救国の巫女姫、誕生史

ぺきぺき

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2 三の君、弟においていかれる

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「ありがとうございました!」

双子の兄弟、みつるしずるは稽古を終えて道場を後にした。
二人は異人の母を持ついわゆるハーフで、ダークレッドの髪と整った目鼻立ちは城下では目立つのだが、九条家の双子は生まれも育ちも城下の有名人でありもはや気に留める人もいない。

「やっぱり兄上は強いなあ!」

優し気な雰囲気の弟の垂はのんびりした口調で兄の満に話しかけた。

「俺たちの実力はほぼ五分五分じゃないか。」

「いや、兄上は動きにスキがなくてかっこいい!僕はどんくさいからさ。」

「どんくさくても五分なんだから、下手したらお前の方が強いかも。」

垂はまさか、と手をふって否定するが、満はマジで言っていた。

「そういえば兄上は父上に言われた件はどうされるんですか?」

満がギクッと肩をすくめた。父上に言われた件とは、16歳になったら仕事を始めて九条家に金をいれろ、というものである。
十二分に裕福であるにも関わらず、九条家の子供たちはみな何かしらの仕事についていた。
従姉妹の一の姫も女だてらに城で近衛兵として働いており、九条邸には帰ってこない。

「いろいろ考えているところだ。」

「兄上なら官吏も近衛もござれですもんね!」

とりあえずごまかそう。

「垂は?」

「僕ですか!?」

垂は待ってましたとばかりに声を張り上げ始めた。
こういう時、垂にとってはとてもいいニュースなのだが、満にとっては悲報である可能性が高い。経験上。

「僕はですね、異国に留学します!」

「え?」

「母上に相談したら、グランパに進言してくださって、留学の手配をしてくださったんです!」

留学だって…?仕事じゃないじゃないか…いやそうじゃなくて。

「いつから?」

マヌケな声になってしまったが、垂は全く気にしていないようだ。

「来年の春に向こうに渡ります!」

そこから垂は楽しそうに留学準備について話し出した。
実は国からも誰か留学に出したいと思っていたらしいとか、大使と一緒に行くとか、そういう細かい話もしていたが、満はほとんど聞いていなかった。

双子の弟の垂が、自分と同じように育ってきた垂が、いつの間にか夢を持ち、さらに夢に向かって前進している。
方や、自分は?自分は何をやりたい?

満の目の前には何もなかった。

ーーーー

「ただいま戻りました!」

満は門をくぐって早々に異変に気付いた。小さな従兄弟たちが庭で遊んでいないのだ。

「あー!三兄と四兄だー!」

元気な八の姫・八重やえが縁側から飛び出して、そのまま満に抱き着いた。

「八重、だれか来てるの?」

「おじい様が、にのこつれてきた。」

「にのこ?」

屋敷の奥から七の君と九の姫に引っ張られて同い年くらいの少女が出てきた。

灰色にも見える薄い黒髪を背に流し、灰色に見える瞳でこちらを観察するように眺める。
多くの巫覡が持つ、霊視のできる瞳だ。

ー垂の好きそうな美少女だ。

そう思って横目で垂を見るとぽーっとした表情で少女を見つめていた。
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