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剣術部の稽古で王太子の前に動けなくなって、脳天を剣で殴られて前世を思い出しました
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「何なのよ。リディ、あんなに言われっぱなしで良いの? 絶対にリディはあの王太子よりも点数が取れていたと思うわよ」
「そうだ。あのアラベラとか言う公爵令嬢よりも絶対に点数は良かったと思うぞ」
ベティとアーチも言ってくれたんだけど、ベティは王宮でアーチも騎士としてこの国で働く事が決まっているのだ。下手な事は言わない方が良い。
私がそう言うと
「あなたが未来の王妃になるんだから何も問題ないでしょ」
そうベティに言われた。
確かに婚約しているのは私だけれど、最近のエイベルの行動を見ていると本当にそうなるのかどうか私も不安になりつつあった。
だってここ1年ほど二人きりでお茶などしたことはないのだ。
王太子妃教育で徹底的にしごかれていたけれど、なんかどうでも良いことで注意される回数がやたら多かった。女官長も私を王太子妃にはしたくないんだけど思う。
本来は卒業と同時に結婚の予定だったけれど、前国王が1年前に亡くなって、とりあえず1年間延期されていたのだ。最近は巷の噂では公爵令嬢のアラベラの方が婚約者としてふさわしいのではないかと言われているらしい。
怒ったベティが教えてくれた。
私としてもそれでいいのなら国に帰りたい。
まあ、新たな嫁ぎ先はないかもしれないけれど、別に騎士として一人で生きていっても良いんだと思う。お父様もお母様も文句は言うと思うけれど、最後は判ってくれるはずだ。お兄様には煩い小姑がいると自分に嫁の来手がないではないかとかブツブツ文句を言われるかもしれないけど……
いや、だめだだめだ。私は王女なのだ。我が国は四方を大国に囲まれている小国。我が国が生き残るためには私が我慢しなくてはいけないのだ。
私は我慢しようとした。
その日は放課後に剣術部の最後の集まりがあった。
部長の私は当然出席した。
最後の剣術稽古だ。
いくつかのグループに分かれる。
私は騎士服に着替えて、模擬剣を構えた。
「行きます」
一年生が斬り込んでくる。
私はその剣を軽くはじく。
「やっ」
もう一度、上段から斬り上げてくる。
それをはじく。
「やっ」
次は真横からただ。それをしゃがんで躱して、胴に斬り込んだ。
「うっ」
男はうなって吹っ飛んでいた。
「次」
「はい」
次の男が模擬剣を構えて、斬り込んできた。
私は上段を躱して真横に剣を振り払う。
「ギャッ」
男が又飛んでいった。
「ふん、やはり、おままごとではないか」
そこに聞き慣れた声がした。
そこに何故か、エイベルがやってきた。
この剣術部には高位貴族はほとんどいなかった。いても伯爵令息止まりだ。
王族なんてここしばらく見たこともなかったのに、何しに来たんだろう?
私は不吉な予感しかしなかった。
「何ですと」
稽古をつけていたアーチらがいきり立った。
「リディアーヌが、女だてらに出来もしないのに、剣を振り回している事自体がおままごとだろうが」
馬鹿にしたようにエイベルが言った。
「何を言っているんですか。リディは能力的には学園一の腕前ですよ」
レックスが反論した。
「貴様らの腕が落ちているからではないか」
「そんなわけは」
「なら、俺がリディアーヌに稽古をつけてもらおう。おそらく俺様がつけることになると思うけれどな」
エイベルが鼻で笑ってくれた。
「そんなわけはない」
アーチが言ってくれたが、
「なら良いだろう? リディアーヌ、やってもらおうか」
にたりと笑ってエイベルが傍の剣を取って私の前に立ったのだ。
「エイベル様、よろしいのですか?」
さすがに心配して一緒についてきていたアラベラが聞いてきた。
「ふんっ、大丈夫だ。一瞬で私の前に這いつくばらせてやるさ」
エイベルは言ってくれるんだけど、おいおい、婚約者を這いつくばらせてどうするつもりなの!
