もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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ころちゃん視点 宰相の息子の使い魔のガマガエルを見て王女が気絶し、侍女の悲鳴が王宮中に響き渡りました

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 俺は必死にカーラとフェナから逃げようとしたのだ。
 でも、カーラとフェナは中々俺を逃してくれなかった。

「誰か、ころちゃんを捕まえて」
 カーラの叫び声がした。
 まずい。
 俺はスピードを上げようとした時だ。

 カーラの声に気付いて次々に俺を追いかける人が増えてきた。
 やばい!
 俺は慌てた。
 でも、追いかけてくるのは烏合の衆だ。
 まだなんとかなる。

 俺は後ろから飛びかかってきた料理人を躱した。
 でも、その先に前から駆けて来た騎士がいる。
 俺はその騎士が手を伸ばしてきた瞬間、その手をひょいと横に飛んで避けた。

「ギャ」
 男は後ろから追いかけてきた騎士とぶつかってくれた。
 二人して絡まって転ける。それに後二、三人巻き込まれた。
 よし、うまくいったと俺は思った。
 そして、そのまま駆けていこうとした時だ。

「キャーーーーー」
 いきなりカーラの悲鳴が彼方から聞こえたのだ。
 俺は驚いて振り向いた。
 でも、カーラは見えない。

「わんわん!」
 俺は慌てて悲鳴がした方に駆けて行った。
 何かがカーラに襲いかかったのかと慌てたのだ。
 カーラが何かに驚いて転けているのが見えた。
 毒蛇か何かか?
 俺は慌てると同時に警戒した。

「わんわん!」
 俺は叫びながら慌ててカーラに駆け寄った。
 普通の動物は犬の声を聞いたら逃げていくのだ。

「か、カエル、ガマガエルよ」
 カーラが腰を抜かしていた。
 よく見るとカーラの前に大きなガマガエルがいたのだ。
 王宮にこんなでかいガマガエルがいるなんて!
 俺は驚いてカエルを見た。
 うん? どこかで見たことがあるぞ。
 それも最近だった気がする。
 そうだ。この焦げ茶色といい俺の10倍くらいある大きさといい、宰相の息子のベンヤミンの使い魔にそっくりだ。
 ゲロゲロ鳴いているが、これはベンヤミンのガマガエルで確か名前は『ガマ君』に違いなかった。
 でも、宰相の館から王宮までこんなに離れているのに、このカエルもう着いたのか?
 下手したら俺と移動スピードがそんなに変わらないんじゃないか?
 と言うか、途中で捕まりもせずにここまで来れただけで驚きだった。

 俺は思ったよりもベンヤミンの使い魔のガマガエルのスピードが速いのに驚いていたのだ。
 でも、ベンヤミンもガマガエルを使いに出すなんて馬鹿だ。カエルのお使いなんてカーラが受けつける訳はないではないか。それでなくても生理的にカエルを嫌っているのに!
 カーラがベンヤミンを嫌いなのもこの使い魔のカエルを昔持っていたからに違いない。
 女の子が見たら絶対に嫌いそうな姿形だった。
 もっともこのカエルは使い魔なんだけど。
 もっと女の子が喜びそうな動物を使い魔にしろよ!
 俺はベンヤミンのために残念に思ってやった。
 それにこのカエルがどれだけ重要な情報を持ってきたなんて見た目で判る訳無いではないか。
 せっかくベンヤミンが父に逆らって貴重な情報を送ってくれたのに、カーラは必死に後ずさって逃げようとしていた。
 それを助けようとしたフェナも腰を抜かしている。

 本当にベンヤミンの使い魔は役立たずだった。
 もっともこんな醜い姿だから宰相の館から出られたのかもしれない。
 そうか、こいつのジャンプ力で、ひょとして宰相の館の塀を乗り越えたのかもしれなかった。
 下手したら俺よりも能力的に高いのかもしれない、そう思うと、俺はなんか情けなくなってきた。
 でも、今はそれどころではない。なんとかこのガマガエルを止めないと。
 でも、ガマガエルの方が圧倒的に俺より大きいんだけど……
 どうやって止めようか?
 俺が悩んだ時だ。

 次の瞬間、ガマガエルはカーラ目指して飛んでくれたのだ。
 俺が止める間もなかった。
 ガマガエルがカーラに当たった瞬間

「キャーーーーー」
 カーラは悲鳴を上げて気絶していたのだ。
 ガマガエルはそのカーラの胸の上に飛び乗ってくれた。
 俺のカーラの胸の上に乗るな!

「わんわん!」
 完全に切れた俺は
 そこを退け! 
 と叫んでいた。
 ガマガエルは俺とカーラを見て、俺の剣幕に恐れたのか? それとも呆れたのか
 ゲロ
 と鳴いてぴょこんとカーラの横に退いてくれた。

「このガマガエルのやろう」
 騎士が剣を抜いてガマガエルに斬りかかろうとした。裏切り者のレイだ。
 俺が飛びかかろう絵とした時に

「おい、止めろ。殿下に当たったらどうするつもりなんだ」
 他の騎士が止めてくれた。

「わんわん!」
 俺は騎士達に叫んでいた。
 これはベンヤミンの使い魔だと叫んだんだけど、気付く訳はなかった。

「おい、どうする?」
「でも、殿下の横にいる限り、なんとも出来ないぞ」
「お前、カエルを追い出せ」
「えっ、何か気持ち悪いぞ」
 騎士達が二の足を踏んでいる時だ。
「何をしているのです!」
 そこにサーヤの大きな叱責の声が後ろからした。

「これはサーヤ様。カーラ様が気絶されたのです」
「何ですって! 貴方たちは何をしているのです。退きなさい。私が姫様を連れて行きます」
 そう言ってサーヤは騎士を横に退けてカーラに近付こうとした時だ。

 ゲロ!
 ガマ君が鳴いてくれたのだ。
 それまで、サーヤはガマ君が傍にいるのを知らなかったのだ。
「えっ」
 そして、ガマガエルをまじまじと見た瞬間だ。

「ギャーーーーーーーーーーー」
 サーヤの口からはこの世も終わりかと思える王宮中に響く大きな悲鳴が飛び出したのだった。
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