているのか?お前の力は地上の運命だけでなく、天界の秩序そのものを揺るがしている。」
エリュシオンの言葉に、クラリッサは反論しようとしたが、その隙を与えないほどの威圧感が場を支配していた。
ゼファーの進言
ゼファーが一歩前に出て、口を開いた。
「エリュシオン様、彼女を即座に罰するのは早計ではないでしょうか。リリス、いやクラリッサの行動には確かに秩序を乱す面がありましたが、同時にこの世界の崩壊を防いだのも彼女の力です。」
「ゼファー、お前がそのような弁護をするとは意外だ。」
エリュシオンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷たい態度に戻った。
「彼女がこの地上で行ったことは、いずれ更なる混乱を招くだろう。それでも擁護するのか?」
ゼファーは一瞬黙り込んだが、意を決して続けた。
「クラリッサは運命の歪みを引き起こしましたが、それは天界が課した試練の一因でもあります。彼女一人に全責任を押し付けるのは不公平です。」
クラリッサの決意
クラリッサはそのやり取りを黙って聞いていたが、ついに前に出て、エリュシオンと真正面から向き合った。
「天界が私を罰しようとするのなら、受けて立ちます。でも、私はこの地上で出会った人々を守り抜くと決めたのです。それがどれだけの運命を歪めることになろうとも、私は後悔しません。」
その強い意志に、周囲の天界の使者たちも一瞬たじろいだ。エリュシオンはじっと彼女を見つめた後、静かにうなずいた。
「お前の覚悟は理解した。しかし、天界の秩序を守るために、このまま放置するわけにはいかない。リリス、お前に最後の試練を与える。」
「試練?」
「地上と天界の調和を取り戻すための役割を、お前に担わせる。その結果次第では、お前の存在を完全に消滅させる可能性もある。」
新たな使命
クラリッサはその言葉に動揺を隠せなかったが、視線を逸らすことなくエリュシオンを見返した。
「私にできることなら、やり遂げます。どんな犠牲を払ってでも。」
「よかろう。では、この使命を全うしろ。」
エリュシオンが手をかざすと、クラリッサの体に光が降り注ぎ、その中で新たな紋章が刻まれた。それは、地上と天界の調和を象徴する〈双極の紋章〉だった。
「この紋章はお前の力を制御し、試練の道標となる。だが、注意しろ。もしお前が再び運命を歪めれば、その時こそお前の存在を完全に抹消する。」
「……わかりました。」
エリュシオンは最後にクラリッサを見つめ、天界の使者たちと共に消え去った。その場にはクラリッサとゼファーだけが残された。
ゼファーの忠告
ゼファーは静かにクラリッサに歩み寄り、言った。
「エリュシオンの試練は厳しい。だが、お前なら乗り越えられると信じている。」
「ありがとう、ゼファー。でも、私はこの紋章がどういう意味を持つのか、まだ完全には理解していない。」
「それを理解するのはこれからだ。この紋章には、地上と天界のバランスを保つ力がある。だが、それを誤れば……。」
ゼファーの言葉に、クラリッサはうなずいた。
「わかっています。だからこそ、私はこの力を正しく使いたい。」
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