私はさすがにそう言いたかった。
「どうした。リディアーヌ。怖じ気づいたのか?」
エイベルが馬鹿にしてくれた。
仕方がない。
私は剣を構えようとした。
「いや、待て。やるなら俺が」
レックスが前に出ようとした。
「レックス、大丈夫だから」
私はレックスを止めた。
「しかし」
「レックス、大丈夫だって」
アーチが横から止めてくれた。
「リディが負けるわけは無い」
アーチの言葉に周りの皆が頷いていた。
私は子供のころから剣の腕前だけは確かだった。
女だてらに訓練に精を出していたのだ。
でも、私はこいつには絶対に勝てないことを知っていた。
それでも、将来はこの国の騎士になるアーチ等と王太子を対戦させるわけにはいかなかった。
こいつらは手加減というものを知らないから、王太子をボコボコにするかもしれない。
隣国の伯爵の息子のレックスにしてもそうだ。王太子の私に対する日頃の態度に怒っているレックスなんて相手にさせたら下手したら国際問題になってしまうほど痛めつけるだろう。
ここは私が適当に相手して負けるしか無いのだ。
私の前でエイベルが正対した。
エイベルも王族なので一通りの剣術の訓練は王家の剣術指南につけられていた。
ある程度は出来るのだ。
「エイベル様」
「頑張って下さい」
アラベラ達の黄色い声が響く。
「リディアーヌ、男達に手加減してもらっていい気になっているようだな。俺様がその高くなった鼻っ柱をたたき折ってやる」
上段に構えたエイベルが私に向かってきた。
そして、そのまま剣を振り下ろしてきた。
普通ならば私は軽く剣ではじけるはずだった。
しかし、その瞬間私の体が止まってしまった。
強制的に動かなくなってしまったのだ。
嘘! こんなの聞いていない。
私は焦ったが後の祭りだった。
思いっきり振り下ろしたエイベルの剣が私の剣をたたき落としてくれたのだ。
そしてエイベルはニタリと笑ってくれたのだ。悪魔のような笑みだった。
そして、その勢いのままに私の脳天にエイベルは剣を打ち込んでくれたのだ。
私の体は全く動かなかった。
私は強化魔術で頭を防御するのに精一杯だった。
ガン!
大きな衝撃が私の頭を襲って、次の瞬間、大量の知識が私の頭に蘇った。
凄まじい量の前世の知識が私の頭に襲いかかって来て、私のキャパを超えてしまい、私の頭は真っ白になった。
「リディ!」
気を失って倒れる体をどこか懐かしい声がして私を抱き留めてくれたのがなんとなく判った……
*************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
婚約者の情け容赦の無い一撃を受けて前世を思い出したヒロインでした。
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
「そうだ。あのアラベラとか言う公爵令嬢よりも絶対に点数は良かったと思うぞ」
ベティとアーチも言ってくれたんだけど、ベティは王宮でアーチも騎士としてこの国で働く事が決まっているのだ。下手な事は言わない方が良い。
私がそう言うと
「あなたが未来の王妃になるんだから何も問題ないでしょ」
そうベティに言われた。
確かに婚約しているのは私だけれど、最近のエイベルの行動を見ていると本当にそうなるのかどうか私も不安になりつつあった。
だってここ1年ほど二人きりでお茶などしたことはないのだ。
王太子妃教育で徹底的にしごかれていたけれど、なんかどうでも良いことで注意される回数がやたら多かった。女官長も私を王太子妃にはしたくないんだけど思う。
本来は卒業と同時に結婚の予定だったけれど、前国王が1年前に亡くなって、とりあえず1年間延期されていたのだ。最近は巷の噂では公爵令嬢のアラベラの方が婚約者としてふさわしいのではないかと言われているらしい。
怒ったベティが教えてくれた。
私としてもそれでいいのなら国に帰りたい。
まあ、新たな嫁ぎ先はないかもしれないけれど、別に騎士として一人で生きていっても良いんだと思う。お父様もお母様も文句は言うと思うけれど、最後は判ってくれるはずだ。お兄様には煩い小姑がいると自分に嫁の来手がないではないかとかブツブツ文句を言われるかもしれないけど……
いや、だめだだめだ。私は王女なのだ。我が国は四方を大国に囲まれている小国。我が国が生き残るためには私が我慢しなくてはいけないのだ。
私は我慢しようとした。
その日は放課後に剣術部の最後の集まりがあった。
部長の私は当然出席した。
最後の剣術稽古だ。
いくつかのグループに分かれる。
私は騎士服に着替えて、模擬剣を構えた。
「行きます」
一年生が斬り込んでくる。
私はその剣を軽くはじく。
「やっ」
もう一度、上段から斬り上げてくる。
それをはじく。
「やっ」
次は真横からただ。それをしゃがんで躱して、胴に斬り込んだ。
「うっ」
男はうなって吹っ飛んでいた。
「次」
「はい」
次の男が模擬剣を構えて、斬り込んできた。
私は上段を躱して真横に剣を振り払う。
「ギャッ」
男が又飛んでいった。
「ふん、やはり、おままごとではないか」
そこに聞き慣れた声がした。
そこに何故か、エイベルがやってきた。
この剣術部には高位貴族はほとんどいなかった。いても伯爵令息止まりだ。
王族なんてここしばらく見たこともなかったのに、何しに来たんだろう?
