救国の巫女姫、誕生史

ぺきぺき

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30 雑用係、進路を決める

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翌日、朝食の席、彩葉が目をキラキラさせて満に詰め寄った。

「な、なに?」

「今日は、花街で妓楼の美女たちが舞を披露する催しがあるのよ!昨日は二乃子殿が倒れて、言えなかったけど。私がプロデュースしたの!見に来て!」

「兄上、私も参加するのよ。」

琅菜も畳みかけてくる。

「どうせ暇でしょ?三兄。」

いや、それは暇なんだけどね?二乃子のそばから離れたくない…って言ったら彩葉は喜ぶし、琅菜は怒るだろう。

「あ、二乃子殿。」

食堂に二乃子が咲を連れて現れた。

「二乃子殿も今日、花街の催しに参加しない?」

「花街の?催し?」

「そう。私がプロデュースした演出や衣装で美女たちが舞を披露するの。」

「楽しそうですが、今日は咲に調合を教える約束をしているので…。」

二人が咲を見ると、二乃子にしがみついて目を潤ませて彩葉を見ていた。

『今日は二乃子殿と一日一緒だってきいてたのに、お姉ちゃん、私から二乃子殿をとるの?』

咲は何も言っていないが、目線がそう語っていた。

「そ、それはしょうがないわ!」

「だから満殿だけ行ってきてください。好きですよね、美女。」

「や、…え?」

こうして満が花街に出かけることが決まった。


ーーーー


「じゃあ、満殿、たまには私のことを忘れて楽しんできてください。」

二乃子の笑顔に満の顔はひきつる。…忘れたくないし、二乃子といる方が楽しい。

「あ、これを持って行ってください。」

二乃子は満の着物の袷に何かを仕込んだ。二乃子が目の前まで近づいてきたので、ちょっとドキッとする。

袷の中を確認しようとした満を二乃子が手で制する。

「お守りです。」

そうして満が乗り込んだ馬車は花街へと向かった。馬車には満、彩葉、琅菜の他に垂と父の宇宙そらが乗っていた。

「あれ、母上は?」

「なんか体調悪いって。」

「え、大丈夫なのですか?」

「大丈夫じゃないか?」

父上、他人事が過ぎる。

「垂は、留学準備はどうだ?」

「今は異国の学生たちがすでに習っていることを異国語で習っています。」

「ふむ、がんばれ。」

「はい!」

「で、満は?年明けからどうするのか決めたのか?」

宇宙がこちらに目を向けてきた。

「あ、はい。国試を受けようと思っています。願書を出したところです。」

宇宙が片眉をあげた。


満としてもよくよく考えてのことだ。

国試を受けて、どんな成績であっても官吏になれば、巫覡院の仕事を今より手伝える。

予算の交渉で舐められることも、城で入れない場所も、ないだろう。
巫覡院で働くことを前提に考えているのはちょっと怒られるかもしれないが、それが満のやりたいことなんだから仕方ない。

国試では、一応希望の部署調査があるはず。それで合格点すれすれの受験者の採否を決めるとかいう噂もある。

実務経験もある自分ほど巫覡院にふさわしい人材もいないだろう。…自信はないけど。
すぐには巫覡院に配属されないかもしれないが、いつか配属されると思えば、仕事も頑張れる気がする。

あんなに悩んでいた進路が迷いもなく決まってしまったことに満自身も驚いていたが、ちょっとした充実感もあった。

来年が楽しみだと、初めて思えたような気がする。

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