もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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ころちゃん視点ソース壺に潜んで匂いを我慢してソースだらけになってなんとか逃げ出しました

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「ノース帝国の兵士達は5日後に到着するのが判ったぞ」
 と叫んだ護衛隊長のマドックの言葉をカーラ達に伝えるために、直ちに宰相の屋敷を逃げだそうとした。
 森の中に入って少し息を整えたのだ。後ろを振り返ってもベイル達は追ってこなかった。俺はほっとした。

 そこから俺は物陰に隠れながら正面入り口に向かって行った。
 人の目があるので、周りを確認して隠れながら行くのは結構大変だった。

 そして、本館の建物の陰から正面入り口を見るが、遠くてあまり良く見えない。ただ、兵士達が、厳重に見張っていた。子犬一匹逃げられる状況に無いみたいだった。
 強引に突破しようかとも思ったのだが、何故か入り口にベイルが近付いていくのがみえた。何か門番に話してた後は兵士達の横にいてくれるんだけど……何故だ?
 剣を握って足下を見ていやがる。俺が正門から逃げると思ったのだろうか?
 あのベイルがいるのなら、更に突破するのは厳しいだろう。
 仕方があるまい。俺は正面入り口は諦めた。

 今度はこのぐるりと囲んだ塀を乗り越えられるかを確認しようと塀沿いに見て歩くことにしたのだ。
 外からは越える為に登る木が無いのは調べたから知っていたが、反対の中からならなんとかあるかもしれない。
 これが他の獣人ならばこれくらいの高さを超えることも可能だったかもしれない。しかし、子犬の俺ではぐるりと張り巡らされた高い塀を跳び越えることは出来なかった。この時ほど、他の獣人達が羨ましいと思えたことは無かった。俺の異母兄だったら軽々とこの塀を乗り越えられただろう。
 俺は塀を木の枝を伝って越えられないか、ぐるりと一周回って見て回った。しかし、壁の頂上まで届いている枝はどこも無かった。

 裏門も見てみたが、こちらは完全に閉まっていて、人が通る度に開けるみたいだ。それも兵士が2人も立っていてとても厳重だ。それに裏門の周りはどこにも隠れるところが無かった。
 これでは近付いて隙を探ることも出来ない。

 俺はどうしたものかと本館の近くの木立で悩んでいた。
 その時だ。俺は一台の荷馬車が入ってくるのを見た。荷馬車は食堂の前で止まるや、料理人達が、大きな壺や籠を下ろしだしたのだ。
 俺はその馬車を見て閃いたのだ。
 この馬車ならばここから出られるんじゃないかと。

 俺は早速、馬車に皆に知られないように近寄ったのだ。
 男達が幌を外して壺や籠を下ろしていく。
 壺や籠の中にはいろんな食材が入っていた。それを食堂に運んでいく。
 馬車から全て運び込むと、今度は食堂から次々に空の籠や壺を馬車に積み込みだしたのだ。
 俺はそのどさくさに紛れて馬車に飛び乗った。
 俺が乗ったのは誰も気付かなかった。
 そして、荷物を全て積み込むと幌をかけてくれる。
 俺はほっとした。
 これで後は馬車が塀の外に出てくれればしめたものだ。適当なところで馬車から降りたら終わりだ。
 これで外に出られる。
 俺は安心した。

 馬車が動き出す。
「止まれ!」
 しかし、そうは問屋が卸さなかった。
 馬車は入り口で止められた。
「なんか。この馬車が怪しいぞ」
 ベイルらしい声が外から聞こえた。こいつどこまでしつこいんだ。
 俺はいい加減にうんざりした。
「しかし、旦那、これは食材を納入した残りですぜ。何も変な物は持ち出していませんぜ」
 馬車の御者が反対してくれたが、
「ならば改めても問題はあるまい」
 ベイルの言葉に
「へい、それは問題はないですが」
 幌が開けられる音がした。

 俺はとっさにホワイトソースの壺の残りの中に飛び込んだ。
 つんと凄まじい匂いがした。匂いに敏感な犬には地獄だった。
 でも、ここは我慢だ。俺は気が狂いそうになるのを必至に我慢した。
 ソースはほとんど無くて、俺が横たわっていればおそらく判らないはずだ。色も白いし誤魔化せるはずだ。凄まじい匂いがするがここは我慢だ。
 俺は完全に固まったのだ。
「好きなだけ調べて頂いて問題ないでいすよ」
 御者の言葉にベイル等は籠の中身を見ていく。閉まっている籠はわざわざ開けてくれた。
「うーん、いないか」

「この壺は何だ?」
 ベイルの声が壺の外から聞こえた。
「さあ、ソースの残りか何かじゃ無いですか」
「ソースか?」
 誰かが覗き込むのが判った。
 俺は完全に固まった。
 中をじろじろ見るベイルがいる。

「うっ、凄まじい匂いだな」
 ベイルが鼻をつまむのが見えた。
「まあ、残り物ですからね」
 呆れた男の声が聞こえた。
「どうだ。納得できたか?」
 呆れたブルーノの声が聞こえた。
「ああ、あの犬ころはいなかった。でも、どこに行きやがったんだ?」
「森の中にでもいるんじゃ無いかの」
 ブルーノの声がした。

「旦那、行ってもいいですか」
「ああ、手間取らせたな」
 馬車はやっと動き出した。

 俺はもうこの凄まじいにおいで死にそうだった。
 なんとか壺から飛び出る。

 外に出てしばらく行ったところで、俺は我慢できずに、俺は馬車から飛び降りた。
 鼻を必死に押さえる。鼻がもう歪みそうだった。
 もう我慢できない。
 俺は近くの川に飛び込んだのだ。
 必死に匂いを取ろうとしたが、中々取れなかった。
 なんとか溺れずに川から上がった時でも体からソースの匂いは消えていなかったのだ

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