名探偵 折原シンの事件簿

たくの

文字の大きさ
2 / 2

嘘が絡む迷路

しおりを挟む

翌日、シンとエリカは再び現場に足を運んだ。警察が一通り調査を終えて撤収した後だったが、シンはすでに彼の観察眼で新たな情報を拾い上げていた。倉庫の隅に置かれた古びた机の上に、何かが引き出しからこぼれ出ていたのだ。

「エリカ、この引き出しの中に何か入っていたはずだ」
シンは静かに言うと、引き出しを開け、そこから取り出したのは一枚の古びた名刺だった。名刺には「株式会社三澤商事」—被害者が勤めていた会社の名前が書かれていた。

「これがどう関係しているんですか?」
エリカは疑問の顔を浮かべた。

「これはおそらく、犯人の仕掛けた罠だ。『三澤商事』という会社が、この事件にどんな影響を与えているかは分からないが、この名刺が意味することは一つだけだ」
シンは言葉を切り、じっと名刺を見つめる。「犯人は、この事件を会社の問題として隠そうとしている」

嘘と矛盾

その後、シンとエリカは事件に関連する人物の聞き込みを行った。被害者の上司である大野は、シンにこう言った。

「私もその時は現場にいたんだが、確かに彼は何かを隠しているような素振りがあった。だが、それが何かは分からない。仕事が忙しくて、あまり関心を持っていなかった」

シンはその言葉にうなずきながらも、心の中である違和感を感じ取っていた。大野の証言は、どこか不自然で曖昧だった。

「では、大野さん。事件当日、あなたはどこにいました?」
シンの問いに、大野は少し間を置いて答えた。

「倉庫の外だ。倉庫の中には入っていない」

「それはおかしいですね」
シンが言うと、大野は焦った様子で言葉を詰まらせた。「どうして…?」

「倉庫の中には、あなたの足跡が残っています」
シンは静かに言うと、大野の顔から血の気が引いた。シンはゆっくりと続けた。「あなたが見たとき、遺体のそばにいたということは、あの部屋に足を踏み入れているということです」

大野は再び黙り込む。シンはその沈黙を無視して言い続けた。「あなたが最初に現場にいたのではないかと思います。その後、現場が「事故」に見えるように工作したのでは?」

そのとき、部屋の隅に座っていたエリカが顔を上げた。「シンさん、ちょっと待ってください。確かに大野さんは疑わしいですが、まだ証拠が足りません」

「そうですね」
シンはエリカの言葉にうなずきながら、大野の顔をじっと見つめる。大野は言葉を続けた。

「だから言ったんだ。彼は最後に何かを言おうとしていた。『逃げるな…』って」

その一言が、シンの中で何かを引っかき回す。逃げる? そして、遺体の位置にも何か不自然さがあったような気がしてきた。

犯人の嘘

シンとエリカが事務所に戻った後、再び大野の言葉が引っかかって離れなかった。シンは無言で倉庫の写真を並べ、細部を観察していたが、エリカがふと口を開いた。

「でも、シンさん、大野さんが嘘をついているとしたら、何のためにそんなことを?」

「それが分かれば、謎は半分解ける」
シンは低い声で答えると、机の上に散らばった書類を見つめた。

「犯人は嘘をついている。『逃げるな』。これが真実に近づくための糸口だ」

シンはその言葉を最後に、静かに席を立った。

「次に会うときには、全てが明らかになっている」

次章へ続く

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...