私は不吉な予感しかしなかった。
「何ですと」
稽古をつけていたアーチらがいきり立った。
「リディアーヌが、女だてらに出来もしないのに、剣を振り回している事自体がおままごとだろうが」
馬鹿にしたようにエイベルが言った。
「何を言っているんですか。リディは能力的には学園一の腕前ですよ」
レックスが反論した。
「貴様らの腕が落ちているからではないか」
「そんなわけは」
「なら、俺がリディアーヌに稽古をつけてもらおう。おそらく俺様がつけることになると思うけれどな」
エイベルが鼻で笑ってくれた。
「そんなわけはない」
アーチが言ってくれたが、
「なら良いだろう? リディアーヌ、やってもらおうか」
にたりと笑ってエイベルが傍の剣を取って私の前に立ったのだ。
「エイベル様、よろしいのですか?」
さすがに心配して一緒についてきていたアラベラが聞いてきた。
「ふんっ、大丈夫だ。一瞬で私の前に這いつくばらせてやるさ」
エイベルは言ってくれるんだけど、おいおい、婚約者を這いつくばらせてどうするつもりなの!
私はさすがにそう言いたかった。
「どうした。リディアーヌ。怖じ気づいたのか?」
エイベルが馬鹿にしてくれた。
仕方がない。
私は剣を構えようとした。
「いや、待て。やるなら俺が」
レックスが前に出ようとした。
「レックス、大丈夫だから」
私はレックスを止めた。
「しかし」
「レックス、大丈夫だって」
アーチが横から止めてくれた。
「リディが負けるわけは無い」
アーチの言葉に周りの皆が頷いていた。
私は子供のころから剣の腕前だけは確かだった。
女だてらに訓練に精を出していたのだ。
でも、私はこいつには絶対に勝てないことを知っていた。
それでも、将来はこの国の騎士になるアーチ等と王太子を対戦させるわけにはいかなかった。
こいつらは手加減というものを知らないから、王太子をボコボコにするかもしれない。
隣国の伯爵の息子のレックスにしてもそうだ。王太子の私に対する日頃の態度に怒っているレックスなんて相手にさせたら下手したら国際問題になってしまうほど痛めつけるだろう。
ここは私が適当に相手して負けるしか無いのだ。
私の前でエイベルが正対した。
エイベルも王族なので一通りの剣術の訓練は王家の剣術指南につけられていた。
ある程度は出来るのだ。
「エイベル様」
「頑張って下さい」
アラベラ達の黄色い声が響く。
「リディアーヌ、男達に手加減してもらっていい気になっているようだな。俺様がその高くなった鼻っ柱をたたき折ってやる」
上段に構えたエイベルが私に向かってきた。
そして、そのまま剣を振り下ろしてきた。
普通ならば私は軽く剣ではじけるはずだった。
しかし、その瞬間私の体が止まってしまった。
強制的に動かなくなってしまったのだ。
嘘! こんなの聞いていない。
私は焦ったが後の祭りだった。
思いっきり振り下ろしたエイベルの剣が私の剣をたたき落としてくれたのだ。
そしてエイベルはニタリと笑ってくれたのだ。悪魔のような笑みだった。
そして、その勢いのままに私の脳天にエイベルは剣を打ち込んでくれたのだ。
私の体は全く動かなかった。
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大きな衝撃が私の頭を襲って、次の瞬間、大量の知識が私の頭に蘇った。
凄まじい量の前世の知識が私の頭に襲いかかって来て、私のキャパを超えてしまい、私の頭は真っ白になった。
「リディ!」
気を失って倒れる体をどこか懐かしい声がして私を抱き留めてくれたのがなんとなく判った……
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