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折角婚約者が差連れてきた証人はハワードの剣の前に嘘をついたと白状しました
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「私はそちらにいらっしゃるリディアーヌ様が大使館で破落戸どもを雇って、アラベラ様を襲わせるようにと指示していらっしゃるのを聞いたのです」
我がインスブルク大使館で働いているという男がいきなり証言してくれた。
私は完全に嵌められたのを知った。
でも、こんな奴私は見たこともないんだけど……
小間使いか何かなのか?
私にはよく判らなかった。
まあ、私はそんなことしていないからえん罪は確実なんだけど、これ私が言い訳する必要があるんだろうか?
私はうんざりした。
「リディアーヌ、これだけ証人が上がっている。何か申し開きすることがあるのか?」
エイベルは自慢げに言ってくれるが、私は反論する気にもならないんだけど……
でも、まあ、やらないと牢屋に入れられそうだし……私が口を出そうとしたときだ。
「殿下、つまらない茶番はこれで終わりですか」
ハワードが馬鹿にしたように言い切ってくれた。
「何だと、ハワード、これを茶番だと申すのか?」
エイベルが怒りだした。
「はい」
「それはあり得ませんよ」
「剣術部一同保証します」
頷くハワードに続いてレックスとアーチも頷いてくれた。
他の剣術部員も頷いている。
「何があり得ないだ。十二分にリディアーヌならあり得るだろう。そうか貴様らは24時間365日、リディアーヌについていたと言い切れるのか」
いぶかしんでエイベルが言い切った。最後はからかうような口調だった。
「そもそも前提条件からして違います」
「何が違うと言うんだ」
「リディアーヌ様はそこの公爵令嬢と違って、人を使うなんてあり得ないんです。むかついたときは絶対に自ら手を下されます。絶対に人任せにはされないのです」
「何を言っている。そんなのやっていない言い訳にならないだろうが」
「何を言っているんですか? 殿下の上げられたつまらない証言、全部俺達に覆されましたよね」
「その男そもそも本当に大使館員なんですか」
いかにも胡散臭そうにレックスが言ってくれるんだけど。
「当然だ。インスブルクの大使館に勤めていた」
「どの部署にですか」
レックスが詰めていく。
「さあ? その方はどの部署に勤めていたのだ?」
「文章課でございます」
「その部署で何をしていたのだ?」
「はい、雑務を」
「雑務とは文章の清書か何かか」
「いえ、部署間の文章を届ける役です」
「それはメッセンジャーボーイじゃないですか。そんな奴の言うことが当てになるんですか」
レックスが呆れていた。
「何を言う、十二分な証拠であろう」
「それ、俺が殿下に命じられてリディアーナ様を襲えと命じられましたって言うのと何が違うんですか?」
横からハワードがとんでもないことを言い出したんだけど。
「何を言う。俺様はそんなのは命じていないぞ」
慌ててエイベルが否定を始めた。
「お前そんなことを命じられたのか?」
「いや、命じられていないし、命じられてもやらないけれどな」
アーチの質問にハワードが首を振った。
「そうだろう。俺はそんなことは命じていないわ」
「ただ、俺は前国王陛下に命じられたことがあります」
ハワードが自信たっぷりに言い出した。
ちょっと貴方たち、一応断罪されているのは私なんだけど、まだ一言も話していないんだけど……それでいいのか?
まあ、私としては楽で良いけれど……
それにあの嘘つき前国王の事なんてここで出してほしくない。お菓子食べ放題でつられて着たのに、一度も満足に食べさせてもらったことがないのだ。これは絶対に婚約破棄できる要件だと思う。
私が脳内で考えている間にハワードらは話し出していた。
「何を命じられたんだ」
「『ハワード、お前は少し愚直なところがある。しかし、必ず、儂の言葉を覚えているだろう。それで、頼みたいことがある。リディアーヌはちょっと抜けたところがある。馬鹿共に嵌められることもあるだろう。儂が命じる。リディアーヌを嵌めようとした者は貴様が斬り捨てて構わん』と」
そう言うとハワードは剣をひっこ抜いたのだ。
「「「えっ」」」
皆唖然とした。
絶対に模擬剣だと思うけれど、ハワードのことだ。間違えて真剣を持っている可能性もあった。
「おい、ハワード何をするのだ」
前にいた騎士達が慌てた。
「俺は前陛下の王命を実行するのみだ。貴様らも逆らうと王命に反するということで反逆罪を適用するぞ」
なんかもうハワードはめちゃくちゃだ。
しかし、ハワードはがたいもでかくて、迫力満点だ。そんな男が剣を構えたら普通の人間は逃げ出すはずだ。
「まずはうその証言をした大使館員のマックだったか、王命によって処断する」
「ひぃ、ヒィィェェェェェ」
大使館員を名乗った男は逃げようとしたが、その間に立っていた騎士達は王命を笠に着たハワードに対してすぐに対処出来なかった。ハワードは次の瞬間には男の前まで飛んで行ったのだ。
「も、申し訳ございません。トミー・マクレガー侯爵令息に命ぜられて嘘を申しました」
男はハワードが剣を振り下ろす前に土下座して叫んだのだ。
*****************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここまで出番のなかったリティ、次はリディの逆襲です。
お楽しみに
我がインスブルク大使館で働いているという男がいきなり証言してくれた。
私は完全に嵌められたのを知った。
でも、こんな奴私は見たこともないんだけど……
小間使いか何かなのか?
