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15 雑用係、心配する
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二乃子に迫る妖怪を切り伏せて、殴り飛ばして、蹴りつける。
満だけでは手が足りない…!
そう思ったところに鋭い矢が飛んできて巨大なムカデの妖怪を射抜いた。
射手を見れば、すらりと背の高い、ショートカットの年上の女性である。もう一人、同じく背の高い、長い黒髪を束ねた女性がその後ろから駆け出し、剣を抜き、三つ目の妖怪を切り伏せた。
二人とも女近衛兵で、従姉の一の姫・凛とその幼馴染・藤堂一花だ。二乃子が咲に呼びに行かせた近衛のお姉さんたちである。
咲も飛び出してきて、妖怪の足に思い切り噛みついた。
「妖怪は巫覡殿を狙ってここに集まってきている!まとめて倒すぞ!」
一花が引き連れてきた近衛兵たちに激をとばし、妖怪たちはあっという間に倒されていった。
そして、二乃子も結界の修復を終える。
パチンという音とともに、妖怪たちがあふれていた割れ目が閉じ、外側の妖怪たちは見えなくなった。
その場に膝をつきそうになった二乃子を慌てて支える。
「二乃子殿!結界は閉じましたよ!こっちの近衛の方たちが来てくれたのでもう大丈夫です。」
「しかし、結界の外にまだたくさんいます…。城下に影響が出る前に、なんとかしないと…。」
そう言いながらも二乃子の顔は真っ青だ。
そこに新たな援軍が到着する。
上空を飛来するたくさんの竜たち。妖怪退治を生業とする竜使いたちの登場である。結界の外側でなにやら戦っている。
「大丈夫です!竜使いが来てくれました!」
そこで安心したのか、二乃子はふらりと意識を失った。
「二乃子!」
慌てて抱きかかえて息を確認する。…どうやら気絶しただけの様だ。
ーーーー
二乃子は翌日の昼過ぎに目を覚ました。それを城に来ていた父に聞き、二乃子の下へと駆け付けた。
「二乃子殿!」
部屋にはどこかバツの悪そうな顔をした二乃子と、茶髪の青年が医者の診察器具をもって座っていた。
「叔父上!お帰りになられていたのですか?」
「やあ、満。」
満の父の弟で医師をしている光である。
「昨日の夕方に九条邸に寄ったんだけど、こんなことになっただろう?怪我人の診察に駆り出されていたんだ。」
光は九条家の三姉弟と恐れられる上の三人とは雰囲気が異なり、朗らかとした好青年である。イケメンだが、父のように近づき難い感じではなく、患者から不安を取り除き、一瞬で信頼されるような、人の好さを醸し出していた。
「大したけが人はいなくてよかったと思っていたんだけど、こんなところに重症患者がいたとはね。」
「重症?」
「あ、あの、光殿。この件は内密に…。」
「できません。」
光はちゃんと医者として心を鬼にした診察ができる。そして今回、二乃子の体質について満に伝えておくべきだと判断した。
「満、二乃子の最近の体調はどうだった?」
「…最近は難関の案件に寝食を忘れて挑んでいるように見ていましたが。」
「寝食を忘れてね。普段から二乃子は食欲がある方かな?」
食欲。二乃子は平気で食事を抜いて活動する、小食だという認識だ。そういえば、お腹がすいたと言っているのは聞いたことがない。
「食事を抜かれることもよくあります。小食な方だと。」
「違うね。そもそも食欲がないんだ。」
満ははじめ意味が理解できなかった。
「食欲が、ない?」
「お腹が減ったことがわからない、と言えばいいかな。寝食を忘れるということは、睡眠欲求の方もないのかもね。体が悲鳴を上げているのに自分で気づかないんだ。
だから今回、体がギリギリなのに気づかず、大きな術を使って、倒れてしまったというわけだ。」
満は唖然として二乃子を見た。二乃子は気まずそうに視線を逸らす。
「そんな状態なら頭痛とか、体の不調に悩まされそうなものだが、今聞いた話によれば、どうやら痛覚も鈍いようだ。怪我をしても痛くないと。」
満はますます目を丸くして二乃子を見る。
しかし、思い返せば、咲に噛みつかれたとき、声もあげなかったし、手当もせずに放っておこうとした。
痛くなくて、忘れていた?
「満、二乃子の食事と睡眠には気を付けてくれ。」
「はい。いらないと言っても三食食べさせて、ちゃんと定刻に毎晩寝かしつけます。」
雑用係が二乃子のおかんを兼ねることになった瞬間だった。
満だけでは手が足りない…!
