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友人と楽しく踊っていたら婚約者に婚約破棄されました
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私は寮でドレスに着替えた。この世界のドレスがコルセットをしないドレスで本当に良かった。コルセットなんてしていたら本当に死んでいたと思う。
私のは青のドレスで我が国の紋章の竜の刺繍が散りばめてある衣装だ。我が国の王女の正装だ。これを着る時はちゃんとした時なのだ。いい加減な事は許されない。
まあ、エイベルがエスコートしてくれないと言っていたからひとりぼっちでの参加になると思うが……結局気絶したこともあってドタバタしていて、レックスにはエスコートの返事が出来ていなかった。
レックスはこのパーティーが終われば国に帰る。今後のことも考えたら、ボルツアーノ王国の伯爵令息がこの大国シュタイン王国の王太子に睨まれることは良くないだろう。
「リディ、準備が出来た?」
ノックして入ってきたベティは赤いドレスを着ていた。そのドレスは黒髪のベティにとてもよく似合っていた。
「ベティ、とてもきれいよ」
「そんな、王女様のリディに比べたら全然だけど……」
「何、言っているのよ。赤いドレスはとてもベティに似合っているわ」
「そうかな。このドレスはアーチが贈ってくれたの」
そういうベティは少し恥ずかしそうだった。
私たちはそのまま階下に降りた。
下には多くの女生徒が男生徒が来るのを待っていた。
そこに正装したアーチがベティに向けて歩いてくるのが見えた。
「二人してパーティーを楽しんで」
私が言うと、
「リディにもお迎えが来ているわよ」
ベティの言葉によく見るとアーチの後ろから白い礼服で正装したレックスが歩んできたのが見えた。銀髪のレックスはとても凛々しくて格好良かった。女たらしのエイベルに比べてもはるかに見目麗しかった。
「レックス、どうして?」
「リディのエスコート役をハワードと争って俺が勝ち取ったんだ」
私の問いにレックスが笑って答えてくれるんだけど……
どういう意味?
私がレックスが指した後ろを見ると、なんと鎧を着たハワードがその後ろからついてきているではないか……
「何しているのよ、ハワード?」
「リディアーヌ様。不肖ハワード、レックスに不覚を取ってしまいました」
とても残念そうにハワードが答えてくれた。
「その格好は何なのよ?」
私が聞くと
「エスコートは出来ませんが、この体でリディアーヌ様を不届き者から守る所存です。どうかご安心下さい」
「いや、そんなのは良いから。あなたもパーティーを楽しみなさいよ」
「ふんっ、ハワードは鬼のノールの息子です。リディアーヌ様に不埒なことを企むやからは、例え王太子と言えども許しません」
なんか訳のわからないことを言っているんだけど……
「そういう訳で行こうか、リディ」
レックスが促してくれるんだけど……学生の分際で護衛騎士を従えてパーティーに参加するってどうなの?
私はとても戸惑った。
「そうだ。その前に」
そう言うといきなりレックスが私の前に跪いてくれたのだ。
「えっ?」
私は更に驚いた。
「古の竜王の子孫たる我が姫よ。私と一緒にパーティーに参加して頂けますか?」
そう言うとレックスが手を差し出してくれた。
「喜んで」
私はレックスに微笑みかけて手を差し出したのだ。
正装したレックスはとても格好良かった。まあ、一生に一度の学園の卒業パーティーだ。一人ぼっちにならなくて良かった。
私はそう思うことにした。
会場に入ると、皆がざわついた。私がレックスにエスコートされているからかもしれない。
私の周りにクラスメートと剣術部の面々が集まってきた。
「ベティ、この三年間楽しかったわ」
「リディ、私もよ」
私はできる限り、皆に挨拶しようと思っていた。
「どうしたのよ、改まって。就職したら、また、すぐに王宮で会えるわ」
王宮の侍女で就職の決まっているベティが笑って言ってくれるが、私は何故か、今生の別れのような気がしたのだ。
絶対にエイベルは何かを考えている。
おそらく婚約破棄されたら、もう二度とベティにもアーチにもハワードにも会えないだろう。そして、剣術部の面々や、クラスメートにも。
彼らはこの3年間本当に私に良くしてくれたのだ。
私は少しでもお礼を言いたかった。
「みんな、本当にこの3年間ありがとう」
私が皆に頭を下げると
「何をしていらっしゃるのです。リディアーヌ様。あなた様は未来の王妃様なのです。我々在校生は全員がリディアーヌ様に忠誠を誓ったのです。それを破る奴はこの剣にかけて許しません」
「えっ」
ちょっとハワードがなんかとんでもないことを言っているんだけど、こいつは本当にやりかねなかった。
「いや、ハワードそういうのは良いから」
私が否定するが、
「リディアーヌ様。もう遅いです。私は卒業式で皆を代表して忠誠を誓ってしまいましたから」
笑ってハワードが言うんだけど……私が婚約破棄されたらどうするつもりなのよ!