私にはよく判らなかった。
まあ、私はそんなことしていないからえん罪は確実なんだけど、これ私が言い訳する必要があるんだろうか?
私はうんざりした。
「リディアーヌ、これだけ証人が上がっている。何か申し開きすることがあるのか?」
エイベルは自慢げに言ってくれるが、私は反論する気にもならないんだけど……
でも、まあ、やらないと牢屋に入れられそうだし……私が口を出そうとしたときだ。
「殿下、つまらない茶番はこれで終わりですか」
ハワードが馬鹿にしたように言い切ってくれた。
「何だと、ハワード、これを茶番だと申すのか?」
エイベルが怒りだした。
「はい」
「それはあり得ませんよ」
「剣術部一同保証します」
頷くハワードに続いてレックスとアーチも頷いてくれた。
他の剣術部員も頷いている。
「何があり得ないだ。十二分にリディアーヌならあり得るだろう。そうか貴様らは24時間365日、リディアーヌについていたと言い切れるのか」
いぶかしんでエイベルが言い切った。最後はからかうような口調だった。
「そもそも前提条件からして違います」
「何が違うと言うんだ」
「リディアーヌ様はそこの公爵令嬢と違って、人を使うなんてあり得ないんです。むかついたときは絶対に自ら手を下されます。絶対に人任せにはされないのです」
「何を言っている。そんなのやっていない言い訳にならないだろうが」
「何を言っているんですか? 殿下の上げられたつまらない証言、全部俺達に覆されましたよね」
「その男そもそも本当に大使館員なんですか」
いかにも胡散臭そうにレックスが言ってくれるんだけど。
「当然だ。インスブルクの大使館に勤めていた」
「どの部署にですか」
レックスが詰めていく。
「さあ? その方はどの部署に勤めていたのだ?」
「文章課でございます」
「その部署で何をしていたのだ?」
「はい、雑務を」
「雑務とは文章の清書か何かか」
「いえ、部署間の文章を届ける役です」
「それはメッセンジャーボーイじゃないですか。そんな奴の言うことが当てになるんですか」
レックスが呆れていた。
「何を言う、十二分な証拠であろう」
「それ、俺が殿下に命じられてリディアーナ様を襲えと命じられましたって言うのと何が違うんですか?」
横からハワードがとんでもないことを言い出したんだけど。
「何を言う。俺様はそんなのは命じていないぞ」
慌ててエイベルが否定を始めた。
「お前そんなことを命じられたのか?」
「いや、命じられていないし、命じられてもやらないけれどな」
アーチの質問にハワードが首を振った。
「そうだろう。俺はそんなことは命じていないわ」
「ただ、俺は前国王陛下に命じられたことがあります」
ハワードが自信たっぷりに言い出した。
ちょっと貴方たち、一応断罪されているのは私なんだけど、まだ一言も話していないんだけど……それでいいのか?
まあ、私としては楽で良いけれど……
それにあの嘘つき前国王の事なんてここで出してほしくない。お菓子食べ放題でつられて着たのに、一度も満足に食べさせてもらったことがないのだ。これは絶対に婚約破棄できる要件だと思う。
私が脳内で考えている間にハワードらは話し出していた。
「何を命じられたんだ」
「『ハワード、お前は少し愚直なところがある。しかし、必ず、儂の言葉を覚えているだろう。それで、頼みたいことがある。リディアーヌはちょっと抜けたところがある。馬鹿共に嵌められることもあるだろう。儂が命じる。リディアーヌを嵌めようとした者は貴様が斬り捨てて構わん』と」
そう言うとハワードは剣をひっこ抜いたのだ。
「「「えっ」」」
皆唖然とした。
絶対に模擬剣だと思うけれど、ハワードのことだ。間違えて真剣を持っている可能性もあった。
「おい、ハワード何をするのだ」
前にいた騎士達が慌てた。
「俺は前陛下の王命を実行するのみだ。貴様らも逆らうと王命に反するということで反逆罪を適用するぞ」
なんかもうハワードはめちゃくちゃだ。
しかし、ハワードはがたいもでかくて、迫力満点だ。そんな男が剣を構えたら普通の人間は逃げ出すはずだ。
「まずはうその証言をした大使館員のマックだったか、王命によって処断する」
「ひぃ、ヒィィェェェェェ」
大使館員を名乗った男は逃げようとしたが、その間に立っていた騎士達は王命を笠に着たハワードに対してすぐに対処出来なかった。ハワードは次の瞬間には男の前まで飛んで行ったのだ。
「も、申し訳ございません。トミー・マクレガー侯爵令息に命ぜられて嘘を申しました」
男はハワードが剣を振り下ろす前に土下座して叫んだのだ。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここまで出番のなかったリティ、次はリディの逆襲です。
お楽しみに
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