そう思ったところに鋭い矢が飛んできて巨大なムカデの妖怪を射抜いた。
射手を見れば、すらりと背の高い、ショートカットの年上の女性である。もう一人、同じく背の高い、長い黒髪を束ねた女性がその後ろから駆け出し、剣を抜き、三つ目の妖怪を切り伏せた。
二人とも女近衛兵で、従姉の一の姫・凛とその幼馴染・藤堂一花だ。二乃子が咲に呼びに行かせた近衛のお姉さんたちである。
咲も飛び出してきて、妖怪の足に思い切り噛みついた。
「妖怪は巫覡殿を狙ってここに集まってきている!まとめて倒すぞ!」
一花が引き連れてきた近衛兵たちに激をとばし、妖怪たちはあっという間に倒されていった。
そして、二乃子も結界の修復を終える。
パチンという音とともに、妖怪たちがあふれていた割れ目が閉じ、外側の妖怪たちは見えなくなった。
その場に膝をつきそうになった二乃子を慌てて支える。
「二乃子殿!結界は閉じましたよ!こっちの近衛の方たちが来てくれたのでもう大丈夫です。」
「しかし、結界の外にまだたくさんいます…。城下に影響が出る前に、なんとかしないと…。」
そう言いながらも二乃子の顔は真っ青だ。
そこに新たな援軍が到着する。
上空を飛来するたくさんの竜たち。妖怪退治を生業とする竜使いたちの登場である。結界の外側でなにやら戦っている。
「大丈夫です!竜使いが来てくれました!」
そこで安心したのか、二乃子はふらりと意識を失った。
「二乃子!」
慌てて抱きかかえて息を確認する。…どうやら気絶しただけの様だ。
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二乃子は翌日の昼過ぎに目を覚ました。それを城に来ていた父に聞き、二乃子の下へと駆け付けた。
「二乃子殿!」
部屋にはどこかバツの悪そうな顔をした二乃子と、茶髪の青年が医者の診察器具をもって座っていた。
「叔父上!お帰りになられていたのですか?」
「やあ、満。」
満の父の弟で医師をしている光である。
「昨日の夕方に九条邸に寄ったんだけど、こんなことになっただろう?怪我人の診察に駆り出されていたんだ。」
光は九条家の三姉弟と恐れられる上の三人とは雰囲気が異なり、朗らかとした好青年である。イケメンだが、父のように近づき難い感じではなく、患者から不安を取り除き、一瞬で信頼されるような、人の好さを醸し出していた。
「大したけが人はいなくてよかったと思っていたんだけど、こんなところに重症患者がいたとはね。」
「重症?」
「あ、あの、光殿。この件は内密に…。」
「できません。」
光はちゃんと医者として心を鬼にした診察ができる。そして今回、二乃子の体質について満に伝えておくべきだと判断した。
「満、二乃子の最近の体調はどうだった?」
「…最近は難関の案件に寝食を忘れて挑んでいるように見ていましたが。」
「寝食を忘れてね。普段から二乃子は食欲がある方かな?」
食欲。二乃子は平気で食事を抜いて活動する、小食だという認識だ。そういえば、お腹がすいたと言っているのは聞いたことがない。
「食事を抜かれることもよくあります。小食な方だと。」
「違うね。そもそも食欲がないんだ。」
満ははじめ意味が理解できなかった。
「食欲が、ない?」
「お腹が減ったことがわからない、と言えばいいかな。寝食を忘れるということは、睡眠欲求の方もないのかもね。体が悲鳴を上げているのに自分で気づかないんだ。
だから今回、体がギリギリなのに気づかず、大きな術を使って、倒れてしまったというわけだ。」
満は唖然として二乃子を見た。二乃子は気まずそうに視線を逸らす。
「そんな状態なら頭痛とか、体の不調に悩まされそうなものだが、今聞いた話によれば、どうやら痛覚も鈍いようだ。怪我をしても痛くないと。」
満はますます目を丸くして二乃子を見る。
しかし、思い返せば、咲に噛みつかれたとき、声もあげなかったし、手当もせずに放っておこうとした。
痛くなくて、忘れていた?
「満、二乃子の食事と睡眠には気を付けてくれ。」
「はい。いらないと言っても三食食べさせて、ちゃんと定刻に毎晩寝かしつけます。」
雑用係が二乃子のおかんを兼ねることになった瞬間だった。
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