私が反論しようとしたとき、学園長が壇上に立ったのだ。
「生徒諸君。この由緒ある王立学園の年度末を飾る卒業パーティーを今から始める」
そして、いつものように長い眠くなる挨拶をしてくれて私は否定する暇も無かったのだ。
私はハワードの言ったことが気になってその挨拶を半分も聞いていなかった。
そして、今度は在校生代表は生徒会長が当たり障り無い挨拶をしてくれた。
その後エイベルもあいさつしてくれた。
学園の輪を乱す者もいたが、とか、学園の秩序を守らない者もいたが、ちゃんとしている者を見習ってほしいとかどうでも良いことを言っていた。
そして、ダンスの時間になった。
エイベルは私の方は見向きもせずに、アラベラと腕を組んで広場の中央に出て行った。
「リディ、良いかい?」
レックスが緑眼を瞬かせて私を見てきた。
「ええ」
私はレックスに頷いた。
おそらく、これがこの国で私が踊る最後のダンスになる。
私は最後のダンスを楽しもうと心に決めたのだ。
エイベルと踊るときはエイベルに合わせるのに大変だった。エイベルは注文が多いのだ。私は気疲れして全然楽しくなかった。私は最後くらいは楽しみたかった。
おそらく、レックスは私に合わせて踊ってくれるはずだ。
音楽が鳴って、私たちはゆっくりと踊り始めた。
レックスが私に合わせて踊ってくれた。
私は水を得たように自由に踊った。レックスはそれにきちんと合わせてくれるのだ。
こんなに嬉しいことはなかった。
「どう、リディ? 楽しい?」
「うん、レックスって踊りはうまいのね」
「そんなことないよ。うまく見えるのは君のお陰さ」
「そんなことないわ。私に合わせて踊ってくれてとても楽しいもの」
「そう言ってもらえてうれしい。出来たらこのまま君を国に連れて帰りたい」
私はレックスの最後の言葉がよく聞こえなかった。
「えっ、何か言った?」
「何でも無い。ずっとこのまま君と踊れたら良いなって」
「本当よね」
私もレックスの言葉に頷いた。
でも、楽しいときはいつまでも続かないのだ。
音楽が終わるときが来た。
音楽が終わりを告げて私たちはお互いにポーズを決めて止まったのだった。
私たちは名残り惜しそうに手を離したその時だ。
「会場の学生諸君。私はここにリディアーヌ・インスブルクとの婚約を破棄することを宣言する」
エイベルの声が会場中に響いたのだった。
*********************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ついに婚約破棄をされたリディ。このまま断罪されるのか?
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
私のは青のドレスで我が国の紋章の竜の刺繍が散りばめてある衣装だ。我が国の王女の正装だ。これを着る時はちゃんとした時なのだ。いい加減な事は許されない。
まあ、エイベルがエスコートしてくれないと言っていたからひとりぼっちでの参加になると思うが……結局気絶したこともあってドタバタしていて、レックスにはエスコートの返事が出来ていなかった。
レックスはこのパーティーが終われば国に帰る。今後のことも考えたら、ボルツアーノ王国の伯爵令息がこの大国シュタイン王国の王太子に睨まれることは良くないだろう。
「リディ、準備が出来た?」
ノックして入ってきたベティは赤いドレスを着ていた。そのドレスは黒髪のベティにとてもよく似合っていた。
「ベティ、とてもきれいよ」
「そんな、王女様のリディに比べたら全然だけど……」
「何、言っているのよ。赤いドレスはとてもベティに似合っているわ」
「そうかな。このドレスはアーチが贈ってくれたの」
そういうベティは少し恥ずかしそうだった。
私たちはそのまま階下に降りた。
下には多くの女生徒が男生徒が来るのを待っていた。
そこに正装したアーチがベティに向けて歩いてくるのが見えた。
「二人してパーティーを楽しんで」
私が言うと、
「リディにもお迎えが来ているわよ」
ベティの言葉によく見るとアーチの後ろから白い礼服で正装したレックスが歩んできたのが見えた。銀髪のレックスはとても凛々しくて格好良かった。女たらしのエイベルに比べてもはるかに見目麗しかった。
「レックス、どうして?」
「リディのエスコート役をハワードと争って俺が勝ち取ったんだ」
私の問いにレックスが笑って答えてくれるんだけど……
どういう意味?
私がレックスが指した後ろを見ると、なんと鎧を着たハワードがその後ろからついてきているではないか……
「何しているのよ、ハワード?」
「リディアーヌ様。不肖ハワード、レックスに不覚を取ってしまいました」
とても残念そうにハワードが答えてくれた。
「その格好は何なのよ?」
私が聞くと
「エスコートは出来ませんが、この体でリディアーヌ様を不届き者から守る所存です。どうかご安心下さい」
「いや、そんなのは良いから。あなたもパーティーを楽しみなさいよ」
「ふんっ、ハワードは鬼のノールの息子です。リディアーヌ様に不埒なことを企むやからは、例え王太子と言えども許しません」
なんか訳のわからないことを言っているんだけど……
「そういう訳で行こうか、リディ」
レックスが促してくれるんだけど……学生の分際で護衛騎士を従えてパーティーに参加するってどうなの?
私はとても戸惑った。
「そうだ。その前に」
そう言うといきなりレックスが私の前に跪いてくれたのだ。
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そう言うとレックスが手を差し出してくれた。
「喜んで」
私はレックスに微笑みかけて手を差し出したのだ。
正装したレックスはとても格好良かった。まあ、一生に一度の学園の卒業パーティーだ。一人ぼっちにならなくて良かった。
私はそう思うことにした。
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私の周りにクラスメートと剣術部の面々が集まってきた。
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彼らはこの3年間本当に私に良くしてくれたのだ。
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おそらく、レックスは私に合わせて踊ってくれるはずだ。
音楽が鳴って、私たちはゆっくりと踊り始めた。
レックスが私に合わせて踊ってくれた。
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「どう、リディ? 楽しい?」
「うん、レックスって踊りはうまいのね」
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「そんなことないわ。私に合わせて踊ってくれてとても楽しいもの」
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私はレックスの最後の言葉がよく聞こえなかった。
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でも、楽しいときはいつまでも続かないのだ。
音楽が終わるときが来た。
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