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28 雑用係、弟妹にふりまわされる
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「あれ、今日は二ノとミッチーも帰るの?」
珍しく篤が常磐家へ帰るタイミングで満たちも巫覡院を出る準備をしていた。
「明日は巫覡院は休日なので、九条家へ行くんです。」
満にとっては帰る、だが二乃子にとってはまだ九条家は行くである。咲も荷物をまとめて出てきて、二乃子の手を握った。
最近の咲はすっかり甘えん坊になってしまい、二乃子と満に隙さえあればくっついている。
生い立ちを考えれば、甘えることを覚えたのはいいことだが、先日宝具職人の下から帰ったら奥の部屋で丸くなって拗ねていた。特に午前中は陽己もいないことが多いので寂しいのだろう。
二乃子は作ったドライフラワーの束を抱えて、満の戸締りを待っている。
「九条家でも仕事してるのかい?」
「満殿が怒るからしないことにしてる。これは咲に匂い袋の作り方を教えるため。」
「明日は二乃子殿が一日中一緒にいてくれるんです!」
「よかったねえ、咲ちゃん。でも…あんまり心休まらない休日になりそうだね。」
篤がしみじみと言うと、二乃子はげっというような顔をした。
「さあ、帰りましょうか。あ、二乃子殿、持ちますよ。」
ーーーー
二乃子と咲を連れて九条邸へ帰ると、どたどたという足音がしてキラキラした三人に出迎えられた。
「兄上、二乃子殿、お疲れ様です!」
「お帰りになるの、お待ちしておりましたのよ。」
「三兄、今日は逃がさないわよ!」
満の実の弟妹達である。満は思わず、二乃子を背中に隠した。
「二乃子殿とはしっかりお話しするのは初めてよね?三兄の妹の彩葉です。」
「同じく妹の琅菜よ。」
「二乃子です。満殿にはお世話になっています。こっちは巫覡院で預かっている、咲です。」
彩葉は興味津々、琅菜は親の仇でも見るように、二乃子を見ていて、…晩餐が不安になった。
ーーーー
満が湯殿から上がると、食堂で二乃子と咲が弟妹達と夕食を食べていた。というか食べ終えていた。
二乃子と咲は入れ違いで湯殿へと向かう。…二乃子殿が俺と夕食の時間をずらしたのに作為を感じる。
きっとあんまり食べていないだろう。あとで夜食に何か、持っていかなくては。
「さあ、次は三兄の番ですよー。ここに座ってー。琅菜、食事を持ってきて。四兄はお茶よ。」
二人ともさっと動く。特に四の君・垂は彩葉の兄なのに、そんなに言いなりになっていていいのか。
「もう、三兄ったら。夕涼みの会から二か月か三か月か経ったのに、二乃子殿とはお友達未満なの?」
満の脳裏に篤の顔がフラッシュバックする。…地味に気にしていることを。
「聞いてた?四兄?『満殿は恋人ではありません。』」
彩葉が二乃子の声色を真似て話し始める。…というかどんな質問をしてそんな会話になるんだ。ちょっと怖い。
「『仕事上の大切なパートナーです。』って。そこはもっと顔を赤くするとか、反応が欲しいところだわ。」
『仕事上の大切なパートナー』
ご飯を食べようとしていた満はその言葉に反応して、感動した。そっか、パートナーは俺なんだ。
なんとなく篤の登場で面白くなかった気持ちが軽くなっていく。
「『恋心とか全くないですよ。』って。そこは言葉を濁されたいわ。」
「…恋愛小説の読みすぎだよ、彩葉。」
珍しく篤が常磐家へ帰るタイミングで満たちも巫覡院を出る準備をしていた。
「明日は巫覡院は休日なので、九条家へ行くんです。」
満にとっては帰る、だが二乃子にとってはまだ九条家は行くである。咲も荷物をまとめて出てきて、二乃子の手を握った。
最近の咲はすっかり甘えん坊になってしまい、二乃子と満に隙さえあればくっついている。
生い立ちを考えれば、甘えることを覚えたのはいいことだが、先日宝具職人の下から帰ったら奥の部屋で丸くなって拗ねていた。特に午前中は陽己もいないことが多いので寂しいのだろう。
二乃子は作ったドライフラワーの束を抱えて、満の戸締りを待っている。
「九条家でも仕事してるのかい?」
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「明日は二乃子殿が一日中一緒にいてくれるんです!」
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「さあ、帰りましょうか。あ、二乃子殿、持ちますよ。」
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二乃子と咲を連れて九条邸へ帰ると、どたどたという足音がしてキラキラした三人に出迎えられた。
「兄上、二乃子殿、お疲れ様です!」
「お帰りになるの、お待ちしておりましたのよ。」
「三兄、今日は逃がさないわよ!」
満の実の弟妹達である。満は思わず、二乃子を背中に隠した。
「二乃子殿とはしっかりお話しするのは初めてよね?三兄の妹の彩葉です。」
「同じく妹の琅菜よ。」
「二乃子です。満殿にはお世話になっています。こっちは巫覡院で預かっている、咲です。」
彩葉は興味津々、琅菜は親の仇でも見るように、二乃子を見ていて、…晩餐が不安になった。
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満が湯殿から上がると、食堂で二乃子と咲が弟妹達と夕食を食べていた。というか食べ終えていた。
二乃子と咲は入れ違いで湯殿へと向かう。…二乃子殿が俺と夕食の時間をずらしたのに作為を感じる。
きっとあんまり食べていないだろう。あとで夜食に何か、持っていかなくては。
「さあ、次は三兄の番ですよー。ここに座ってー。琅菜、食事を持ってきて。四兄はお茶よ。」
二人ともさっと動く。特に四の君・垂は彩葉の兄なのに、そんなに言いなりになっていていいのか。
「もう、三兄ったら。夕涼みの会から二か月か三か月か経ったのに、二乃子殿とはお友達未満なの?」
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「…恋愛小説の読みすぎだよ、彩葉。」
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